[短編小説・児童文学]おいてきぼり

 「ママー! たいへーん! パパも来てー」
「陽菜、静かに。ご近所迷惑でしょ。何なの?」
「大変なんだってばあ」
「やだ! 何で? パパ、パパ来てー!」

 今朝は早くから騒がしい。中学生にもなって姉ちゃんは奇声をあげている。ああ、母さんもか。小学生だって疲れているんだ、日曜日くらいゆっくりと朝を迎えたいものだよ。なんて、いつもだらだらと寝ているだけだけど。まあ、どっちにしても俺はまだ寝させてもらおう。
 ん-。朝のお布団の気持ち良さったらたまらないね。

 「とりあえず、家の中に入れようよ」
姉ちゃんうるさい。
「え、入れるの? 大丈夫かしら」
母さんうるさい。
「しかたないだろう。このまま外に置くわけにもいかない」
父さんまでうるさい。
「ぴーぴーぴーぴー」
え? 何の音?

 んもー、がやがやと何なんだよ。こっちはゆうべ寝付かれなくて、まだ眠いってのに。どしどしと不機嫌に階段を下りてリビングへ向かう。
 「朝から何やってんの?」
そう言いながら、俺は扉を開けた。

 「ぴーぴーぴー!」
リビングに響く聞きなれない高音。三人が囲む中心に置かれた、大きな檻。その中で動く、ふわふわ。派手なオレンジの頭と緑の背中、お腹は真っ白な。
 「と、鳥?」

 「あ、おはよう陸斗」
母さんがいつものようにあいさつする。そんな場合? と思いつつ、俺もあいさつ。
「おはよう。で、この鳥どうしたの? まさか飼うの?」
「おはよう」
「おはよう」
姉ちゃんも父さんもきちんとあいさつ。
「オハヨー」
え、鳥もあいさつした。

 「こいつ、いまオハヨーって言ったよ」
俺がはしゃぐと姉ちゃんもはしゃぐ。
「言ったね。言った言った」
姉ちゃんが興奮して
「もう一回言ってごらん。オハヨー。オハヨー」
とくりかえす。

 「で、この鳥、何なの?」
俺が聞き直すと、母さんが教えてくれた。
「あのね、さっき陽菜が新聞を取りに玄関を開けたら、この鳥がケージに入れられて置いてあったんだって。あと、紙袋に鳥の餌とか、これは? おもちゃかしら?」
「それってどういうこと?」
なんか嫌な感じがする。
「たぶん、捨てられたんだろうな」
父さんの声が固い。父さんは怒るとこういう声になる。俺は少しピリッときた。

 「あら? 何かしら、これ」
紙袋をガサガサやっていた母さんが白い封筒を手に止まった。封を開けると、母さんが読み上げる。
「ええと。神崎様、突然で申し訳ありませんが、この可哀そうな鳥をどうか家族に迎えてやって下さい。私はもう飼えません。空に放つのはどうにも忍びありません。何とぞ何とぞ、よろしくお願いします。ですって」
母さんはため息。
 「差出人の名前も書いてないのか?」
父さんが怖い。母さんは首を横にふる。

 「ねえ、その差出人、向かいのお家のお兄さんだったりしない?」
姉ちゃんが鳥から目を離さずに言う。
「昨日の夜、たくさんの段ボールを大きなトラックに積んでいたじゃない。ガチャガチャうるさかったから、窓から覗いたのよ。あれ、引越しよ。ご近所にあいさつもなく、それもあんな遅くに。つまり夜逃げね。このこ、置き去りにされたのよ」
 なるほど、ゆうべうるさかったのは向かいの家か。姉ちゃん鋭いんじゃないか?
 「陽菜、おくそくでものを言ってはいけないよ」
父さんがたしなめる。そうだ、姉ちゃんはけいそつだ。

