わたしは東京しか知らない

わたしは生まれも育ちも東京である。

母方の実家も、父方の実家も共に東京にあるので、遠方の地方への帰省をしたことがない。


この話を地方から上京してきた友達にすると「シティガールだねぇ、羨ましい」と言われることも多いが、わたしが本当に羨ましいのは彼女たちの方である。


結局は互いにないものねだりのような気もするが、わたしは『故郷』が欲しかった。

広い自然の中で、少し不便なところもあるが、そんなところも含めて愛すべき故郷。

そういう甘くて切ない香りが、この2文字からぷんぷん漂っている。


わたしは東京しか知らない。

ただ、東京といえど成長と共に自分の行動範囲が広がることで、都市それぞれの顔の違いに直面するようにもなった。


カルチャーの最先端、渋谷・原宿。

情緒ある下町、浅草。

サブカルチャーの聖地、下北沢・高円寺。

交通の要であり、お金が動く街、新宿。

電気街とアニメ文化の二面性をもつ秋葉原。


ざっと名前をあげただけでも、こんなにも多様な街とその背景の違いに驚かされる。


そして。人、人、人の海。


時々夜景の光なんかを見ると、あの一つ一つに家庭があって、今日も帰らない娘のことを想っているお母さんがいたり、はたまた隣の明かりは新婚カップルの幸せな家の照明だったりするのかなぁ、と勝手な想像を膨らませてしまう。

すれ違う人たちだって2度と会うことはない人がほとんどだし、会っても気がつかない。


それは当然のことだけど、思い返すと少し寂しさを感じたりもする。


東京の中で、会っている人。会わなくなった人。この先出会う人。


今までも、そしてこれからも。


きっとその時のわたしに合った街と人を無意識に、わたしは選んでいくのだろう。


もしくは街と人に、選ばれているのかもしれない。

だとしたら。


一生選び続けてもらえるように、頑張ってみるよ。


わたしの故郷、東京。

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