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天国は奥多摩にあった #おくたま文庫

 2021年最大の発見。自分の求める全てを兼ね備えた場所は奥多摩にありました。自然の中の静寂×選書された古本×ふかふかのソファ×旅館の中の喫茶店。ここが気に入らない人とは友達になれないってくらいストライクゾーンど真ん中で、もしかして自分のためにあるお店?と錯覚してしまうほど。そんなお店も契約期限満了で、今の場所で営業できるのは3月までとのこと。お店が無くなるわけではないけれど、今のおくたま文庫を超えられるのかなって思う位に総合点が高い。

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 奥多摩の渓谷と森に囲まれた場所で、営業日は月に4日。簡単に行ける場所ではありません。でも本当に大切なものとの間には適度な距離感が大事だと思っていて、ここは距離的にも時間的にもベストだなと。しかもお店の入っている場所は老舗旅館の地下3階。地下と言っても渓谷沿いに建っているので昼は差し込む光で明るく爽やかな印象、夕方になると山に遮られた陽光の余韻と暖色系の照明が雰囲気をつくり変えます。そこに合わせるのは全席革張りのふかふかソファ。沈み込み包まれる身体はリラックスしながら、本を読む頭は冴えわたらせて。

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 店内には選書された古本がずらり。紅葉よりも落ち葉に、新刊よりも読み継がれる古本に。個人の本屋が選書するのは当たり前ですが、古本を選書する本屋はそう多くはありません。もう既に誰かが読んだ=自分以外の誰かのお墨付きを得たようなもので、そこに選書が加わることで信頼感がぐっと増します。硬派な岩波文庫から子ども向けの絵本まで様々。「店主の本棚」コーナーもあって、これこそが本当の本屋だよね、と笑みがこぼれてしまいました(“素敵”に出会えた喜び)。読書のお供には淹れたてのコーヒーやバインミーを始めとした軽食たち。お気に入りは期間限定メニューのホットチャイ。私にとってチャイの香りはおくたま文庫と結びついて離れません。匂いで記憶が呼び起こされるシーン、どこかで読んだな。

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 オーナーの岡村さんはスナックのママに憧れているんだとか。そういえばここは旅館のスナック部分を間借りしているし、優しく受け止めてくれるような話し方がもうママ。こんな素敵空間を創り上げた時点で魅力的な方なのは確定しているけれど、ママに憧れるオーナーの人柄をより深く知りたくなります。多分、ここは店を楽しんだだけでは不十分で、ママ、ではなくオーナーが居てこそ完成する空間なのですね。ブックカフェに行くのではなく、岡村さんに会いに行く。これはもはや“ブックスナック”という新ジャンル。

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 帰り際にミヒャエル・エンデの「モモ」を購入。あまり見ない岩波書店のハードカバーが250円で買えてしまう奇跡。「今こそ読んで欲しい本です」との一言が普通の本屋では実現できない付加価値を生みます。早くこれを読んで感想を言いに行きたい。頭に浮かんでいるのはオーナーの姿。ここはもう既にスナックでした。

※12/19(日)訪問

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