 「とりあえず、このこのご飯はあるから、まず行くのは本屋さんかしら? 飼育書買わないと」
 母さんは、もしかしてこの鳥を飼うつもりなのだろうか?
 「そうだな、迷子とは違うからな。警察に連れて行っても、元飼い主も名乗り出ないだろう」
 父さんも、この鳥飼うつもり?
 それって、まずいんじゃ。

 「ねえ、まさか飼うの?」
 さすが姉ちゃん、ストレートに聞く。
 そう、俺と姉ちゃんが飼いたいのは、トイプードルだ。
 許可してもらうために、タッグを組んで、父さんと母さんを説得してきた。それで、つい先日OKをもらったところだった。
 ここでこの鳥を飼うことになったら、トイプードルの件はどうなるのか。

 「ふむ。君たちが仔犬を飼いたがっているのは理解しているよ。そして、鳥と犬をどちらもを飼う予定はない。ただ、少し、この鳥に時間をやらないかい?」
 パパがやさしくケージに手をのせる。
「今、このこを飼うかどうかは決めない。ただ、見放すこともしない。このこの新しい飼い主を、一緒に探してくれないかな?」
 俺は姉ちゃんと目を合わせる。見付ければいいんだ。そしたら、約束通りトイプードルだ。俺だってそんなに冷たい奴じゃない。
 俺と姉ちゃんは同時にうなづいた。

 「オハヨー」
オレンジと緑の鳥は、いつのまにかケージの天井に逆さまにぶら下がって、小刻みに揺れていた。

 「シロハラインコよ、それ」
昼休み、突然会話に割り込んできたのは、あいさつくらいしかしたことのない芽衣さんだった。彼女は、つやつやの長い髪を緩く束ねた、大人しい印象だけのこで、こんなにハキハキしゃべるとは驚いた。
 「とっても可愛いのよ。遊ぶのが好きで、人懐っこくて、そうね、子犬のイメージって言えばわかりやすいかしら」
 「芽衣さん、鳥、詳しいの?」
同じくびっくりしているのは、俺の友達の大輝。大輝に昨日の鳥のことを話していたら、芽衣さんが教室の端からツカツカと近づいてきて話し始めたというわけ。
 「勉強中なの。母が鳥好きで、うちにもピンク色のオウムがいるわ。もうおばあちゃん鳥なんだけど」
 ほほを少しピンクに染めて話す芽衣さんは、完全に俺の決めつけをぶっ壊した。

 「でも、許せないわ。その元飼い主。私、陸斗君に全面協力する。鳥の里親サイトとかも紹介するし、母にも協力してくれるよう頼んでみる」
机に手をついて、前のめりになる芽衣さん。大輝も気圧されて口をあんぐりしている。

 「あ、ごめんなさい。ずうずうしく話に割り込んじゃって。いつもは、こんなじゃないんだけど、鳥のことになると、ね」
と照れる芽衣さん。俺は、鳥の里親探しの仲間を得て、俄然やる気を出した。

 その日の夕方、さっそく芽衣さんと大輝はうちに来てくれた。リビングに案内すると、
 「こいつが、その鳥です」
と鳥を紹介する。鳥は、また天井に逆さまにぶら下がっていて、ゆらゆらと体を揺らしている。
 「オハヨー」
鳥があいさつすると、ノリのいい大輝と、鳥好きの芽衣さんは、「おおっ」と声をあげてくれた。
 なぜか母さんも拍手で参加表明。
「ママだって、鳥さんの事知りたいわ」
だそうだ。

 「そうですね、この飼育本、すごくおすすめの本です。この本を選ぶなんて、陸斗君のお母さんはセンスいいですね。鳥のご飯のことは、この本の通りでいいと思います。私からは、安全の確保についてと、シロハラインコの遊びについてお話できたらと思います」
 本のチョイスを褒められた母さんは、本気で喜んでいる。

 芽衣さんの話は、教壇に立った先生みたいに、いやそれ以上に上手だった。
 人間の部屋の中って意外と鳥にとって危険がいっぱいだったし、食べるものだって、俺達には平気でも、鳥には毒だったり、考えてもみなかったことだらけだった。
 もしかして、仔犬のこと、もっと勉強しておいた方がいいじゃんじゃないか? 心強い仲間に、俺はもう里親を見付けたような気になっていた。

 「うふ、芽衣ちゃん凄いわねえ。もしかして、将来は鳥のお医者さんかしら」
「はい、その、がんばろうと思ってるんです」
 なんだって、もう将来の夢とかあるの? かっこいい!って思うのに、なんだかとっても焦る。それってなんで?

