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偏食突破大作戦3 ~実践Ⅱ 食べる環境を変える~

 先生たちの「食べてほしい」思いと、子供たちの「だって嫌なんだもん」が毎日のようにせめぎ合う食事時間。「食べましょう」で半ば強制的に食べさせるのではなく、幼児自身がいかに自分から「食べてみよう」と口にするようになるか、先生たちは様々な手法を使います。今回はその2つ目。

 実践の紹介に行く前におさらいです。
 「幼児の偏食の理由」として、①味覚が未発達だから、②トラウマがあるから、③食べず嫌いだから、の3つを挙げました。

 また、ひと口に「嫌い」と言っても、子供たちによってその度合いは様々です。
A:がんばったら食べられる
B:時間を掛けたり少量ずつだったりしたら食べられる
C:先生と交渉した分だけ食べる
D:先生が口元まで運ぶと食べる(自分からは食べない)
E:口の中で噛み続ける(飲み込まない)
F:食べない(口すら開けない)
G:拒否・隠ぺい(吐く、捨てる、床に転がして「落ちた(から食べない)」と言い張る、友達に食べてもらうなど)

 この度合い、嫌いな食べ物があったとき、Aが最も理想的な姿で、Gに進むほど「がんばってほしいな~」という先生たちの思いが強くなります。
 そして、できることならばGに至る前のD~Fの段階で、A~Cの段階に進めたらいいなと、手を変え品を変え様々な教育的テクニックを駆使していきます。

実践Ⅱ 食べる環境を変える

 この実践は、上記の「偏食の理由」①や③をもち、「嫌い」の度合いがB~Dの幼児に有効です。

園で食べること自体がアドバンテージ

 食べる環境を変える、と言っても、そもそも幼稚園で同年齢の友達と一緒に食事をしていること自体、家庭での食事とは環境が異なります。いつも一緒に遊んでいる友達や先生と一緒に食事をするのは、それだけで楽しいことではないでしょうか。大人でもそうですよね?
 で、そんな雰囲気の中で、自分が苦手な食べ物を、多くの友達が普通に食べている。あるいは、苦手な食べ物をがんばって食べている友達(そしてそれによってめっちゃ褒められている友達)がいる。そんな様子を見ると、じゃあ自分も食べてみようかな、という気持ちになるわけです。
 幼児も、4歳児になるとプライドのようなものが芽生えてきます。人前でちょっといい格好したくなったり、自分のマイナス面を外に出さないようにしたりします。そういった意味で、家庭から見たら「外」にある園という環境は、偏食を克服する上でアドバンテージをもっていると言えます。これを生かさない手はありません。

園内でも環境を変える

 園での食事に慣れてくると、それを変化させることで新たなきっかけを与えることができます。
 例えば、子供たちと野菜を育てて食べる、という活動は多くの園で行われていると思いますが、収穫してその場で食べる、というのも環境の変化です。キュウリやトマト、ビワなどは、テーブルや包丁を外に持ちだせばその場で食べられます。

「もう食べられるん!?」というタイムリーさが環境の変化。

 また、目の前で調理する、一緒に調理するというのも効果的です。カセットコンロを用いれば、子供たちの前で炒める様子を見せることが可能ですし、ピザのトッピングや浅漬けを揉むことくらいの調理は幼児にも可能です。

普段しないエプロンを付けることだって子供たちにとっては環境の変化。
それだけで「今日、クッキング!?」と子供たち気付くようになります。

 これらの環境の変化は、幼児の視覚や嗅覚、触覚に強く働きかけます。みずみずしい感覚、できたての温かさ、かぐわしい匂いなどは、ある種の“隠し味”となって子供たちの食欲を刺激します。そうすると、嫌いなはずの食材が「えっ?美味しい!」と食べられちゃうわけです。

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