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偏食突破大作戦4 ~実践Ⅲ 食べる量を示す~

 これまで偏食「克服」大作戦、と銘打ってきましたが、よくよく考えてみると偏食の「克服」って大人でも難しいな~・・・嫌いだった食べ物が(大人になって)好きになることもあるけど、そうならないことも多いわけで、いかに「嫌いだけど(例えば出された分は)食べられる」的な、上手な付き合い方ができるようになってほしいのです。なので、「克服」はやめて「突破」にしてみました。その子なりの目標の突破に向けて、その子自身がどれだけ自分から「食べてみよう」と口にするようになるか、先生たちは様々な手法を使います。今回はその3つ目。

 実践の紹介に行く前におさらいです。
 「幼児の偏食の理由」として、①味覚が未発達だから、②トラウマがあるから、③食べず嫌いだから、の3つを挙げました。

 また、ひと口に「嫌い」と言っても、子供たちによってその度合いは様々です。
A:がんばったら食べられる
B:時間を掛けたり少量ずつだったりしたら食べられる
C:先生と交渉した分だけ食べる
D:先生が口元まで運ぶと食べる(自分からは食べない)
E:口の中で噛み続ける(飲み込まない)
F:食べない(口すら開けない)
G:拒否・隠ぺい(吐く、捨てる、床に転がして「落ちた(から食べない)」と言い張る、友達に食べてもらうなど)

 この度合い、嫌いな食べ物があったとき、Aが最も理想的な姿で、Gに進むほど「がんばってほしいな~」という先生たちの思いが強くなります。
 そして、できることならばGに至る前のD~Fの段階で、A~Cの段階に進めたらいいなと、手を変え品を変え様々な教育的テクニックを駆使していきます。

実践Ⅲ 食べる量を示す

 この実践は、上記の「偏食の理由」や「嫌い」の度合いがどの段階であっても有効です。

視覚に働き掛ける

 嫌いな食べ物があったとき、幼児に「じゃあ、半分食べようね」と言っても大人が思っているようには伝わりません。「半分」がどれぐらいなのかが分からないからです。
 こんなときは、「半分」を幼児に見せて示しましょう。例えば、目の前で半分に切るとか、半分にした食べる方を取り分けるとか。視覚に働き掛けることで幼児はすぐに理解します。
 「実践Ⅰ」で、「大きさが変わると口に運ぶ幼児は多い」と紹介しましたが、これも視覚に働き掛けています。見た目に小さくなることで、「これだけでいいの?(じゃあがんばれる)」という気持ちになるわけです。

具体的に示す

 定規や計量カップを使って、食べる量(あるいは食べた量)を具体的に示すことも効果的です。
 上記の「半分」も、「5cm食べたね」と示すとさらに分かりやすくなりますし、牛乳などは(パックに入っていて)中の量が分からないので、計量カップやはかりを使うことで、「僕もう50cc飲んだ!」と視覚による理解が促進されます(ちなみに幼児は単位は理解していないので、数字で会話しています)。
 具体量を示すことのメリットは、自分の達成度と次の目標が分かりやすくなるところにあります。ときにつとむ先生は、牛乳を飲んだ量を黒板に書き出します。そうすると子供たちは、「前に50飲んだから今日は60飲んでみようかな」、「○○君は100飲んでいるから僕も100飲もうかな」と主体的になります。また教師にとっても、数値という客観的なデータがあるので、「この子は今これくらいの量だったら食べられる、じゃあ次は・・・」と指導の参考にすることができるのです。

 このような取組を進めていくと、これが食べる量の交渉につながります。嫌いな食べ物があったとき、じゃあどれくらい食べるのか、これまでの経験を踏まえつつ、一方的に教師が決めず、子供たちと話し合いましょう。決定には子供たちの「納得」が必要です。

「納得」についてはこちら↓

 4歳児以上になってくると、数の感覚が少しずつ分かるようになってきますので、周囲の子含めて効果が期待できます。逆に、数の感覚がまだ身に付いていない子に対しては、視覚に働き掛ける方が有効でしょう。

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