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その肩痛は腱板関連?国際的理学療法士の診断法コンセンサス

📖 文献情報 と 抄録和訳

腱板関連の肩の痛みを診断するための臨床記述子に関する国際的な理学療法士のコンセンサス。デルファイ調査

Requejo-Salinas, Néstor, et al. "International physical therapists consensus on clinical descriptors for diagnosing rotator cuff related shoulder pain: A Delphi study." Brazilian journal of physical therapy 26.2 (2022): 100395. https://doi.org/10.1016/j.bjpt.2022.100395

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

✅ 前提知識:デルファイ法とは?
- デルファイ法とは米国ランド研究所によって開発されたアンケート方式による意見の 集約方法であり、参加者にアンケート結果の評価のフィードバックを繰り返すものである。
- 対象のテーマや設問について参加者に個別に回答してもらい、得られた結果をフィードバックして他の参加者の意見を見てもらった後、再度同じテーマについて回答してもらう。 この過程を何度か繰り返すことにより、ある程度収束した組織的な見解を得ることを目指す方式である。
📕 相馬 他. 理学療法科学 24.6 (2009): 853-858. >>> doi.
🌍 参考サイト >>> site.
🔑 Key points
- 腱板関連の肩の痛み(rotator cuff related shoulder pain:RCRSP)を診断するための18の臨床的記述子が6つの領域にわたって定義された。
- この結果は、RCRSPの診断に関する現在の知見をまとめたものである。
- RCRSPの診断の標準化に役立つ可能性がある。

[背景・目的] 肩関節腱板関連痛(rotator cuff related shoulder pain:RCRSP)の標準的な診断基準はない。目的:RCRSPの診断に最も関連性の高い臨床的記述子を特定すること。

[方法] 国際的な理学療法士専門家委員会を用いてデルファイ調査を行った。臨床、教育、研究経験の豊富な国際的な理学療法士専門家パネルによる3ラウンドのデルファイ調査を実施した。専門家を探すために Web of Science で検索クエリを実行し、手動検索も行った。第1ラウンドは、前回のデルファイ試験で得られた項目と、専門家が提案した新たな項目で構成された。参加者は、6つの臨床領域にわたる項目を5段階のリッカート尺度で評価するよう求められた。Aiken's Validity Indexが0.7以上であれば、グループのコンセンサスが得られていると判断された。

[結果] デルファイ調査には15名の専門家が参加した。3回のラウンドを経て、18の臨床記述子についてコンセンサスが得られた。その内訳は,主観的検査領域が10項目,患者報告アウトカム指標領域が1項目,診断的検査領域が3項目,身体検査領域が2項目,徒手検査領域が2項目であった(図)。徒手検査領域ではコンセンサスに達した項目はなかった。負荷のかけ方による症状の再現性、オーバーヘッド動作の実施、能動・抵抗運動の評価の必要性などは、最もコンセンサスが得られている結果であった。

スライド2

[結論] 今回のデルファイ調査では、RCRSPを診断するために、6つの臨床領域にわたる合計18の臨床記述子が合意された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前のnoteから引用する。

病院での理学療法業務に比べ、トレーナーは蛸壺化されやすい業態だと思う。
とくに、学校やチームという単位は、ブラックボックスになりやすい。
なぜなら、学校やチームというのはチーム事情を進んで公に晒すことはほぼなく、外部から見えることが少ない、島国的な環境だからだ。
それに比較すれば、病院での理学療法業務は、大陸に似ている。
隣国の情勢が地続きに見えるし、交流もしやすい。
だから、トレーナーの業務内容は、良くも悪くもガラパゴス化しやすく、常識が構築されにくいフィールドといえる。

今回抄読の論文は、患者の訴える肩痛が腱板関連か?を診断するコンセンサスを示した。
このように国際的PTの判断基準や主観的な認識を知ることで、いち病院、いちトレーナー、いち日本のPTという蛸壺の一片を破壊できる。広い世界を体感できる。
その点で、非常に貴重な資料の1つだ。

さて、今回のコンセンサスにおいてぶっ飛ばされた僕の思考領域は「徒手検査(スペシャルテスト)」だった。
これまでDrop arm sign、Painful arc sign、Impingement signなど、さまざまな徒手検査を用いてきた。
だが、今回のコンセンサスにおいて、それらは「診断には関係ない」と一蹴されている。
あくまでも主観的なコンセンサスにおいてだが、国際的なPTから徒手検査はそのレベルで認識されているようだ。
注意が必要なのは、その上の身体検査において、「抵抗運動、特に外転・外旋運動による疼痛や脱力はRCRSPの徴候である」とされており、これはDrop arm signやPainful arc signを含んでいる
すなわち、国際的には特殊な徒手検査という『型』の認識ではなく、単に現象を再現する『非定型の現象再現』の認識ということだろうか。
確かに、その方が目の前の患者特性(解剖学的な差異など)に応じた、臨機応変の対応が可能になるし、思考が停止しない(Yes or Noではないから、三次元イメージを常に頭に描きながら臨床思考過程が進む)。

なんにせよ、国際的なPTの主観的な認識を知った。
「まあまあ、国際的にはスペシャルテストはRCRSPの診断とは関係ないと認識されているけどね・・・。」
ドヤっていきたいと思う。

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