 「あと、信頼できる里親募集サイトが、これと、ここと、ここです。身近な人に聞いてみるっていうのも大事だったりするそうです」
 「ふんふん、じゃあ写真が必要ねえ」
母さんがスマホを準備する。
「鳥ちゃん、こっちむいてー」
「あの、このこ落ち着いているみたいだし、ケージから出していっしょに遊んでみませんか? そうしたらいい写真も撮れると思うし。さ、さわりたいし」
少し遠くに感じた芽衣さんを、とたんに身近に感じた。

 「それ、俺も思った。この小さいマラカス、この鳥はどう遊ぶの?」
それまで大人しかった大輝が、顔を輝かす。
 「あ、ケージを開けてみて、様子をみてからね」
 芽衣さんがゆっくりケージの扉を開ける。
 鳥がケージの中で首をかしげている。
 「やさしく声をかけてあげて。鳥さーんって」

 「あの、さあ、鳥さんって呼ぶの、変じゃない?」
大輝が言う。
「確かに」
と全員がうなづく。
 「なんて名前にする?」
俺が聞くと、
「みかん」
といないはずの姉ちゃんの声がした。
 「そのこはみかんちゃん。もう決めたのー」
 姉ちゃんは、リビングのガラス扉の向こう側に張り付いていた。芽衣さんの言う通り貼っていた、「放鳥中、出入り禁止」の紙にしっかり従っている。
 「私もみかんと遊びたいー」
 こうして鳥の名前は「みかん」という名前に決まった。

 我が家の毎日のおはようが、一つ増えた。
 俺は日曜日の朝もちゃんと起きるようになった。
 餌と水の交換は、曜日で姉ちゃんと交代。それはすんなり決まった。もめたのはおやつをあげる係。これはどちらも譲らず、まだ交渉中。

 本棚には、鳥の本が増えた。飼育本に生物図鑑、ただ鳥が可愛いって本もあった。俺は読めるだけ読んだ。
 「陸斗が本読んでる。ママ―、たいへーん」
なんて姉ちゃんはやかましかった。

 みかんは芽衣さんの言う通り、人懐っこくて、遊び好きで、可愛かった。
 鳥って飛んでるもんだと思ったけど、ほとんど飛ばない。床をトテトテ歩いたり、くちばしと足を使って俺たちの体をよじ登ったりだ。
 大人しくなんてしていない。隙あらば俺の手とプロレスごっこだ。

 大輝が気にしていた小さなマラカスは、みかんのお気に入りだった。寝っ転がって、足で器用に掴んで、シャンシャンとふる。持ったまま歩いたり、床にわざとぶつけて音を出したりもした。
 オハヨーの他にも、何か言ってるみたいなんだけど、理解不能。

 一緒に遊ぶたび、みかんの可愛いところが次々わかって、そのたびに里親募集サイトのピーアール欄の書き込みが増えた。

 母さんと姉ちゃんなんて、ふたりでブログを作って、動画を載せ始めた。
「今日はいっぱいぺたぺた歩きを披露してくれました」
なんてデレデレになっている。

 俺も姉ちゃんも母さんも父さんも、満場一致でみかんのかわいい姿ランキング一位は決まってる。
 みかんは楽しいと、ホッピングするんだ。
 両足を揃えてピョンピョンピョンピョン。全身から喜びが伝わってくる。これ、ものすごく可愛い。

 毎日が楽しかった。これまで以上に皆リビングで笑った。いつもその中心に、みかんがいた。

 いつもと変わらない夕食のはずだった。でもそれは突然やってきた。
 「陽菜、陸斗、みかんを迎えたいって方がいるんだけど、どうかな?」
「え?」
「え?」
姉ちゃんと声が重なった。

