すずめ六花

もっと児童文学、童話がかきたい。ドラゴンにのりたいし、魔女になりたい。不思議なキャンデ…

すずめ六花

もっと児童文学、童話がかきたい。ドラゴンにのりたいし、魔女になりたい。不思議なキャンディに魔法のオモチャもほしい。大人なあなたの童心と、大きくなる姪へ。 X→https://twitter.com/suzume_rikka

最近の記事

[短編小説・児童文学・童話]ぷにゅぷにゅ

 タケルは走った。じりじりとあつい空気の中、すぐに息があがり、すってもすっても足りないくらいのさんそをもやして走った。  「ぷにゅぷにゅが死んじゃう!」 そうさけんで、ぷにゅぷにゅをりょうてにかかえて、げんかんを飛び出してから、もう一時間は走り続けている。それでも、まだ小さいタケルは、同じところを何度もまわったり、少しほそい道にはいるのにとまどったり、うまくもくてきの人物を見つけられないでいる。  「まだこの町にいるっていってた。でもどこにいるんだろう」 もう走れなくなったタ

    • 小さいドラゴンを肩に乗せたい。トカゲとは触り心地が違うだろうな。現代で言うと、オウムを肩に乗せるのが一番近いと思う。あれも小さなドラゴン。

      • カラスとカニのことを、今週は考えています。 いろいろと、コンテストなんかに応募していこうかと思い立って。

        • [掌編小説・童話]こわいこわい

           おねえちゃんのあとをついて、てをふってまねっこしてあるいて、 「まねしないで」 っておこられる。  いつものこといつものこと。へいきへいき。きにしない。  ソファにならんですわって、いっしょに本をよむ。  「やめてってば」 これはきけんしんごう。やめないとなみだをながしておこってくる。  「あっちいって」 ああ、まにあわなかった。おこっちゃった。  プンプンおこったおねえちゃん。  こわいこわい。  おねえちゃんがおいていった本。なんだろう。  いちねんせいにもよめるかな

        [短編小説・児童文学・童話]ぷにゅぷにゅ

        • 小さいドラゴンを肩に乗せたい。トカゲとは触り心地が違うだろうな。現代で言うと、オウムを肩に乗せるのが一番近いと思う。あれも小さなドラゴン。

        • カラスとカニのことを、今週は考えています。 いろいろと、コンテストなんかに応募していこうかと思い立って。

        • [掌編小説・童話]こわいこわい

          [掌編小説・童話]いちかねえちゃん

           よっくんは いちかねえちゃんが すき。  いつも にっこりなのが すき。  ランドセルが かっこいいの すき。  ちからもちなの すき。  かいじゅうに へんしんするの すき。  いっしょにあそぶの すき。  よっくんは もうすぐ よんさいに なるよ。  ケーキをたべて おいわいをするよ。  いちかねえちゃんには にばんめにおおきなのを あげるんだ。  ゆうがたの ピンポンは わくわくする。  こんどの ピンポンは いちかねえちゃんかも。  いらっしゃ

          [掌編小説・童話]いちかねえちゃん

          [短編小説]かがみ池(第4話:最終話)

           藍色の水の中に、金色に輝く水泡が踊っている。深く深く、鈴は一人、落ちてゆく。  落ちて落ちて、最後まで落ち切ると、あのいくつもの色の空が混ざった空間へとたどり着いた。  そこには自分と同じ姿の女の子が、ふてくされた顔をして立っていた。そして、そのとなりには、涼が青白い顔をして、並んでいた。  鈴は、すぐに涼に駆け寄りたい気持ちをおさえて、女神様に頭を下げた。 「本当に、すみませんでした。心から謝ります。私、私が、悪かったです。ちゃんと、私が罰を受けます。だから、どうか、どう

          [短編小説]かがみ池(第4話:最終話)

          [短編小説]かがみ池(第3話)

           竹林を抜けると、月明かりの下をスピードを上げ、疾風のように庭を駆け抜ける。玄関に飛び込むと同時に鈴は、 「ママ! パパ! 涼が、涼がさらわれたの! どうしたらいい? すぐに助けに行かないと!」 大きな声を張り上げて助けを求めた。  靴を脱ぎ捨て、どたどたと廊下を走り、客間へ急ぐ。 「パパ! ママ!」 障子戸を押しやって、二人が寝ている部屋に入る。  「鈴? どうしたの。静かにしなさい。皆寝てるのよ?」 ママがのそりと起きだした。  「ママ、涼がさらわれたの」 鈴は、ママの元

          [短編小説]かがみ池(第3話)

          [短編小説]かがみ池(第2話)

           田舎のおじいちゃんの家には、数時間かけて車で向かった。高速道路を降りると、景色ががらりと変わる。  鈴も涼も、小さなゲーム画面から顔を上げて窓を開けてみる。太陽はまだ高い。低い山に囲まれた可愛らしい里。ぽつんとぽつんと民家の竹林が盛り上がり、平たい緑の田んぼが何枚も続いている。  「ねえ涼、もうすぐだよ」 「まだかかるよ」 「でも、来たって感じしない?」 「まあね」 涼だって、ワクワクしてるんじゃない、と鈴は嬉しくなる。  「いつもの景色だ」 ハンドルを握ったパパが言う。

          [短編小説]かがみ池(第2話)

          [短編小説]かがみ池(第1話)

