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「第三次大戦はもう始まっている」(文春新書) 購読のおすすめ


 ウクライナ戦争及びその後の世界を透徹した視線で射抜こうとしています。練達の知恵者、エマニュエルトッドの重篤な危機感がひしひしと伝わってきます。書名がそれを最もよく表現していると言えます。

  近々の情勢の推移、歴史、人口動態それに著者畢生の研究である家族構造からウクライナ戦争の意味を解き明かしていきます。著者は70年代に旧ソ連の崩壊を予測し世界を瞠目させたように、これからの世界像を提示して日米欧に警告を鳴らそうとしています。

 いわく、この戦争はウクライナ対ロシアの戦争ではなく、アメリカ対ロシアの戦争だ、ゆえに既に第三次大戦である、「ロシアは死活問題だからアメリカには負けない」ではなくアメリカにとっても死活問題なのであり国際秩序を揺るがす大問題だ、この第三次大戦は第二次大戦より第一次大戦に近い構造を持つ、近代社会が目標を失って虚無を抜け出すための絶望的な戦争となっているのはないか、、、、、、等々

 一章と四章がウクライナ戦争後、続けて書かれた論評で、二章、三章がそれ以前に書かれて一章、四章を補説する内容です。

 著者自身が言うようにこの非常時に不謹慎かもしれませんが、知的刺激がこれほどまでに感じられる高いレベルで人類、人間、文明を語っている書物はそうはありません。忙しいサラリーマンにとっても文明史的パースペクティブで現在の世界情勢を把握できる稀有な書物だと思います。

 折しも参院選のさなかです。日本のこれから、自分たちのこれからを考えるうえでも是非ご一読をお薦めしたいと思います。

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