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息子の話

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私は息子をどうすることもできない

私は息子をどうすることもできない

 保育園のお迎え後、息子の希望があれば公園でしばらく遊んで帰る。
 息子は保育園で軽めの夕飯を食べており、お昼寝なしで夜までもつ体力もあるのでよほどのことがない限り元気いっぱいだ。仕事が終わって私が保育園に着くのは18時前後で、公園で遊ぶ小学生もほとんどが帰宅し始める頃。自転車にまたがり「ばいばーい」と声を掛け合う小学生たちを横目に、公園で1時間近く遊ぶ。いつもの公園は保育園と隣接しており、タイミ

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黒塗りの白い折り紙

黒塗りの白い折り紙

朝、息子が唐突に白い折り紙を持ってきた。恐竜柄のレッスンバッグからクレヨンを引っ張り出し、何やら熱心に書いている。
 15分後。
「おてがみ、できた〜!」
 白かったはずの折り紙は一面を黒いクレヨンで塗り潰されている。息子は良い出来だと自負しているのだろう、とても満足げだ。
 何も知らずにこんなものを貰えば、きっとお友達はギョッとするだろう。ゴリゴリと力強く塗りつぶされていることも、色が黒

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休日の朝

休日の朝

 あれはいつの記憶だろう。遠足の朝、まだ日の昇りきらない薄暗い時間。目覚まし時計よりも先に、「遠足だー!」と飛び起きたことがある。遠足でなくても、旅行やイベントなどのある日にわくわくしてパッチリ起きる、そんな経験をしたことがある人はきっと少なくないだろう。寝ている間も「明日は遠足だ!」という強い意識が頭のなかにあって、そのわくわく感が眠りを中断させてしまうというのはとても不思議だ。

 平日の朝。

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緑のりんご

緑のりんご

 息子はときどきびっくりほど物知りで、ときどきびっくりするほど物事を知らない。
 「おでんって何?」
 コンビニのレジにあるのぼりを読んだ息子が、不思議そうに聞いてきた。おでん知らないの!?一瞬びっくりしたが、振り返ってみると確かに私は息子におでんを食べさせたことがないし、今まで読み聞かせた絵本におでんが登場した記憶もない。
次の日、保育園の帰りに息子とおでんの材料を買い出しに行った。大根、

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あの日のひまわり

あの日のひまわり

 私が植物に関心を持つようになったのは、コロナ禍に入ってからのこと。外出を控えるようになり、もっとおうち時間を楽しめるようにしたいと思ったのがきっかけだ。でも、飽きっぽい私に植物なんて育てられるのだろうか?乾燥に強いサボテンですらうまく育てられずに枯らしてしまう、という人も世の中にはたくさんいるらしい。自分もそうなのでは?自信のなかった私は、母に話を聞いてみることにした。

 母は実家の庭でレモン

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