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電子カルテ情報のみで『24%』の転倒を予測できる臨床予測ルール

Super Human | 理学療法士/保健学博士 Ph.D.

📖 文献情報 と 抄録和訳

プライマリケア電子カルテを用いた高齢者の転倒リスク予測モデルの開発と内部検証

📕Dormosh, Noman, et al. "Development and internal validation of a risk prediction model for falls among older people using primary care electronic health records." The Journals of Gerontology: Series A 77.7 (2022): 1438-1445. https://doi.org/10.1093/gerona/glab311
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✅ 前提知識:予測因子研究と予測モデル研究(Clinical Prediction Rules: CPR)の違い(詳細は以下noteの考察を参照, 図解+)
- CPRは①評価指標を2つ以上組み合わせること②予測確率を与えることを満たす点で予測因子研究とは異なる。
- 予測因子研究:たとえば、歩行自立に対して、多変量解析では「FIM-トイレ」と「認知機能低下」と「せん妄」と「発症前の介護必要性」が独立して関連する、ということを明らかにする。そして、それぞれの要因が帰結に対してpositiveなのかnegativeなのかという影響の方向性と、その大きさに関する情報を与える。しかしながら、この従来の多変量解析の結果の示され方では、結局、判断の多くはセラピストの主観に委ねられる。なぜなら、影響がpositiveかnegativeかという情報がいくつか集まったときに、どうしたらいいかは、はっきり分かりにくいから。
- 予測モデル研究:CPRは複数因子を組み合わせ、予測確率を与える。たとえば、CPR1は「FIM-トイレが5点以上で病前に介護を必要としていなかった患者は98.2%が自立する」という情報をセラピストに与える(その他にもnodeがいくつかある)。そして、セラピストは「ふむ。98.2%か。じゃあ、退院目標としては歩行自立が妥当そうだ」となる。すなわち、CPRは影響の方向性や大きさといったぼんやりしたものではなく、はっきりとした確率を与えることで、よりセラピストの臨床判断につながりやすい。

[背景・目的] 背景現在使用されている予測ツールは、転倒リスクの高い地域在住高齢者を特定する能力に限界がある。電子カルテ(electronic health records: EHR)を活用した予測モデルはその機会を提供するが,転倒有病率の過小評価などの理由から,これまでリスク層別化ツールとしての臨床的価値は限定的であった。本研究の目的は、プライマリケアEHRの構造化データとフリーテキストを組み合わせて、地域在住高齢者の転倒予測モデルを開発し、その予測性能を内部で検証することであった。

[方法] 65歳以上の高齢者のEHRデータを使用した。年齢、性別、転倒歴、投薬、病状を潜在的な予測因子とした。転倒は自由記述から把握した。予測モデルの作成には,Bootstrap-enhanced penalized logistic regression with the least absolute shrinkage and selection operatorを使用した。10回クロスバリデーションを用いて予測戦略の内部検証を行った。モデルの性能は、識別とキャリブレーションの観点から評価された。

[結果] 対象者36 470名のデータが抽出された。少なくとも1回転倒した参加者は4,778人(13.1%)であった。最終的な予測モデルには、年齢、性別、転倒歴、2種類の薬物、5種類の病状が含まれていた。

スライド2

ROCAUCによって測定された転倒者と非転倒者を区別するモデルの能力の中央値は0.705(IQR 0.700–0.714)。PRAUCの中央値は0.290(IQR 0.278–0.298)。陽性適中率(PPV)の中央値は0.238(IQR 0.223–0.256)。ブライアスコアの中央値は0.105(IQR 0.103–0.108)。

[結論] 転倒リスクの高い高齢者を特定するための我々の予測モデルは、適切な識別を達成し、妥当なキャリブレーションを有していた。ルーチンに収集された変数に依存し、移動性評価テストを必要としないため、臨床の場で適用することができる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

電子カルテの情報だけから、転倒の発生を『24%』予測する。
この精度は、高いと思う、低いと思う?
僕は、『高い』と思う。
2つ理由がある。そもそも転倒は予測しにくいという点、そして電子カルテの情報のみから算出される点、である。

そもそも、転倒は予測しにくい(📕Campo, 2021 >>> doi.; Omaña, 2021 >>> doi.)。その中で、24%(PPV)もの転倒を予測できるということは、優秀と言えるのではないだろうか。

✅ 陽性適中率: Positive Predictive Value, PPV
- 臨床検査における事後確率の1つで、ある検査において「陽性と判定された場合に、真の陽性である確率」として定義される値である
🌍 参考サイト >>> site.

そして、電子カルテの情報のみから算出されることの意義。
これは、入棟時データから「自動的」に算出できる可能性を意味する。
入棟時、「初めまして。これから、お願いします。」と話している段階で、その患者の転倒リスクは高そうか、低そうかというイメージを持つことができるし、何より、節約的だ。何もしなくても、自動的にポップアップされるようなシステムを構築できる。
その上で、画像評価、身体機能や動作能力の評価も加味して、さらに精緻な転倒リスクアセスメントを行えばよい。
最初のフラッグを得るという意味で、有意義なCPRだ。

その自動化に際して思うのだが、『電子カルテって閉じすぎてない?』
個人情報の塊だから仕方のない部分もあるだろうけれど、もう少し外部とのリンクをしやすい設計になっていたら、どれだけ研究活動や、データ応用的な臨床行動につながるだろう!
個人情報を自動的に省いた上でのエクスポート機能や、果てはBluetoothでの共有など、もう少し樹状突起を伸ばせぬものか・・・。
まあ、色々難しいのだろうけれど。
夢は、つくっておく。

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