          あらすじ  「涼ってば、いったいいつからあんなに憎たらしくなったんだろう。ちっちゃかった時なんて、とおっても可愛かったのにっ」 可愛さあまって憎さ百倍。鈴(りん)は頬をふくらませ、プリプリと怒りながら一人きりで帰り道を進んでいく。  「私達は双子よ。おんなじ時間に学校が終わって、おんなじ家に帰るんだから、一緒に帰って当たり前じゃない」  鈴は、さっきの涼の表情と声をまねして、 「先に帰ってろよ」 と口に出してみる。  「ぶわっかじゃない?!」 お腹の真ん中がむかむかして、頭

          [短編小説]かがみ池(第1話)

          [短編小説]カゴの小鳥

           「あなたは今、気鬱の病に罹っているから、しばらくは気楽に過ごしてください」 そう言った、短髪の胡麻塩頭の医者の表情をみると、からかっているわけではないらしかった。ただ事務的に、機械的に告げる男。会ったばかりのこの男の出す薬を、無警戒に体内に取り入れる患者の自分。これは、信頼ではなく怠惰だ。  病院と薬局と、数時間の拘束に疲れた僕は重い玄関扉を開ける。すると間髪入れずに、小さな高い鳴き声で、来い来いと鳴く小鳥。僕は、ベッドを横目に嫌々と小鳥の元へ行く。  「帰ったよ。さあ静

          [短編小説]カゴの小鳥

          [掌編小説]カメムシ

           盆に三歳になった孫が遊びに来た。  こんな田舎じゃ退屈するかと思ったが、玄関であいさつをすませると、すぐに我が家の庭に出てうろうろと散策を始め、しばらくすると隅でうずくまって、動かないでいる。  こちらも煙草の煙をくゆらせつつ、開け放った掃き出し窓からじっと孫を見ている。  娘が来て、坊やに帽子をかぶせてくれと頼まれる。  煙草の火を消すと、縁側からツッカケを履いて出て、孫の元へ歩いていく。近づくと、孫がこちらをちらりと見るので、帽子をかぶせてやる。  「そんなに面白いもの

          [掌編小説]カメムシ

          [掌編小説]春の日

           彼女から声がかかるのを待とうか。それとも、まだ遠くの人影の彼女を探して、両手を大きく振ろうか。  そんな大胆なこと、私の柄ではないか。自分が小心な男であることは、十分理解している。  そろそろ彼女が来る頃だろうか。  太陽が昇って、河川敷の草花が光る。雲一つなく、遠くのビル街の姿もくっきりしている。風は穏やか。緩やかに流れる水面を見つめながら、彼女を待つ。  「おはようございます、坂下さん」 彼女から声がかかる。 「おはようございます、小野さん」 私は、いま気付いたかの

          [掌編小説]春の日

          [短編小説・児童文学]秘密の友達

           「日比野さんバイバイ」 「うん。また明日」  放課後の教室。一時の騒がしさが過ぎれば、思い出したようにしんと静まり返る。  四年生に上がれば、女子はバレー部、男子は野球部に強制的に入部させられる。だけど、私はそこに含まれない。  クラスのの女子が、皆連れ立って体育館に向かうなか、ぽつんと残る私。  寂しくないといえば大噓になる。  「さて、行きますか」 誰にでもなくつぶやくと、私は一人、教室を後にする。  誰もいない廊下を通って、向かうのは音楽室。放課後も鍵は開いていて自

          [短編小説・児童文学]秘密の友達

          [短編小説・児童文学]おいてきぼり

           「ママー! たいへーん! パパも来てー」 「陽菜、静かに。ご近所迷惑でしょ。何なの?」 「大変なんだってばあ」 「やだ! 何で? パパ、パパ来てー!」  今朝は早くから騒がしい。中学生にもなって姉ちゃんは奇声をあげている。ああ、母さんもか。小学生だって疲れているんだ、日曜日くらいゆっくりと朝を迎えたいものだよ。なんて、いつもだらだらと寝ているだけだけど。まあ、どっちにしても俺はまだ寝させてもらおう。  ん-。朝のお布団の気持ち良さったらたまらないね。  「とりあえず、家

          [短編小説・児童文学]おいてきぼり

          [掌編小説・童話]ポラリスとルシオ(改訂)

           北極星が輝く夜、厩舎で一頭の母馬が産気づきました。  生まれたのは、白い美しい仔馬でした。  馬丁は喜んで上役に報告すると、仔馬はお姫様の十二の誕生日祝いに贈られることになりました。  お姫様の仔馬はポラリスと名付けられ、大切に育てられました。  立派な若駒になったポラリスは、お姫様を背中に乗せるのが好きでした。  お姫様は、ポラリスを可愛がり、馬丁によく世話をするよう命じました。  ポラリスは、お姫様を降ろすと、ロバのルシオと過ごしました。  ルシオは働き者で心の優

          [掌編小説・童話]ポラリスとルシオ(改訂)

          [掌編小説・童話]銀の指ぬき

           マイアはおばあさんとふたり、田舎で暮らす女の子です。  おとうさんは戦争で遠くの国に行ったきり帰ってきません。  おかあさんはマイアが小さい時に病気で亡くなってしまいました。  マイアは、それでも元気に暮らします。大好きなおばあさんが一緒でしたし、右手の親指には、おかあさんがはめていた銀製の指ぬきをいつでもはめていましたから。  少しくらい辛いことがあっても、指ぬきを太陽にあてて輝かせると、心が温かくなりました。それでマイアは、いつでも笑顔でいられました。  そんなマイ

          [掌編小説・童話]銀の指ぬき