すーこ

年長の息子と白い愛猫をまふまふする看護師です。

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緑のりんご

 息子はときどきびっくりほど物知りで、ときどきびっくりするほど物事を知らない。  「おでんって何?」  コンビニのレジにあるのぼりを読んだ息子が、不思議そうに聞いてきた。おでん知らないの!?一瞬びっくりしたが、振り返ってみると確かに私は息子におでんを食べさせたことがないし、今まで読み聞かせた絵本におでんが登場した記憶もない。 次の日、保育園の帰りに息子とおでんの材料を買い出しに行った。大根、たまご、タコ、ちくわやごぼう天。スーパーで「もう良いんじゃない?それぐらいにして

    • 妊婦を見るたび 可哀想に、と思っていた。

      妊婦を見るたび 可哀想に、と思っていた。 これから起こる不幸も知らずに。 ただ幸せを思い描き、頬を緩ませてベビー用品を眺めたりしているのだろう。 息をするのも苦しい妊娠期間を経た先にあるのは、終わりの見えない細切れ睡眠。不自由。仕事か女遊びか疑わしい夫の帰りを、泣きわめく赤ちゃんをあやしながら待つだけの生活。 夫と結婚することも産むことも選んだのは自分自身で、愚痴どころか自由に遊びまわる同級生たちを羨むことさえ許されない気がしていた。 帰宅した夫が口を開くのは夕飯を批評す

      • 雨音

          今日は朝から小雨が降っていた。  仕事終わり、保育園の奥から元気よく飛び出してきた息子を「おかえり」と撫でて「お外、まだ雨降ってるよ」と伝えると、息子の目が輝いた。  「歩いて帰りたい!」  普段の通園は自転車か電車だが、今日は絶好の雨のお散歩日和だ。私と息子は、保育園から家まで徒歩20分弱の道のりを楽しむことにした。  息子は雨のなかを歩くのが好きだ。たくさんの昆虫が描かれたお気に入りの青い傘をさし、一部だけ透明になっている傘の小窓で弾ける雨粒を観察したり、ビニールの

        • 私は息子をどうすることもできない

           保育園のお迎え後、息子の希望があれば公園でしばらく遊んで帰る。  息子は保育園で軽めの夕飯を食べており、お昼寝なしで夜までもつ体力もあるのでよほどのことがない限り元気いっぱいだ。仕事が終わって私が保育園に着くのは18時前後で、公園で遊ぶ小学生もほとんどが帰宅し始める頃。自転車にまたがり「ばいばーい」と声を掛け合う小学生たちを横目に、公園で1時間近く遊ぶ。いつもの公園は保育園と隣接しており、タイミングが合えば同じ園のお友達もたくさんいる。親に見守られながら保育園の延長のように

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        緑のりんご

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        • 私の話
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        • 息子の話
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        • 中学受験の記録
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          苦難を断ち切り、未来を切り開いた話

          1月3日、友達が退院した。 年末に虫垂炎を患い入院を余儀なくされたのだが、数日間の薬物療法の末に晴れて自宅に戻ったらしい。私たちは、もともと年明けにランチに行く約束をしていたのを快気祝いとこじつけ、焼肉屋さんで乾杯することにした。 いつも少食の彼女が、300gの肉の盛られた定食をガツガツと美味しそうに食べている。「病院食も美味しかったけど汁ものかペースト食のようなものだったし、絶食の期間もあったからやっぱり普段通りの食事が出来るのって嬉しい」と彼女。退院当

          苦難を断ち切り、未来を切り開いた話

          あの日のひまわり

           私が植物に関心を持つようになったのは、コロナ禍に入ってからのこと。外出を控えるようになり、もっとおうち時間を楽しめるようにしたいと思ったのがきっかけだ。でも、飽きっぽい私に植物なんて育てられるのだろうか?乾燥に強いサボテンですらうまく育てられずに枯らしてしまう、という人も世の中にはたくさんいるらしい。自分もそうなのでは?自信のなかった私は、母に話を聞いてみることにした。  母は実家の庭でレモンやユーカリ、金柑などの木を始め、チューリップやバラ、パンジー、いちご、シュガーバ

          あの日のひまわり

          休日の朝

           あれはいつの記憶だろう。遠足の朝、まだ日の昇りきらない薄暗い時間。目覚まし時計よりも先に、「遠足だー!」と飛び起きたことがある。遠足でなくても、旅行やイベントなどのある日にわくわくしてパッチリ起きる、そんな経験をしたことがある人はきっと少なくないだろう。寝ている間も「明日は遠足だ!」という強い意識が頭のなかにあって、そのわくわく感が眠りを中断させてしまうというのはとても不思議だ。  平日の朝。身支度を整えていると、後から起きた息子が「まだママと一緒に寝たかったのに〜」と頬

          休日の朝

          黒塗りの白い折り紙

          朝、息子が唐突に白い折り紙を持ってきた。恐竜柄のレッスンバッグからクレヨンを引っ張り出し、何やら熱心に書いている。  15分後。 「おてがみ、できた〜!」  白かったはずの折り紙は一面を黒いクレヨンで塗り潰されている。息子は良い出来だと自負しているのだろう、とても満足げだ。  何も知らずにこんなものを貰えば、きっとお友達はギョッとするだろう。ゴリゴリと力強く塗りつぶされていることも、色が黒であることもなんだか不気味だ。私なら、何か恨みでも買ってしまったのだろうかと、一

          黒塗りの白い折り紙