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(詳細版)スルガ銀行2019年6月期決算を読む。証券化のお話。
はてなブログでごく簡単に「速報版」をupしましたが、こちらでは「詳細版」として短信と四半期報告書から読み取れるスルガ銀行の状況についてお話ししてみたいと思います。
年度決算から僅か3ヶ月しか経過しておりませんので、シェアハウス向け融資の状況などはほぼ変化がありません。
ただし、この四半期中にワンルームローン約1,080億円を証券化するなど、興味を引かれる取引も行われたことも開示されております。
【詳細版】スルガ銀行・シェアハウス向け融資の処理状況について。
ブログに簡単にまとめましたスルガ銀行のシェアハウス向け融資の処理状況について、こちらで「詳細版」として解説したいと思います。
なお、本稿はあくまで銀行側から見た視点で書かれております。
ローンの減免が行われた場合の銀行側の損失処理の仕組みについては説明しておりますが、スルガ銀行の法的責任や個々のシェアハウスオーナー(ローンの借り手)が減免を受けられるかどうかなどについて意見を述べるものではあり
銀行保証付私募債による「利益先食い」行為の可能性について。
2019年3月期の銀行決算の開示(決算短信)が出揃いました。
大きく報道されたところでは、投資用不動産にかかる大規模な不正融資発覚、多額の貸倒引当金繰入によって巨額赤字を計上したスルガ銀行も目立ちました。
他の地方銀行も、利ザヤの縮小とともにジワリと不良債権処理が増加するようになり、加えて株式市場全般の調整で保有株式が下落し含み益も減るなど、さらに苦境に追い込まれている様子が報道されております
民間銀行による政府向け貸出のフローと預金創造について。
銀行が取引先に貸出を行う際、そのために必要な現金を日本銀行から「引き出し」てくる必要はない、と言われます。
貸出に伴って預金は反対勘定に貸記されるだけで「創造」可能であり、日本銀行に預けられている当座預金から「紙幣」を引き出してくることは不要であるということは事実です。
日本経済新聞などの解説記事で、「金融緩和で積み上げられた日銀当座預金をデフレ脱却、景気回復のために成長分野への貸出へ振り向け
島根銀行の有報「税効果会計」注記を読む。
マイナス金利政策と地方の衰退で収益確保が難しくなり、苦境に陥っている地方銀行について、先日の新聞報道では「限界地銀」といういささかセンセーショナルな呼び方が付けられました。
こちらのnoteでも、小さな地方銀行である島根銀行の決算短信を材料に、コア業務純益が赤字になっている状況、つまり本業である預貸業務による利ザヤと役務手数料だけでは経費を賄うことができず、本業では利益を確保できなくなっている状
スルガ銀行のキャッシュ・フロー計算書を読む。
かぼちゃ問題~シェアハウス向けの自己資金エビデンスの改ざんなど、一連の不正が発覚して以後、スルガ銀行は銀行の生命線である「信用」を失い、預金がどんどん流出していっております。
これを見てネットには「スルガ銀行、資金繰りが苦しいのでは?」などという憶測も流れております。
さらに、webの噂、個別行の経営問題を論評しているうちはよいのですが、金融システム全体の不安を根拠なく煽るようなこともたまに見
銀行業における固定資産の減損について。みずほFGの場合。
先日、みずほフィナンシャルグループが、店舗の損失で数百億円、ソフトウェアの損失で数千億、合わせて5,000億円の固定資産を「減損」するとの発表を行いました。
減損とはなんでしょうか。
減損とは、企業が保有している固定資産の簿価が一気に切り下げられ、損失処理されることです。
なぜ、減損がおきるのか、そもそも企業が固定資産を保有しているのはなぜなのか。それは企業会計上、どうあらわされているのかを
ソフトウェアと減損(前フリ)。
今日の銀行業務は、ソフトウェアの働きなしには成り立ちません。
数万件~数百万件に及ぶ預金・貸出金の入出金、利息計算を間違いなく行う基幹系とも呼ばれる巨大なホストから始まり、銀行勘定で保有する有価証券の記帳管理、インターネットバンキング、投資信託や生命保険の窓口販売の実行管理するソフトウェア。
金融商品のマーケットデータを取り込んで時価をはじくシステム。財務会計のデータを取り込んで加工し、バーゼ
マイナス金利下の地域金融機関の運命について。福島銀行の場合。
2016年2月に日本銀行が導入したマイナス金利政策から2年を経過。もはや、預金利息と貸出金利息の利ザヤで利益を出すというビジネスモデルの地域金融機関の経営は行き詰まりつつあるように思われます。
先日は、事業会社の営業利益に当たるコア業務純益が赤字になってしまっている島根銀行の財務諸表を読んで記事を書きました。
島根銀行、まだ含み益のある有価証券(株式・国債等)を保有しており、本業の預貸業務では
みんなが「無能な人」になれば。
webに意味のある文章を書き込める人というのは、それなりに知識があって筋道を立てて物事を考える能力にも恵まれているのでしょう。
なので、新しいことを考えることもできない、エクセルを使った簡単な事務作業すらこなせない「無能な人」を揶揄する言葉がwebにはあふれています。
「ググることすらできないのかよ。」「SUMIFとVLOOKUPも使えないのか」って。
大企業と呼ばれる規模の企業の本社にも、
銀行の「本業における収益力」とは?
