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「当番活動」に自発性をもたせるには

 小学校以降の「係活動」や「委員会活動」のように、幼稚園でも「当番活動」が行われています。
 私が勤める幼稚園では、昼食前後の台拭きや掃除、飼っているニワトリの世話、砂場のネットや玩具の出し入れなどを、子供たちが日替わり或いは月替わりで当番活動として行っています。

 生活を送る上で、誰かが行わなくてはならない事柄があります。しかし、子供たちの自発性や主体性にばかり頼っていては、その事柄を特定の子や教師ばかりが行ってしまうことになります。と言うか、そもそもそんな事柄があること自体、気付かれない場合もあります。それってなんだか不公平なので、担当決めて順番に回していこう、というのが「当番活動」です。
 そのような性格をもつ当番活動ですから、最初のうちは子供たち、活動を「させられる」ことになります。でもここは幼稚園。当番活動にだって自発性をもたせ、子供たちが主体的に行うようになれば、それは立派な幼児教育。子供たちにとっての学びにつながります。

ポイント① 納得

 大人もそうだと思いますが、「なぜこれをしないといけないだろう?」と疑問をもちながら行う業務というものは中々に退屈で意外に苦痛です。それは幼児も同じです。当番活動に対して、「こういう理由でこれを行うんだ」という「納得」があると、子供たち驚くほど主体性を発揮します。

個人的に大好きな『STEEL BALL RUN #35』より。
不意な人事異動など、「納得」は大人にとっても必要なものかもしれません。

 「納得」させるためには、「理由を説明する」必要があります。なぜその当番活動を行わなければならないのか。次に使う人が分かりやすいように、気持ちよく過ごすために、ニワトリが死なないように・・・分かりやすく説明すれば、子供たちちゃんと理解→「納得」します。
 気を付けないといけないのは理由をぼかさないこと。順番だから、みんなやっているから、先生に怒られるから・・・では子供たち「させられる」だけです。「納得」がないので主体性が生まれず、誰かに言われないと行いません。

ポイント② 任される

 当番活動を行うとき、幼稚園ではよく「当番表」なるものが登場します。私のクラスでは、下の写真のような「当番表」を使っています。

写真を使った「当番表」。左の「おとうばん」印が日替わりで右に動いていきます。

 この当番は、昼食時の台拭きや掃除を行う当番なのですが、この形式で当番活動をしばらく行っているうちに、当番活動を楽しみにする子が現れてきます(笑)。中には指折り数えてその日を待っていたり、たまたま欠席して順番が次のグループに移ったことを知ると、泣いたりする子もいるくらいです。
 このような幼児の姿は、「この役割が誰かの役に立っている」そして「それを自分が任されている」という気持ちからきています。当番活動を行うことで、誰かに感謝されたり、褒められたりするとこのような気持ちが芽生えてきます。特に幼児は、一般的に子供扱いされることが多いので、信頼や期待をもって任されると、大人として扱われているような誇らしい気持ちになり、喜んでそれを行います。自発性が生まれる瞬間です。
 ちなみに、この「当番表」も「環境構成」の1つです。誰かに言われなくても、この環境から自分が当番をする日はいつだ、と分かると、見通しをもち、ときには楽しみにすることにひと役かっています。

当番活動のジレンマ

 これらのポイントを押さえると、当番活動にも自発性をもたせることができるわけですが、「当番活動のジレンマ」といったものも存在します。つまり、どこまでを当番活動で行い、どこからを幼児の(純粋な)自発性に任せるか、ということです。
 例えば、クラスの畑に野菜を植えているとします。その水やりを当番活動で行うことは簡単ですが、子供たちが自発的に行ったとしても、その日に水やりをやっている子(当番)とやっていない子(当番ではない子)が出てくることになります。
 野菜が大きく元気に育ってほしい、土が乾いているから、しなびているから水やりをしよう、というところにそれを行う理由(本質)をもってくると、担任としてはクラスの全員が(当番でなくても)畑や野菜に関心をもち、自分なりに判断して主体的に水やりを行ってほしいのです。
 園によっては、年長児になると毎日何某かの当番活動を行っているところもありますが、このように考えると、果たしてその活動は当番で行うべきなのか、吟味が必要です。

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