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痛み関連運動機能障害:pain-related movement dysfunction (PRMD)

📖 文献情報 と 抄録和訳

痛みと運動制御の関連性。痛みと運動制御の関連性:痛みを有する患者における運動障害の概念化

Kantak, Shailesh S., Tessa Johnson, and Ryan Zarzycki. "Linking Pain and Motor Control: Conceptualization of Movement Deficits in Patients with Painful Conditions." Physical Therapy (2022) Apr 1;102(4):pzab289. https://doi.org/10.1093/ptj/pzab289

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的;レビュー概要] 人は痛みを経験したとき、あるいは痛みを予期したとき、違った動きをする。痛みによって変化した運動戦略は、痛み関連運動機能障害(pain-related movement dysfunction:PRMD)と総称され、痛みが治まった後も持続し、最終的には運動学や動力学の変化、将来の再損傷、身体障害につながる可能性がある。PRMDは、臨床評価でしばしば明らかになる異常な動きとして現れるが、その根底にあるメカニズムは複雑で、感覚・知覚、認知、心理、運動の各プロセスが関与している。運動制御理論は、正常な運動と異常な運動に寄与するプロセスを決定し、評価し、目標とするための概念的枠組みを提供し、したがって理学療法とリハビリテーションの実践に重要である。運動制御の現代的な理解は、反射に基づく理解から、それぞれが異なる神経解剖学的基盤を持つ認知システムと運動システムの間の、より複雑な課題依存的相互作用へと発展してきた。痛みを伴う疾患の治療において運動制御が重要であることは専門家も認めるところであるが、特に痛みがある場合に、目標に向けた行動の制御に関与するプロセスを説明する包括的な枠組みは存在しない。本論文では、現代の運動制御モデルにおける感覚・知覚、認知、心理、運動の各過程を概説し、各過程の基盤となる神経基盤を説明するとともに、痛みや痛みの予期が運動制御過程にどのように影響し、結果としてPRMDに貢献するかを明らかにする。最後に、PRMDの理解を深め、その評価と治療を向上させるために、現代の運動制御モデルに基づいた今後の研究の可能性について概説している。

[臨床意義] PRMDを現代的な運動制御の観点からアプローチすることで、重要なメカニズムの解明、治療ターゲットの特定、評価情報の提供、感覚・知覚・認知・運動領域にわたる治療の革新が可能となり、これらすべてが痛みを伴う疾患患者における運動と機能的転帰を改善する可能性があると提案する。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

真に独創的な人物とは何か
奇抜なことをして衆目を集めるのが独創的な人物ではない。
それは単なる目立ちたがり屋だ。
たとえば、独創的な人間の特徴の一つは、すでにみんなの目の前にあるのにまだ気づかれておらず名前さえ持たないものを見る視力を持ち、さらにそれに名称を新しく与えることができる、ということだ。

ニーチェ 『悦ばしき知識』

名前を明らかに知ることは、様々な点から、重要だ。

今回、新たな名前を知った。
すでにみんなの目の前にあるのに、なにかボヤッとしていて名前をもたない(少なくも僕にとって)存在だった。
それが、今回の抄読論文が示した『痛み関連運動機能障害, pain-related movement dysfunction (PRMD)』である。
痛みがあると、防御収縮が入ったり、荷重がかけられなかったり、活動量が下がったり・・・、種々の問題とリンクしている。
ささっと、仕組みについて思いを馳せてみる。
大きくは、Physical routeとMind routeの2つに分かれる気がする。

▶︎Physical route:疼痛-皮質脊髄経路
- 実験的な痛みの条件下では、皮質脊髄の興奮性と運動単位の行動に対する抑制効果が報告されている(📕Sanderson, 2021 >>> doi.)
- 痛みが運動ユニットの放電速度を低下させ、神経機械的遅延を延長させる(📕Martinez-Valdes, 2021 >>> doi.)
- 大脳皮質の興奮性の低下は、手や顔の痛みによって引き起こされた。筋痛が皮質脊髄興奮性を低下させるというこれまでの結果を確認するとともに、皮膚痛にも同様の効果がある。(📕Rohel, 2021 >>> doi.)

▶︎Mind route:疼痛-心理経路
- 恐怖回避モデルは,急性腰痛患者のうち少数の人が慢性的な痛みの問題を抱えるようになる理由を説明する認知行動学的な説明である(📕Leeuw, 2007 >>> doi.)

スクリーンショット 2022-05-28 7.10.02

✅ 図. 慢性痛の恐怖-回避モデル。

PRMD。ボヤッとしていた輪郭。
これで存在がくっきりした、旗がたった。
旗たちぬ。いざ、進めやも。
(畑がたった。さあ、進もう!)

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