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『キービジュアル』を作ろう

さあ、論文アウトラインの作成も終わった。
論文化の必要性・意義も事前に確認できた。いよいよ論文執筆をしよう!
そういう段階になったとき、こう思うのです。
「ん?、何から、どう始めたらいいのかな?」
ここからは、具体的に順を追って、論文執筆の概要について説明してみたいと思います。
※ あくまでも個人的に用いている方法ですので、あしからず・・・


▶︎まずは論文執筆の『キービジュアル』を作ろう

長編アニメ映画の制作は、長丁場であり、仕事量が膨大であり、複数の人が関わる仕事です。
素人のぼくですが、テレビでスタジオジブリの特集を見たり、私淑する宮崎駿先生の本を読んだりしているので、雰囲気はわかります。
その中で、アニメ制作当初の『こんなことがしたい💡』というコンセプトを忘れることなく、3ヶ月後の枝葉を作る作業をすることや、あるいは別の人にそのコンセプトを伝えることは容易ではありません。
開始当初のコンセプトを端的に思い出しうるツールとして、アニメ制作の現場では『キービジュアル』という一枚のポスターが用いられています。
皆さんも、アニメ制作のドキュメンタリーなどで、仕事場にポスターが貼ってある中で、アニメーターの方々が黙々と仕事に取り組んでおられるところを目にしたことがあるでしょう。

そして、論文執筆という作業も、長編アニメ制作に似たところがある、と僕は思っています。イントロダクション、方法、結果、考察・・・、書くべきことは膨大にあり、そのそれぞれに注意点は無数にあります。その細部に熱中しているとき、ふと『あれ、当初どういうことが書きたかったんだっけ?』と、ズレていってしまうことがあるのです。
そこで、論文執筆全般を通じて、指針・灯台としての役割を果たしてくれるのが『キービジュアル』なのです。

▶︎論文執筆の『キービジュアル』とは?

では、論文執筆におけるキービジュアルとは何か?
それは、『方法と結果のラフ (概要)』です。
研究論文は、ざっくり以下の構成要素があります。

  • はじめに Introduction

  • 方法 Methods

  • 結果 Results

  • 考察 Discussion

さて、図において、グレーで薄く示された部分(はじめに、考察)と黒く強調された部分(方法、結果)の部分。
どんな、違いがあるでしょうか?
その違いは、当該研究における『FACT』であるか否か、です。
方法と結果というのは、現実において、実際行った『方法』であり、明らかになった『結果』です。
一方で、はじめにというのは、当該研究に至るまでの先人たちの仕事であり、それら土壌となる背景知識に対する著者らの解釈です。
さらに、考察というのは、当該研究で得られた『結果』を出発点として、解釈したり、臨床応用を考えだしたり、未来への種子(限界、今後の課題)を蒔いたり、という部分です。
そのイメージは、“はじめに” は研究そのものを育む土壌であり、根であります。
そして、その土壌、根を礎として、確固たる “方法” 、樹木全体が出来上がります。
その豊かな樹木から、研究の成果物である “結果(実)” が実ります。
そして、その実を解釈したり、調理(臨床応用)したり、未来への種を取り出したりする “考察” があります。

この中において、確固として動かざるものは、やはり現実そのものである、方法と結果なのです。
逆に考えれば、方法と結果の部分には、現実そのもの以外は記載してはいけない、とも言えます。
とにかくも、これらの動かざる方法、結果部分のラフは、論文全体の大黒柱となり、灯台となり、航路に迷いそうになったとき、執筆者を導く尊い指針となります。
だからこそ、まずはじめに、この部分を固めることに意義がある、と信じています。

▶︎方法と結果のラフの作り方①-全体像

では、具体的に方法と結果のラフの作り方を見ていきます。
大きくは、以下の流れです。

(1) 方法のサブドメインを明らかにする
(2) 方法のサブドメインごとに箇条書きで記載する
(3) 結果のサブドメインを明らかにする
(4) 結果のサブドメインごとに箇条書き+図表を記載する

▶︎方法と結果のラフの作り方②-方法部分

まずは、方法部分のラフの作り方です。
ここでは、僕が執筆し、実際にPublishされている論文執筆時に実際に作ったラフを例に進めていきます。

方法部分のラフの作り方のポイントは以下の通りです。

・類似の研究テーマ、解析方法を用いた先行研究を参考にする。
・あくまでもラフなので、要素の記載に集中し、言い回しや文言に捉われすぎない。
・統計解析部分は重要になるので、なるべく具体的に記載しておく。
・図に示す部分があれば、この時点でこだわって作っておく。
※ 例は国際論文を目指しているので、図表が英語になっていますが、和文での論文投稿を目指す場合には、もちろん日本語で問題ありません。

▶︎方法と結果のラフの作り方③-結果部分

次に、結果部分のラフの作り方です(論文執筆開始時のものになりますので、実際の数値は原著論文中のものとは異なります)。

結果部分のラフの作り方のポイントは以下の通りです。
ほぼ、方法部分と同じですが、結果部分は『図表』がとても重要になります。

・類似の研究テーマ、解析方法を用いた先行研究を参考にする。
・あくまでもラフなので、要素の記載に集中し、言い回しや文言に捉われすぎない。
『どのデータを図表にするか、どう図表にするか』は重要になるので、この時点でこだわって作っておく。
※ 例は国際論文を目指しているので、図表が英語になっていますが、和文での論文投稿を目指す場合には、もちろん日本語で問題ありません。

▶︎まとめ

論文執筆とは、壮大な樹木を、着々とつくり上げてゆく作業であり、広大な大海原を進む作業、です。
そして、その中心にあるべき、大黒柱となるべきは『方法』と『結果』であります。
なぜならば、この2つのセクションは、現実そのものであり、動かざるものであるから。
その『キービジュアル』が確立されることは、その後の航海において、常に煌々と輝く『灯台』を得ることに近しいです。
道に迷うことなく論文執筆をするために、まずは『キービジュアル』を作りあげましょう。

アニメの世界は「虚構」の世界だが、その中心にあるのは「リアリズム」であらねばならないと私は思っている。
宮﨑駿

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