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「世界で1番住みたいまち」ポートランドから学ぶまちづくりvol.2

3 ストーリー/コンテクスト  Story / Context

ポートランドでは、まちのアイデンティティを行政、企業、NPO、市民等々が共有している強みを感じられました。以下に、その一部を記します。

これらをこのまちの「ストーリー」(あるいは「コンテクスト」)として、時代時代でそれぞれの立場にて語り継いでいくことが、いかに大きな力を生むか。

私は、ポートランドの町が生み出す「地域価値」の大きさに驚き、ストーリーを未来へ紡いでいくことが、まちづくりにとってどれほど大切かを学びました。

(1) ポートランドの愛称とシンボル

ポートランド滞在中、“City of Roses”“Stamp Town”“Bridge Town”といった親しみや誇りを伴ったポートランドの別名を耳にしました。これらは町の特別な価値伝統を表しています。

ポートランド国際空港の略称“PDX”もポートランドを示す言葉としてクールに捉えられています。
(日本はセンスない行政が勝手に決めたりするので流行らないし価値が生まれないこともしばしば・・・)

また、ポートランドのアイコンともいえるシンボル(看板、ネオン、橋、広場、エースホテル、路上のウォーターサーバー、世界一小さな公園等)も住民に愛され、かつ、観光客からの称賛と羨望の眼差しもあります。
こういったものは、住民に対してまちへの愛着をうみ、非住民に対してまちの魅力をプロモーションできる高い価値があると感じました。

有名なネオンサイン
まちの至る所にタップウォーターがありました
世界一小さな公園

(2) ポートランドのヒストリー

ポートランダーは、例えば、高速道路を廃止・撤去して路面電車や公園(表紙写真)をつくったり、大規模駐車場建設計画を反対して公共広場"Pioneer Courthouse Square"をつくったりといった一つ一つの市民活動または市民協働の積み重ねを共有して語り継いでいました。
「自分たちがつくった」あるいは「自分たちも関わった」という成功体験が、地域への誇りを持つことにつながり、次なる活動をも生み、課題に対処する原動力ともなって連鎖(スパイラルアップ)していると考えられます。

ポートランドのリビング 市民活動の成功体験の象徴

(3) ポートランドの性格

全体的な性格としてよく挙げられていたのは、創造的で先進的、革新的で進歩的、能動的で主体的、生活の質を重視、ローカルファースト、ジェンダーフリー、クール、おしゃれ、スポーツ好き、祭り好き等々。

JUST DO IT のNIKEもポートランド発

このまちの性格に共感して、毎日多くの新住民や観光客がやってきます。

そして、毎日新たな取組やネットワークが生まれている活気が、このまちでは感じられました。

とある建物の壁に大きく書いてある“Keep Portland weird(ポートランドは変人であれ)”という自分らしくあることを象徴する言葉も強いブランド力を持っていました。

Keep Portland weirdの看板(民間の設置)
Keep Portland weirdのマグネット(お土産グッズ)

(4) ブランドとしての「ポートランド(“Portland”)」

チェーンストアは少なく、圧倒的に地域に根差した小規模店舗が多いです。あるいは、チェーンストアもポートランドに店舗を置くことに価値を感じ、ポートランドにうまく溶け込もうとしているように見受けられました。

新規オープンした無印良品はポートランドに溶け込んでいます

多くの店で独自の商品を扱うだけでなく、店名のロゴと“Portland”の文字の入ったTシャツやグッズなどを販売していました。

ポートランド産の商品をフィーチャーして売っている店が多くありました。

空港のカーペットにすら住民は愛着があり、住民や企業によって数々のカーペット模様のグッズが作られているくらいです。

PDX空港のカーペット
カーペット柄のグッズがたくさん

オーガニックな地場野菜やオリジナルのレストラン、フードカート、サードウェーブコーヒーや地ビール、ワイナリーいった「食文化」、アートギャラリーや露店、ハンドクラフトなどの「芸術」、古くなった住宅・倉庫のリノベーションや古い物のリペアなど昔からの物を大切にして「価値を高める文化」、車を極力使わず自転車と公共交通を中心にした「環境配慮」、公園や自転車、技術や情報といいたものを「シェアする文化」を感じられました。

ファーマーズマーケットの様子

↑毎日どこかでマーケットが開かれています

ポートランドはクラフトビール天国
たくさんのブルワリーがあります
一番人気のサードウェーブコーヒー「スタンプタウン」
シェアサイクルはまちのあちこちに
電動スケーターもいち早く取り入れて流行中

(5) ポートランドの評価

「住みたいまち全米1位」「最もクリエイティブなまち全米1位」「環境に最もやさしいまち全米1位」「最もおいしいレストランが集まるまち」などの外部評価をまちの魅力につなげています。


こういった情報はポートランドのごく一部です。
まちに住む多くの人がこの良さを語り継いでいること、まちに訪れた人がこの良さを感じ取って情報発信していること、これがどれだけまちの価値を高めているかということをひしひしと感じました。
単純なことのようで、ものすごく難しいことだと思います。「自分たちで自分たちのまちの価値を高めていく」という思いは、まちへの愛着から生まれるものだと感じました。

つづく。

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