箸が転んでも泣ける。いつもの自分はどこへ?│#9
休職期間に入ると、すぐに最初の壁にぶつかりました。
家族との関わり方をはじめとする、身近な人に理解してもらうためのコミュニケーションの問題です。
うつ状態で体調が崩れているときって、外から見たら何がどう変化しているのか分かりませんよね。
顔色が悪そうだったり、やつれていたりはするものの
それでも周りの人からすると、「いつも通り」に見えてしまいがちです。
包帯を巻いているわけでも、血が出ているわけでもなく
すべては内側で起きていること=心の傷の問題なので、当事者の変化に気づきづらいのです。
わたしは家族が何気なく放った一言にものすごくショックを受けて、コミュニケーションが上手くいかなくなることが何度もありました。
そして、なんだか普通じゃなくなってしまった状態の自分を受け入れるのが怖くて、毎日が悪夢のように感じられたのでした。
(でも永遠には続かないから、必ず抜けられるから、ぜったいに大丈夫です〜! ゆっくり、ゆっくりです)
箸が転んでも泣ける
よく制服姿の子たちがはしゃぐ姿を見て、「箸が転んでもおかしい年頃なのね」なんて言いますよね。
当時のわたしは、食事中に箸を落としてしまうだけで、悲しくてイライラして涙をこぼしていました。まさに「箸が転んでも泣ける」ような。
仕事や体調管理における「上手にできない」「こんな自分じゃだめだ」「思い通りにいかない」という焦りが、日常生活の些細な失敗と重なってしまって
パンパンに膨らんだ風船のような思いが、ふとしたはずみで勢いよく噴出してしまうのです。
「そんなことで泣かなくていいじゃない……。」と言われることも、頭では分かっているのにどうしてもコントロールできないのでした。
宅急便を受け取るのが怖い
「毎日家に居るんだろ? インターホンが鳴ったら出ろよ」
「明日の昼に荷物が届くから、必ず受け取れよ」
外に出る気力がなくて、部屋でぐったりしながら過ごす日が続いていたある夜。
父親にそう言われたわたしは、「無理、無理、ぜったい無理だ」とひどく追い詰められたような気持ちになりました。
他人が怖くて、顔を合わせる勇気なんてないし、まともに会話できる気もしない。
それに、何かのアクシデントで荷物を受け取りそびれてしまったら、どうすればいいのだろう……?
そう考えるだけで、血の気がサッとひいていきました。
約束なんてしたくない。ぜったいに失敗できないというプレッシャーがしんどい。
もう怒鳴られるのは嫌だ、わたしは何も出来ない無能な人間なのだから、一切期待しないで……!
普通なら、「もし荷物を受け取れなかったら再配達を依頼すればいいや」と軽く引き受けられるようなことですが
重大な責任があるかのように感じてしまい、「いまのわたしにこんなことを頼むなんて酷だ」と気持ちがぐっと落ち込んでしまいました。
耐えきれず泣き出すと、「うるせぇ、静かにしろ!」「そもそも仕事休んで寝てばっかりいるんじゃねぇよ」と父親が怒鳴る……という負のループに入ってしまって
すぐに家に居られる状況では無くなりました。
このあたりから、「もはや自分で自分をコントロールできない域にきているんだ」「現状を周囲に理解してもらうのはとても難しいことだ」と実感するようになりました。
*
「うつの取り扱い説明書があったら、どんなに楽だったか……。」
「通訳してくれる人やコンテンツがあったらいいのにな」
当時のわたしはよくそんな風に考えていました。
サポートする周りのご家族が疲弊しないためにも、こういう話をライトに伝えられるようになりたいです!
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