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音声-運動結合。脚に力→声が大きく

📖 文献情報 と 抄録和訳

脚の動きが音声の強弱に影響する

📕Serré, Hélène, et al. "Leg movements affect speech intensity." Journal of Neurophysiology (2022). https://doi.org/10.1152/jn.00282.2022
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

🔑 Key points
🔹音声と四肢の運動の関連は学際的な課題であり、運動制御や言語研究の中核をなすもの。
🔹この研究は、脚の動きが音声に与える影響を調べることで、下肢と発声器官の間の潜在的な生体力学的つながりを明らかにすることを目的としている。

[背景・目的] 音声と手動ジェスチャーの間の調整は、「生物学的に義務付けられていない」と考えられてきた. しかし、最近の研究では、上肢と呼吸・発声システムの間に生物機械的な絡みがあることが示唆されている. 近年、物理的インパルスが大きい動作では、音声音響が上肢動作の物理的インパルスと共起することが発見された。この結果は、呼吸システムを介した腕の動きと音声の間の生体力学的な結合の観点から解釈されている。この結合は、コミュニケーション中に観察される音声の韻律と腕のジェスチャーの間の同調をサポートする可能性がある。本研究では、身体的衝動が音声音響に及ぼす影響を、音声コミュニケーションとは独立して制御されていると想定される脚の動きにも拡張できるかどうかを検討した。

[方法] 本研究では、25名のドイツ語母語話者を対象に、腕または脚で自転車を漕ぎながら短編小説を音読させる実験を行った。これらの条件は、参加者が腕を動かせない静止条件と比較された。

[結果] その結果、音響信号の強度ピークの存在は、脚の自転車動作の加速度がピークになる時間と共起することが明らかになった。しかし、これは腕で自転車を漕ぐときには観察されず、より低い加速度ピークに対応した。一方、音響信号の強度は腕と脚の両方で影響を受けなかった。

[結論] これらの結果は、1)呼吸-発声システムと下肢の間の生体力学的な絡み合いが音声にも影響を与える可能性があること、2)物理的な衝撃が音声音響に影響を与えるには閾値に到達しなければならない可能性があることを示唆している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

電話って面白い。
全く違った状況、空間が、いきなりつながる。
自然では、あり得ないことだ。

うわっ、このひと声でかっ!

それは、その人が街の雑踏の中にいたからかもしれないし、歩きながら話していたからかもしれない。
今回の研究は、脚の運動中には声がデカくなる、ということを明らかにした。
この研究を読んでいて思ったのは、「人間の身体ってほんとうに面白い!」ということ。

人間の身体には、それぞれが違う役割を担った、複数の部分がある。
それは、声を出す部分、脚の力を出す部分、食事を消化吸収する部分、さまざまだ。
一人の人間の身体は、それらの部分が別々に独立した存在である「合衆国」のようなものだ。
だが一方で、身体という1つの容器にたくさんの部分が詰め込まれた1個のもの、でもある。
そして、それぞれの部分は、お互いが綿密にリンクしている。
それは、あたかも同じ湯船に入っている、異なる箇所の水分子のようなものだ。
その中の部分は、決して、お互い完全に独立して存在することはない。
ある1箇所に焼石が「ジュッ!」と入れば、湯船全体の温度が上がってしまう。

こういう、お互いに引っ張られ、引っ張る、ズブズブの関係を「相関関係」と呼ぶ。
相関関係のキーワードは『逆もまた真なり』
それは、双方向性の関係である。
行く道がわかれば、帰り道も自然にわかるような感じで。
道は一つ。
そういう関係。
一方で、「因果関係」という似て非なるものがある。
因果関係のキーワードは『AがBを生む(引き起こす)』
それは、一方向性の関係である。
ある一つの道が、帰り道ではない、それは一方通行の道だから。
主語と述語が決まっている関係性。

さて、ようやく今回の研究に戻る。
筋出力→音声の関係性は、相関関係か、因果関係か。
おそらく、相関関係だ。
「室伏広治」を知っているだろうか?
元日本代表のハンマー投げ選手。
彼は、投げながら叫ぶ(ほぼ投げ終わってから叫んでいる?;YouTube参照)。

シャウト効果。
これは、今回の抄読研究の真逆で、叫ぶと筋出力がつられるように上がる、というものだ。
しっかり、エビデンスもある(📕Kato, 2010 >>> site.)。
お互いが、お互いを引っ張り、引っ張られる関係。
その関係が分かったなら、それを上手に生かしたい。
簡単な部分から、大変な部分を引き出す、というのが定石だ。
ボタンを押すことから、洗濯機を回すことを引き出すように。
笑顔を作ることから、楽しい感情を引き出すように。

ヘイヘイ、声出してこーぜ!
(それきっとパフォーマンスあげるから)

SuperHuman

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