歴史小説『はみだし小刀術 一振』第7話 足払い
砥石山城攻略後、宇喜多直家から、備中勢と内通したと指摘された沼亀山城主・中山信正(中山備前守)は、娘を実質的な人質として宇喜多直家の正室として嫁がせ、謀反の疑いを晴らそうとしたが、1559年、宇喜多直家は、備中勢と内通したとする沼亀山城主・中山信正(中山備前守)と、謀反の容疑をかけた砥石山城の西隣にあった高取山城の祖父の仇の島村盛実を同時に落城攻略し誅殺、復讐を果たした。どちらも不意打ちであったという。
この時、中山信正から嫁いだ妻は離縁した可能性が高い。
ほとんど掘っ立て小屋のような建物だった。
3棟程の掘っ立て小屋で囲むように中心に少しマシな農家があった。二棟の小屋が門のように配置され木材の板が渡されている西大寺本院の仁王門のようであった。掘っ立て小型仁王門である。
小文太はズカズカと敷地に入っていく。
中心の農家は元々は干拓の作業場として建てられており、どれも構造が同じで干拓にも携わった小文太にとっては見知った構造だった。
農家に行き着く前に小文太は止められた。
『お前は誰だ。』
傾奇者のひとりに呼び止められた。
女物の花柄の古びた着物を羽織り、脇差でなく装飾なく合口を帯に指している。歳も小文太より若い。
『怪しいヤツだな。名をいえ。』
ほぼ少年である。
『カシラに会いに来た。話しがある。』
小文太は言葉少なく説明した。
『余所者か!?』
お前らが余所者だろう…小文太が冷たい目を向けると、傾奇者の下っ端は胸元を掴もうとしてきた。小文太は軽く避け左に通り過ぎる。
下っ端の少年は信じられないという顔で後ろで尻もちを着いている。
小文太は下っ端の少年の出足を払った。
足払い。
それを見て何人かの傾奇者が駆けつけて来た。
小文太は
『待て待て、争いに来たのではない。話し合いをだな…』といつものニヤけた貼り付け顔で半笑いで叫んだ。本人は愛想良くしているつもりである。敵対するものにとっては誠に気に障る男であった。
殴り掛かるように小文太に掴みかかってくる。
小文太はユラユラと通り過ぎるように下がるのではなく前進する。
後には全員が尻餅を着いている。中には突っ伏して四つん這いのものもいた。全てのものの足を払っている。
『だから争いに来たのでは無いと…』
振り返り仁王門の仁王のように立って見下げ言った。
全くいけ好かない男であった。
後からゆっくりと歩いてきた。
大男の傾奇者が言った。
『それでお前は誰なんだ!』
既に脇差しを抜いて構えている。
本格的傾奇者衣装の男である。
『誰か誰かうるせぇ奴らじゃな。ワシか?!ワシはそこの棟梁の沼の小文太じゃ。』
堤を指さし小文太は振り返り半身のまま答えた。
だからそれは何者なんだよ!余所者の傾奇者達に言い知れぬ、脅威とともに変な空気が広がっていた。
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