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子育て内省日記13〜自己主張〜

休日の夕方。駅前はクリスマスムードで大勢の人が行き交っている。様々や人工的な光が視界に入り、目がチカチカする。息子はその光景に興味深々でよそ見をしながら歩いている。息子の腕を掴み、人混みから逃げるように大通りからわき道にそれると、いつもは薄暗い通りに多くの露店が並んでいた。提灯の暖色の灯りにホッとしながら、ギター教室があるビルに入る

静かでひんやりとした待合室で休憩していると「さあどうぞ。」と先生が息子を個室に誘導する。息子は習い始めた時から一度もレッスンの途中で出てくることがない。集中力切らさずやってくれるので、安心して待ち時間を過ごせる。待合室で飾ってあるギターを手に取り、自分も練習を始める。自分にとって、ギターのこと以外忘れられる回復の時間だ。楽譜を見ながらフォームを崩さずスムーズに指を運ぶ方法を試行錯誤する。

あっという間にレッスンが終わる時間になった。来月分の月謝を支払う準備をしながら、行きの電車での息子との会話を思い出す。息子がギターを習い始めて1年ちょっとが過ぎた。慣れてきたこともあり、少しレッスンの時間を長くしても良いかなと自分は思っていたところだ。息子がこちらの様子を伺いながら遠慮気味に行った。「ギターの時間長くしようかな。」「もちろん!」驚くと同時に反射的に答えていた。「長いかも知れないけど大丈夫かな?」「うん。」「じゃあ来月からね。」

あまり主張することのない息子。息子から言ってきたことは可能な限り受け入れてあげようといつも思っていた。「自分がやりたいことを正直に言ったらいいよ。」息子のアウトプットを促すため、じっくり向き合ってきた。少しずつではあるけど、正直な気持ちが言えるようになってきた。

レッスンが終わり息子が勢いよく出てくる。待合室が急ににぎやかになる。「今日はどうだった?どこまで進んだ?」「ここまで。難しかったあ。」照れながら楽譜を指差し、今日習ったことを教えてくれた。「来月から少し長くなるよ。」「うん!」嬉しそうな表情で息子が答える。「集中力があるので大丈夫だと思いますよ。」先生も後押ししてくれた。

支払いを終え、先生にお礼のあいさつをして教室を出た。息子は勢いよく階段を降りていく。「急に飛び出たら人にぶつかっちゃうよ。」その声で息子が立ち止まる。通りは人がずいぶん増え、露店に行列ができている。冬を忘れるほどの熱気に包まれながら、息子と並んで駅に向かった。

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