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部位特異的に大胸筋を鍛える:ベンチプレスにおける傾斜角度

📖 文献情報 と 抄録和訳

フラットおよびインクラインドベンチプレス運動における大胸筋の非一様な興奮について

Cabral, Hélio V., et al. "Non‐uniform excitation of the pectoralis major muscle during flat and inclined bench press exercises." Scandinavian journal of medicine & science in sports 32.2 (2022): 381-390.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 筋電図(EMG)の振幅から、筋の興奮の度合いについて、非生理的な要因で解釈が分かれることがある。このことは、ベンチプレスの傾斜が大胸筋の活性化パターンに及ぼす影響に関する相反する知見を説明するものと思われる。そこで、本研究では、高密度表面筋電図を用いて、平地および45°傾斜のベンチプレス運動中に異なるPM領域が興奮するかどうかを検討した。

[方法] 8名のボランティアが1回最大動作の50%および70%でフラットおよび45°傾斜ベンチプレスのセットを行い、PMの頭蓋尾軸に沿った15部位から一差筋電図を収集した。バーベルの垂直位置から変動係数、可動域、サイクル持続時間を算出し、サイクル間の被験者内一貫性を評価した。PM内の筋振幅分布の特徴を把握するため、最大筋振幅を検出するチャンネル数(アクティブチャンネル)、その四分位範囲、その重心座標を評価した。

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平坦なベンチプレスインクラインベンチプレス(参考サイト >>> site.)

[結果] 2つのベンチプレスの傾きによる可動域(p>0.11)、サイクル時間(p>0.28)、アクティブチャネル数(p>0.05)、アクティブチャネル四分位範囲(p>0.39)に有意差は認められなかった。EMG振幅の分布は、平坦なベンチプレスと45°傾斜のベンチプレスで、それぞれチャンネル8-13(下部大胸筋)チャンネル1-4(上部大胸筋)から最も強く表された。逆に、ベンチプレスが平坦から45°に変化したとき、バリセンターは鎖骨下部へシフトした(p < 0.001)。

[結論] これらの結果より、平坦なベンチプレスと45°傾斜のベンチプレスで運動した場合、最大のEMG振幅はそれぞれPM胸骨頭と鎖骨頭に集中することが明らかとなった。ベンチプレス運動は,異なる姿勢で行うことにより,異なるPM部位の興奮を要求しているようである.

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

筋力トレーニングの3原理というものがある。
その中の1つ、「特異性の原理」にフォーカスした研究である。
同じ1つの大胸筋の中に15の電極を置くという、ミクロな研究だ。
そして、結果として平坦では大胸筋の下部、インクラインでは大胸筋の上部の筋活動が賦活されることが示唆された。

この結果の臨床意義は何だろう。
僕は、野球のトレーニングに使えると思っている。
以下のようなプロセスだ。

✅ その選手が投球動作に用いる大胸筋を部位特異的に鍛える
- ①当該選手の投球動作における大胸筋活性を15chで明らかにする。
- ②①で明らかになった大胸筋部位を活性化させる傾斜角度を設定する
- ③②で設定された傾斜角度でベンチプレスを行う

投球動作の肩関節外転角度(肘下りなどで着眼されるポイント)は、その選手によってさまざまだ。ということは、用いられている大胸筋部位も異なることが推察される(エビデンスは知らない)。
その選手にとって、最も必要な部位を、特異的に鍛える。
筋力トレーニングにおいても、まず知ることから始めるべきかもしれない。

事をおこなうとき、なによりも知るということが大事だ
河井継之助

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