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学校に行かないという選択。「子どもの学びを邪魔しないと決意する大人の存在。ひとつの命と向き合う子どもの毎日。」


物心ついた時から、私の身近には何かしらの生き物が傍にいました。

おばあちゃんが飼っていた金魚は、玄関の靴箱の上に置かれ、いつもゆらゆらと朱色の尾びれを優雅に動かし、水槽の中を行き来していました。私はそれをつま先立ちし、眺めていた記憶があります。

私は、金魚が苦手なのです。

虫や他の生き物に対しては抱かない感覚を金魚に抱いている。

それが、何処から来るのだろうと大人になってから考えてみたことがありました。

きらびやかな色がなんとなく現実離れしている気がし、綺麗だけど、どこか怖い。

元気だったはずのお祭りで掬った金魚は、翌朝、水槽を覗くと、お腹を上にして、浮かび上がっている。その突然さに、いつも驚いてしまう。

金魚を見ると、その感覚が思い出されるのかもしれません。

実家では、小鳥や猫を飼っていた事もありました。いずれも、病気や高齢で亡くなるとき、その最期に立ち合う役回りになることが多く、生きているということは、いつかは死を迎えるのだということを、幼少期に身近に居た生き物から漠然と感じていたように思います。


我が家の12歳になる長男は、生き物が好きです。

小さい時は、カブトムシやクワガタなどの昆虫に始まり、今は蛙とイモリの飼育をしています。この2年程は、外来種の駆除のお手伝いに参加しているのですが、処分されるのは辛いからと、自宅に連れ帰り、20匹近い蛙の世話を週に2回、3時間ほどかけ、朝5時前に起きてしていたことがありました。

蛙は、猫や犬の様に人間を個別に認識してはいないようで、わかりやすいコミュニケーションではなさそうに思えます。

長男は、「けっこう、かわいいんだよ。」と、淡々と、根気強く世話をする。その姿から、私が持ち合わせていない種類の「生き物に対する情」の様なものを感じるのです。

一時期、たくさん飼育していた蛙は長男が信頼できる大人の生き物友達が里親となってくれたので、今では3匹となり、蛙3匹、イモリ3匹の飼育中。

イモリは、爪楊枝の先程の幼生から育てている子が1匹。卵から孵った子が2匹。順調に育っていたのですが、数週間前から、卵から孵ったうちの1匹が、突然餌を食べなくなってしまいました。

拒食です。

長男は、知り合いの両生類やは虫類の飼育に詳しい方に相談し、餌を変えてみましたが、全く口を開けようとしません。イモリは同じ時期に生まれた子と同じ飼育ケースに居るのですが、大きさが明らかに違うことがわかる程になっています。

彼は、自分で原因や対処法をインターネットを使い調べてみたようです。

両生類の拒食は珍しいケースでは無いらしいですが、飼育環境が合っていない、温度管理、なにか驚くような出来事の有無、怪我、病気・・・その原因は様々らしいのです。

再び、長男は生き物に詳しい知人に相談し、その方のご主人も、は虫類・両生類に詳しい専門家であることから、ネットで調べた「栄養剤を水に混ぜる処置が可能か」と尋ねることにしたようでした。

その知人は、生き物の調査を通じて長男と関わってくださり、生き物のことを色々教えてくださっています。

長男が風邪を引き、直接会えない日が続きました。しかし、イモリの状態は変わりません。彼は、知人にメールで状況を伝え、アドバイスを求めました。

知人は、長男にメールを返信する前に、私にメールをくださり、そこにはこの様に書かれていました。

「本当は、そのイモリのことが、とても気になり心配なので、預かった方が良いのかとも思いましたが、ただ、生き物を飼育するうえで最初から最後まで自分で面倒をみることはとても大切だと思っているので、ちょっと大変かもしれないけど、がんばってくれるとよいなと思っています。」

その後、知人から、長男に宛てられたメールには、獣医師でもあるご主人からのアドバイスをふまえ、飼育環境の見直し、餌の見直しと観察についての事柄。

医療的には、栄養剤を水に混ぜるなどの処置もあるようなのですが、効果は一過性の場合も多いということが、説明されていました。

そして、

・色々試してみた上で、ひとつ知っておいて欲しいのは、生き物を飼っていれば原因がはっきりと分からないまま、弱って死んでしまう事もあるということ。

・分からないと思っていたけれど、飼育の経験を重ねた上で後から考えたら、あの時はこれが悪かったかも?あれが悪かったかも?と気づくこともある。そういう事に気がつくようになるためには自分で考え、自分で色々試し、生き物の様子をよく観察してみることが大事。

・どの生き物にしても飼うと決めたら、出来るだけ最初から最後まで自分で面倒をみて、その生き物が死んでいく姿もちゃんと見届ける事は、これからも飼育を続けていくなら、必要になる。

・預かる事も考えたが、Kちゃんが面倒を見るのがよいと思う。偉そうに書いているけど、自分も常にそういう思いで飼育している。

このような内容のメールを長男にくださいました。

長男が、このメールを読み、どのように感じたのかは、わかりません。

しかし、知人が彼のことを尊重し、信頼し、成長を邪魔しないようにと考えてくれていること、生き物を通じ長男が感じ学ぶことを丁寧にサポートしてくれる方々が彼の周りには存在していることは、決してあたりまえではなく、とても恵まれていると思います。

子どもの学びを邪魔しないと決意する大人たちの存在と、ひとつの命と向き合う毎日が長男にはある。

「生きているということは、いつか必ず死を迎えることでもある。」

言葉の上では同じでも、私が子どもの頃に感じたものとは、まったく違う色を成し、彼の中に刻まれていくのだと思います。

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