 「芽衣ちゃんのお母さんの知り合いの方で、鳥にも詳しいんですって。若いご夫婦で、娘さんが一人、小学校一年生ですって」
母さんの言葉に、姉ちゃんが固まっている。
 「君たちは、本当によくやった。みかんを大切に世話した。これなら、仔犬を迎えてもしっかり面倒をみれるだろう」
父さんの言葉に、僕は固まっている。
 ご飯が上手く喉を通らない。それは、姉ちゃんも一緒みたいだった。俺達は手を止めた。

 わかってたことなのに。それを目標にあれこれしてきたのに。いいことのはずなのに。これでトイプードルが飼えるのに。
 心臓がキンとして、痛い。

 「なしにする」
姉ちゃんの声が震えている。決めたことを覆すことを、父さんは好きじゃない。
「何をなしにするんだい?」
父さんはやさしく聞いてくれるのに、心臓が騒ぐ。
「仔犬、飼わない。みかんと、一緒にいたい」
姉ちゃんばかりに言わせるな。俺は男だ。
「俺も、みかんといたい。仔犬、やめる。みかんとずっと一緒にいる」

 「それは、難しいかもしれない」
「なんで!」
「なんで?」
また声が重なる。
 父さんが続ける。
「シロハラインコの平均寿命は二十五歳から三十五歳。三十年くらい生きると考えよう。みかんの年齢はわからない。すごく若いかもしれないし、歳をとっているのかもしれない。もし、みかんが一歳だったら? 今から三十年お世話をしなければいけないね。僕はいま四十五歳だ。三十年たったら七十五歳。そのころには健康に問題が出るかもしれない、もしかしたら生きていないかもしれない。そうしたとき、みかんはどうなる?」
 「私がお世話する」
「陽菜は責任感のある子だから、そう言ってくれると思ったよ。でもね、君は今子供で、これから大人になっていく。どんな道を歩むか決まっていない今の君の言葉では、みかんの一生を負えないんだよ。みかんの為に何かをあきらめなければならなくなった時、君はみかんを変わらず愛せるかい?」
「愛せるよぉ」
 俺は、隣の姉ちゃんの顔が見れない。でも姉ちゃんの声が泣いてる。
 「俺も、俺だって」
なんだってこんなにうまくしゃべれないんだ。

 「僕は陽菜と陸斗の優しさと強さを誇りに思っているよ。でも、みかんのことは諦めてほしい」
父さんのきっぱりとした声が、耳に残った。

 ごちそうさまをすると、姉ちゃんが珍しく俺の部屋にやってきた。
 「どうする?」
開口一番、姉ちゃんが言った。
「わかんないよ」
俺も姉ちゃんも目が赤い。
「せめてみかんの年齢がわかればな。検査とかないのかな?」
姉ちゃんは何を言っているのか。
「わかったって、若かったら一緒じゃないか」
「でもさ、元の飼い主に飼われてたんでしょ? 一歳ってことはないんじゃないかな。みかんが入ってたケージだって新しくなかった。もし、みかんが十五歳くらいだったら?」
 姉ちゃんの言葉に、希望があるようなないような。俺達は、小さな可能性にすがりつきたかった。

 結局、ふたりで話しても解決策は見つからないまま、解散となった。
 今夜は上手く眠れそうにない。
 風の音だろうか、ピーピー小さな音が鳴っていた。

 あれから数日たった。里親希望の夫婦は、俺と姉ちゃんの気持ちが落ち着くのを待ってくれるのだそうだ。本当にいい人なんだろうな。きっと、みかんも幸せに暮らせるんだろう。でもなぜだろう、幸せそうなみかんが浮かぶのに、涙が出てくる。

