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私の話

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妊婦を見るたび 可哀想に、と思っていた。

妊婦を見るたび 可哀想に、と思っていた。

妊婦を見るたび 可哀想に、と思っていた。

これから起こる不幸も知らずに。
ただ幸せを思い描き、頬を緩ませてベビー用品を眺めたりしているのだろう。

息をするのも苦しい妊娠期間を経た先にあるのは、終わりの見えない細切れ睡眠。不自由。仕事か女遊びか疑わしい夫の帰りを、泣きわめく赤ちゃんをあやしながら待つだけの生活。
夫と結婚することも産むことも選んだのは自分自身で、愚痴どころか自由に遊びまわる同級生

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雨音

雨音

  今日は朝から小雨が降っていた。
 仕事終わり、保育園の奥から元気よく飛び出してきた息子を「おかえり」と撫でて「お外、まだ雨降ってるよ」と伝えると、息子の目が輝いた。
 「歩いて帰りたい!」
 普段の通園は自転車か電車だが、今日は絶好の雨のお散歩日和だ。私と息子は、保育園から家まで徒歩20分弱の道のりを楽しむことにした。

 息子は雨のなかを歩くのが好きだ。たくさんの昆虫が描かれたお気に入りの青

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苦難を断ち切り、未来を切り開いた話

苦難を断ち切り、未来を切り開いた話

1月3日、友達が退院した。

年末に虫垂炎を患い入院を余儀なくされたのだが、数日間の薬物療法の末に晴れて自宅に戻ったらしい。私たちは、もともと年明けにランチに行く約束をしていたのを快気祝いとこじつけ、焼肉屋さんで乾杯することにした。
いつも少食の彼女が、300gの肉の盛られた定食をガツガツと美味しそうに食べている。「病院食も美味しかったけど汁ものかペースト食のようなものだったし、

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