企業の良し悪しを見極める一つのポイントとして、その企業の「本業における収益力」がどのくらいあるのか、ということが挙げられると思います。
「財務諸表の読み方」といった市販の書籍では、企業の本業の収益力は営業利益を見ればいいと記載されていることが多いです。
銀行業の損益計算書を見ると、一般の事業会社とは異なり、そこには売上高もありませんし、営業利益も表示されておりません。
銀行業は、損益計算書の
自分のお金じゃないからこそ。
その昔、宅建試験のために民法を勉強したら「善管注意義務」というのが出てきました。
「余所様の財産を管理するのなら、注意して扱わなきゃいけない」、というような意味であったように記憶しております。
他者の財産を取り扱う職業の者に対してはこの善管注意義務というのがよくでてきてきます。
これはもともと「自分の財産の管理を扱うのなら不注意で毀損しても仕方ない、困るのは自分だけだ、でも他者の財産の管理を
続・銀行の資金繰りの実際について。
日本の金融システムが不良債権問題で揺らいでいた1997~1998年頃、多くの銀行が経営破綻に追い込まれました。
不良債権というのは、厳密な定義はそれぞれの法令や会計基準で定められておりますが、簡単にいいますと、融資を受けていた企業の事業経営がうまくいかなくなって、銀行からの貸出金元金が当初の約束通り返済されなくなり、利払いすら滞ってしまうことをいいます。
当時、不良債権問題を解説する報道記事の
体系的に学ぶって、どうすれば。
会計と税務に関する仕事をしております。
特に会計や税法に関する大学教育を受けてきたわけではなく、ほぼ独学です。
実務で出くわした問題を解決するためにあれこれ本や雑誌記事をめくったり。
新しい会計基準が適用になるとなれば、それへの対応をいろいろ調べて考えたりして。
こういう勉強の仕方だと、自分が経験したことがある事例には異常に強くなれるのですが、ちょっとだけ離れた隣の分野だとまるでわからなか
言葉による説得が効果を持つためには。
「話せばわかる」
「問答無用!」
などという、ちょっと昔の応答もありましたが。
言葉を尽くして懇切丁寧に説明すれば、きっと理解してもらえるという信念のようなものは、それなりに教育を受けてきた人間なら無意識に信じているものと思われます。
でも、言葉による説得が効力を持つ範囲というのはかなり狭くて、相手が共通の価値観を共有していて、話し手が用いる論理や用語の「正しさ」というものを予めわかってい
すらすらわかる銀行の貸倒引当金のお話。
先日、曙ブレーキが事業再生ADRを申請したことに伴い、貸出を行っていた地方銀行 武蔵野銀行が東京証券取引所に「債権の取立不能または取立遅延におそれに関するお知らせ」を開示しております。
http://ke.kabupro.jp/tsp/20190130/140120190130466363.pdf
適時開示には、「上記債権 7,000 百万円につきましては、2019 年 3 月期第 3 四半期