マスクの威力：Covid-19が明らかにしたこと
▼ 文献情報 と 抄録和訳
高齢者の股関節骨折における医療用マスクの着用が周術期の呼吸器合併症に及ぼす影響；レトロスペクティブコホート研究
Fu M, Guo J, Zhang Y, Zhao Y, Zhang Y, Wang Z, Hou Z. Effect of Wearing Medical Masks on Perioperative Respiratory Complications in Older Adults with Hip Fracture: A Retrospective Cohort Study. Clin Interv Aging. 2021;16:1967-1974
[ハイパーリンク] DOI, Google Scholar
[背景・目的] 呼吸器合併症は，高齢者の股関節骨折の治療における大きな課題の1つである。しかし，これらの患者の周術期の呼吸器合併症の予防に対する医療用マスクの着用の効果を検討した研究はこれまでにない。
[方法] このレトロスペクティブコホート研究では、65歳以上の連続した股関節骨折患者1016名を対象とし、対照群と観察群の2群に割り付けた。2019年1月から2020年1月までに入院した患者を対照群に、2020年1月から2021年1月までに入院した患者を観察群にした。両群は同じ周術期管理方法を受けた。さらに、観察群の患者には保護のために医療用マスクの着用が求められました。患者の人口統計、骨折の種類、手術方法、併存疾患、周術期の呼吸器系およびその他の合併症の発生率、および病院での転帰に関するデータを収集し、両群間で比較した。また、骨折の種類で層別化したサブグループ解析も行った。
[結果] 平均年齢79.4±7.3歳の患者1016名（女性292名、男性724名）を対象とし、対照群533名、観察群483名が解析された。周術期の呼吸器合併症の全体的な発生率、および観察群の肺感染症、呼吸不全、不整脈の発生率は対照群に比べて有意に低く、特に冬から春にかけての発生率が高かった。その他の合併症、在院日数、総入院費には差がなかった。さらにサブグループ解析を行ったところ、大腿骨頸部内側骨折の患者では、観察群の心不全と不整脈の発生率が対照群よりも低く、転子部骨折の患者とは異なっていた。
✅ 図. 対照群と観察群における呼吸器系合併症の季節別分布
[結論] 高齢者の股関節骨折では、特に冬から春にかけて医療用マスクの着用を含む個人保護を強化することで、肺感染症や呼吸不全などの周術期呼吸器合併症の発生率を低下させることができた。また、医療用マスクの着用は、大腿骨頚部骨折患者の周術期の心不全や不整脈の発生率を効果的に減少させ、その他の合併症の発生率や入院の負担を増加させないと考えられた。
▼ So What?：何が面白いと感じたか？
この後方視的な研究において、群分けに注目してほしい。
2019年1月~2020年1月→対照群（マスクー）
2020年1月~2021年1月→観察群（マスク＋）
論文中には明記されていないが、このマスク（＋）はCovid-19対策のために全患者に着用が義務づけられたのだろう。それによって、くっきりと条件分けされた2群（マスク±）が自然と出来上がったというわけだ。
セレンディピティという言葉がある。
✅ セレンディピティとは？
セレンディピティ（英語: serendipity）とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。 >>> wiki
僕たちは、Covid-19を恐れ、睨み、逃げ、防ごうとしてきた（している）。
その中で、予想だにもしなかった景色のいくつかが、姿を現している。
学会がオンラインになったことで国際学会に容易に参加できる！
Zoom 最強！
Take out、普通にうまいやん！
人と人との絆って、こんなにも日常に溢れてたのね！
etc...
僕たちは、強くならねばならない。
それが、いくつもの喪失への逆襲であり、繰り返されてきた、進歩の仕組みだ。
そのためには、目を開けていなければならない。
のみならず、『そこに何かがあるかもしれない』ことを思え。信じろ。心構えを作れ。 #プリペアードマインド
いま、世界中で逆襲の狼煙が上がっている。
観察の領域において、偶然は構えのある心にしか恵まれない
ルイ・パスツール
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