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アンラーンよりも学びほぐし

1 ジェダイも必要なアンラーン

これは、私が敬愛する映画『スター・ウォーズ』エピソード5にて、マスター・ヨーダが、ジェダイを目指すルーク・スカイウォーカーに向けて言った隠れた名言です。私の大好きな言葉でもあります。

「あなたが学んできたことをアンラーンしなくてはならない」

​Learn(学ぶ)の反対のアンラーンとは、どのような意味でしょうか。​

2 学びほぐしとは

アンラーンは、日本語で「学びほぐし」と訳されています。卓抜な訳だと思います。

人間は、大人になるほど自分の考え方や価値観に縛られる傾向があります。学びほぐしとは、他者からの学びを基に自分を再構築していく考え方です。

このアンラーン≒学びほぐしという考え方は、ヘレン・ケラーの発言と共に、日本人哲学者・鶴見俊輔によって日本に紹介されました。

鶴見俊輔は、ハーバード大学の学生時代、ヘレン・ケラーと言葉を交わす機会を持った際に、ヘレン・ケラーにより使われた「アンラーン」という英語に対して「学びほぐす」という訳語を与えました。それが、2007年の朝日新聞に紹介され、今日、多くの人が「アンラーン」という言葉を使っています。
鶴見俊輔・徳永進(医師)の対談にて、そのときのエピソードについて次のように語っています。

戦前、私はニューヨークでヘレン・ケラー(1880 - 1968)に会った。私が大学生であると知ると、「私は大学でたくさんのことを学んだが、そのあとたくさん、学びほぐさなければならなかった」といった。学び(ラーン)、のちに学びほぐす(アンラーン)。「アンラーン」ということばは初めて聞いたが、意味はわかった。型通りにセーターを編み、ほどいて元の毛糸に戻して自分の体に合わせて編みなおすという情景が想像された。
大学で学ぶ知識はむろん必要だ。しかし覚えただけでは役に立たない。それを学びほぐしたものが血となり肉となる。
アンラーンの必要性はもっと考えられてよい。

1904年頃のヘレン・ケラー

3 アンラーンの意味

アンラーン(unlearn)を英語辞書で引くと、このように意味付けされています。
〔学んだことを意識的に〕忘れる
〔知識・先入観・習慣などを〕捨て去る

哲学者である鶴見俊輔が感じたような意味での「学びほぐし」という意味は原義にはないのです。
(英語のネイティブな方、いかがでしょうか? ご意見伺えたら嬉しいです。)

自戒の念を込めて言いますが、どうもクールな用語を使いたくなってしまうため、「学びほぐしって知ってる?」よりも「アンラーニングって知ってる?」と言いたくなってしまいませんでしょうか。

この場合、正しくは「アンラーニングって知ってる? 哲学者によって『学びほぐし』って訳されて日本に紹介されたんだけど、その学びほぐしって考え方がおもしろくてね・・・」という感じでしょうか。

【参考情報】
日本では「学び直し」という言葉も多く使われています。
リラーン(relearn)を英語辞書で引くと、このように意味付けされています。
〔すでに学んだことを〕学び直す、再び学ぶ、勉強し直す
その関連用語として「リカレント教育」がありますので、参考にリンクを張っておきます。

4 学びほぐしの深い意味

学びほぐしの紹介で話されたヘレン・ケラーの言葉を紐解いてみましょう。

「私は大学でたくさんのことを学んだが、そのあとたくさん、学びほぐさなければならなかった」

「大学」と「そのあと」という表現があります。ヘレン・ケラーの言う「そのあと」=「社会」と考えてみると、たくさんの「体験」によって学びほぐされたと推察できます。

では、その体験とは何でしょうか?

社会では、大学で学んだそのままの知識・理論などでは、実践に役に立たない場面に遭遇することも多いでしょう。社会で、多様な他者との対話や協働という体験が学びほぐす機会をもたらせたと考えることができます。
そして、その体験が、新たに知識・理論を学ぶ動機にもなっていたはずです。学びというのは、知識・理論だけでも、体験だけでも不十分であり、その両軸を並行して育んでいくことが豊かさをもたらせると思います。

例えば、一度型通りに編まれたセーターを1本の糸に解きほぐし、今の自分にあった型にしていく行為。
例えば、知識・体験を積み上げた知見のブロックを、他者から学び得たブロックと共に、再び積み上げ直す行為。
イメージしやすい学びほぐしの比喩ですが、これには「終わりがない」というのがポイントです。
つまり、自分の考えを構築しながらも、絶えず「新たな学び」「異なる可能性」があることに対してオープンになり、自分の考えを更新し続けていくということが「学びほぐし」という概念には含まれています。

そんなイメージを参加体験型の学びの場(ワークショップ)の中で、私は大切にしていきます。学びほぐすためには、ワークショップが有効です。参加体験型の学びの場において共通の体験を通して他者への理解を深め合うことが地域やビジネスにおいて重要です。D&Iと学びほぐしも関係しています。
だからこそ、従来の「教えるー教えられる」という関係性ではなく、主体的に「学び合える」、弱みや苦手を「補い合える」、他者と「高め合える」、多様性を「活かし合える」といった「合」のある関係性を築いていきます。

5 まとめ

いかがでしたでしょうか?
アンラーンや学びほぐしについて、2010年頃から事あるごとに紹介してきました。特に、高齢者を対象とした講座の初回に「大人の学びほぐしと地縁・学縁づくり」と題して、40歳以上も離れたシニアの皆さんに熱く語ったのを思い出します。

ビジネスもまちづくりも、絶えず学びほぐしの姿勢が大切だと思います。
弊社では「アクティブ・アンラーニング・サイクル」を提唱し、誰もが学びの客体から主体へ成長するように、ワークショップ等でこの理論を活かしています。

「アンラーンよりも学びほぐし」というタイトルにも関わらず、大変恥ずかしいですが、「どうもクールな用語を使いたくなってしまう」のです(笑)ご容赦ください。
本来、厳密には異なりますが、日本においてはアンラーンも学びほぐしもほぼ同義語になっています。
今回の記事が役立てば幸いです。
ぜひ、「スキ」「フォロー」いただければ嬉しいです。

おわりに

私たちサステナブルタウンでは「地域に暮らす一人一人が環境・社会・経済にとって最良な選択を見つけられる”サステナブルな地域社会”を日本中にたくさん作る」ことをミッションに活動しています。

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公共施設建替え
ソフトづくり、協働・共創の関係づくりなど

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気運醸成、レガシー創出、プロジェクト支援など

さまざまな分野にて、2012年より、全国各地にて、その地域の課題に合わせてワークショップや講座、講演会等の内容・方法を一つずつ考えて取り組んできました。また、計画の策定支援、職員研修、パンフレット作成支援なども行ってきました。

学びの力でより良い社会づくりを目指す活動を行う専門家として、これからもご要望に応じて取り組んでいきます。
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