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プレプリントの役割

📖 文献情報 と 抄録和訳

プレプリントはなぜ患者にとって良いのか

📕Horby, P. Why preprints are good for patients. Nat Med 28, 1109 (2022). https://doi.org/10.1038/s41591-022-01812-4
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable
✅ 前提知識:プレプリントとは何か?
- プレプリントとは、著者が公共のサーバーにアップロードした、論文原稿(ドラフト)の最終版。
- これは多くの場合、ジャーナルに投稿された論文と同じ版。
- 論文原稿がアップロードされると、その整合性を確認するために簡単なチェックが行われる。
- その後、査読を経ずに1、2日でオンライン上に掲載され、誰でも無料で閲覧できるようになる。
- 論文の修正版を後日アップロードすることも可能ですが、古いバージョンは残される。
- 原著論文との大きな違いは、査読の有無、迅速性
🌍 参考サイト >>> site.

[World view概要]

■ COVID-19に対するデキサメタゾンの救命効果が発表される
2020年6月16日、COVID-19の重症患者におけるデキサメタゾンの救命効果が、英国首相の自宅であるダウニング街10番地での公開ブリーフィングで発表された(📩Letter >>> pdf.)
■ デキサメタゾンの救命効果の完全な結果をプレプリントで発表
- デキサメタゾン比較の完全な結果を、ちょうど6日後の2020年6月22日にプレプリント原稿で発表した
- 現在のCOVID-19に影響を与える可能性のあるすべての回復結果について、プレスリリースとその後の出版に対する批判を心に留めた。
- 気をつけて、プレスリリースと同時にプレプリントを出すように努めた。
📕 Horby, 2020 >>> doi. → その後NEJMで本論文となった:Group, The RECOVERY Collaborative. The New England journal of medicine (2020). >>> doi.
■ プレプリントに対しては賛否両論あった
- パンデミック全体を通して繰り返し、科学はプレスリリースによって伝えられるべきではないという批判があった
- 一部の医師はプレプリント原稿を要求し、他の医師は完全な査読付き論文を要求した
■ それに対する著者の意見
- プレプリントのみの出版には賛成ではない(マーケティング戦略に悪用されるリスク)
- しかし、健康上の緊急事態の間、多くの緊張がある。
- その1つは、情報と証拠の緊急の必要性と、科学的な査読と出版のはるかに長い時間枠との間の不一致。
- 研究および医学界は、この新しい現実をどのように最適に管理する必要がありますか?

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

プレプリントの役割とは、何だろうか?
この考察では、3つのプレプリントの機能について考えてみた。

■ 抗『時すでに遅し』機能
情報と証拠の緊急の必要性と、科学的な査読と出版のはるかに長い時間枠との間の不一致。
これは、『まさに』と思わされた。
研究には、大きく2種類があると思った。
1つは、プロメテウス型の研究、他方はエピメテウス型の研究だ。

✅ プロメテウス型研究、エピメテウス型研究
- ギリシャ神話の中に、プロメテウスとエピメテウスという神が出てくる。
- ざっくり、以下のようなイメージ。
- プロメテウス:予知の神。あらかじめ先を予測して、行動する。
- エピメテウス:後知の神。事が起こってから、それに気づく、対応する。
- そこから、2種類の研究の着想を得た
■ プロメテウス型研究:いま問題はないが、より良い世界を目指した成長的研究
■ エピメテウス型研究:コロナパンデミックなど予期せぬ重大な問題が起こって、それに対処するための問題解決を図った研究

プロメテウス型研究の場合、論文がパブリッシュされるまでに時間がかかったとしても、さほど問題はないだろう。問題は起こっていないのだから。
一方で、エピメテウス型研究の場合、困る。すでに緊急事態になっているのに、「あと1年間お待ちください」では、話にならない。
時すでに遅し、である。
プレプリントは前提知識にも記載したように、1-2日でオンライン上で公開されるという迅速性をもつ。
そこに、プレプリントのみが持つ強みがある。

■ マーキング機能
研究(論文化)とは、椅子取りゲームに似ている。
最も早くパブリッシュされた論文著者が、その果実を得ることができる。
すなわち、『“公表”すれば、“保証”される』というシステムになっている。
だから、論文化前には学会発表をしないという研究者もいる、パクられる恐れがあるから。
だが、プレプリントで即時公開されることで、椅子取りゲームに終止符を打ってから、安心して論文の質を高められるのではなかろうか。
人間の創造物の質を下げる最も重大な障壁は『焦り』だと思っている。

■ Wikipedia機能(多者の関与で質アップ)
あるとき、百科事典の在り方をめぐっての攻防戦が起こった。
一方は、それぞれの分野の精鋭を集めて、執筆、編集した完成形としての百科事典。
もう一方は、大衆による漸次更新型の未完成形としての百科事典。
読み手のスタンスとして、前者は閲覧するしかなく、後者は参加型だった。
そして、圧倒的に後者が勝利した。
それが、ご存じ「Wikipedia」である。
質はわからない。
けども、愛されて、使われるものになったのはWikipediaである。
鍵は参加型にすること、であろう。
論文化を「水(研究で得られた測定結果)→氷(論文の完成形)」になるプロセスと考えてみる。
一発論文化型では、読者はいきなり『氷』を見せられることになる、これはすでに固まっており、形態に影響を及ぼしにくい。
一方、プレプリントは、水を冷凍庫に入れた段階でオンライン上に公開される。
この段階では、読者は水(研究で得られた測定結果)は変えられないが、どのような形の氷になるかという形態には影響を及ぼすことができる。
すなわち、プレプリントは読者を含めた形で完成形を一緒に作っていく『参加型』になる可能性が高まる。

あらゆる点から見て、雑誌掲載前にプレプリントを出すことは、良いことが多いと感じた。
次の論文投稿時には、プレプリントサーバへのアップロードを検討する。

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