 「先生、気持ち悪いです」
泣いているのがバレないように、保健室に逃げた。

 休み時間になると、大輝と芽衣さんが来てくれた。俺はみかんの里親のことを全部話した。
「今日、とりあえず会いに来るんだって、その人たち。みかんとの相性をみるんだって」
話しながらまた涙が出た。ふたりは俺の涙を見ないふりしてくれた。

 「もしできそうなら、次の飼い主さんの為にみかんちゃんの好きなもの、好きな遊びのまとめを作ってあげて。でも、無理はしないでね」
 芽衣さんがいいアドバイスをくれた。そっか、まだみかんにしてやれること、あったんだな。

 俺は具合が悪いふりを続けて、そのまま早退することにした。
 母さん達は、俺達がいないときに対面を済ませようとしてくれたけど、俺、今会っておきたい。

 家の前まで来ると、変な奴がいた。もうずいぶん暖かいのに、ニット帽を目深にかぶって、上下黒い服をきた細い大人の男。そいつが俺の家の様子をうかがっている。
 泥棒? あんな目立つ格好で? 
 男は、ときおりピーピーと口笛を吹いている。
 俺は、角に身を隠して男を観察した。

 「何してるんだ?」
突然声を掛けられて振り向くと、父さんが立っていた。
「隠れて」
父さんが隠れる。
「あいつ、怪しいんだ」
父さんも警戒する。
「父さん今日帰り早かったの?」
声を落とす。
「ああ、今日は、みかんの顔合わせだから」
父さんは何だか恥ずかしそうに言う。

 暑いんだろう、男が、帽子を脱ぐ。そして、その顔は。
「父さん、あいつ、向かいのお兄さんだ」
言うや、俺はお兄さんに突進した。お兄さんが元飼い主なら、みかんの年齢を知ってるはず。みかんが十五歳なら、一緒にいられる。
 力んでしまっているのか、スピードが出ないのがもどかしい。
 こちらに気付いたお兄さんが逃げの姿勢を取る。逃げられる!
 後から駆け出したはずの父さんが、俺を抜いて凄い勢いで走っていく。それから父さんは、あっという間にお兄さんを捕まえてしまった。
 俺が追い付いた頃には、お兄さんは観念した様子でうなだれていた。

 「みかんの年齢は?」
「みかんの年齢は?」
俺と父さんが勢いに乗ったまま迫る。
「みかん?」
お兄さんが混乱している。
「シロハラインコ!」
父さんが凄む。
「あ、じゅ、十八歳ですー」

 「よっしゃー」
「やったー」
俺と父さんは、お兄さんをほっぽりだして、ふたりで抱き合った。

 「でね、そのお兄さん、引越した後、悪いことが続いたんで、鳥の祟りかもとか思って様子を見に来てたんだって。そこを捕まえたんだ」
 放課後うちに集まって、俺は大輝と芽衣さんにてん末を話す。
 「鳥を置いて行くなんて心映えの悪い人、悪いことが起きて当然ね」
芽衣さんは大変ご立腹。

 「でもなんで陸斗の家だったんだろうね。鳥を飼ってたわけでもないのに」
大輝の質問に、俺はちょっと照れて答える。
「ああ、なんか、毎日挨拶してくれて、仲のいい人の良さそうな家族だったから、って」
「悪党でも、見る目はあったのね」
芽衣さんが眉を少しゆるめる。

 「里親候補の人はどうしたの?」
「それが、ほんっとにできた人で、『残念だけど、みかんちゃんがものすごく愛されてるのはうれしい』って言ってくれた」
大輝にブイサインを見せる。

 「オハヨー」
みかんが、いつものぶらさがりポーズをみせる。

 「乾杯しましょ」
「昨日もしたけどね」
母さんと姉ちゃんがダイニングキッチンからオレンジジュースを持ってきてくれた。
 みかんみたいな、綺麗なオレンジ色。
 俺、大輝、芽衣さん、母さんに姉ちゃん。皆グラスを持つ。

 晴れて、みかんはうちの家族になった。みかんは年上だけど、俺の弟分とする。これから、何があったって、ずっとずっと家族だ。

 「乾杯!」


おわり

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