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2021ファジアーノ岡山にフォーカス22J2:第19節:岡山vs琉球(Home)「岡山の勝利の方程式3バック」

1、 前置き

首位の新潟に対して、辛抱強く戦い勝利を掴んで岡山に帰還。技術的な差こそ感じたが、首位に勝利した事で、チームとして確かな手応えを感じ、ホームで、4位の琉球を迎えることとなった岡山。新潟に、勝利できたのは、単なる幸運であったのか、それとも岡山の強さを発揮することで、掴んだものであったのか。それが問われる試合となった。

琉球と言えば、18清水 慎太郎や24赤嶺 真吾といった元岡山の選手が所属するチームで、岡山にも14上門 知樹や41徳元 悠平といった元琉球の選手が所属するチームといった意味で、選手にとってもサポーターにとっても特別な意味を持つ一戦となる。私個人としてもSNSで、毎回触れている訳では無いないが、やはり気になるというか、岡山戦以外で、ゴールやアシストを決めて、出場機会を重ねて、結果を残してくれていると嬉しい。

さて、FC沖縄ではなく、FC琉球とクラブ名。正直他県であってもこれだけしっくりくるという意味で、琉球王国というのが、沖縄県民にとって、特別な意味を持つ事を感じられる。首里城が、炎上するという悲劇があったが、岡山にある岡山城と比べて、県民だけではなく、日本国民や外国の方にも愛されており、世界的に衝撃を受けた悲しいニュースであった。

一度失ったものは戻ってこないが、復興に向けて、少しずつ前進しており、復元されて、また首里城を拝める時が、沖縄県民ではないが、早く来て欲しい。私自身、一度見ることができているが、あの綺麗な城は、琉球のサッカーのように凄く魅力的であった。そう考えると、織田信長の最後の居城の安土城が残っていたら、どんなものであったのか。それはとても気になるという気持ちも抱いた。

それと同じように、サッカーも一度終わってしまった試合を再び観戦することは、非常に難しい。そう考えると、今しか見えない試合を一戦一戦、見ることができるのは、とても幸せなことかもしれない。だからこそ、毎試合観戦されている方がおられるのも理解できる。ただ、様々な事情により、チェックが出来ない方もおられると思うので、そういった方にも少しでも岡山の試合の様子が、伝えられれば、嬉しく思う。それでは、琉球戦について、触れて行きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

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2、 意地のぶつかり合い

まずは、いつも通り、両チームについて、簡単にまとめていく。


「ファジアーノ岡山」
・ここ数試合で手応えを掴んでいる4-4-2システムを継続。
・全試合フル出場を続けていたGK13金山に代わりGK31梅田が、今季初スタメン。
・GK31梅田を除いた残りのスタメン選手は、前節と同じ。
・7白井と5井上は、フル出場を継続。

「FC琉球」
・サイドからの攻撃を主体とした4-2-3-1を継続。
・チーム得点王の23池田に代わり18清水がスタメン。
・23池田がメンバー外で、6風間リザーブ入り、元岡山の24赤嶺もリザーブメンバー継続。
・攻撃的SBの7田中と14沼田、中盤の軸の20上里が、ほぼフル出場。

岡山は、岡山のメンバーで技術に特徴のある選手を中央に集結させるファンタジスタシステムをこの試合でも採用。中央に制限するこれまでのポゼッション型チームへの対応の守備組織を構築するのか、琉球に対しての独自の守備態勢を構築するのか、その辺りが注目ポイントであったが、琉球のサッカーは、前の3試合のチームとは、少し色が違って来た。

琉球は、後方でしっかり繋いで来たここ数試合で対戦したチームと違い、展開を速くするというのを主眼に置いて、攻撃を構築。最終ラインに20上里 一将が、降りてくることがあったが、後で、しっかり繋いで行くというよりは、ビルトアップに加わる事で、展開力を高めて、素早く前に運ぶという事を主眼としたものであった。

事前データで、ドリブルの少ないというデータが示されていたが、球離れの速く、パスを多用する事で、攻撃のスピード感を高めて、ゴールに迫り、守備態勢が整う、もしくは、スピードに慣れる前に、相手の守備をブレークし、得点を奪う。チームが一丸となってゴールに迫る一致速攻のスタイルである。

ポジションごとに、役割が違うというよりは、チームとして如何に早くゴールに迫るか、そこが徹底されていたサッカーであった。よって、岡山としても中央を制限して、中央の危険な所を消して、ミスを誘うというよりは、早い展開を遅らせる守備を主眼としていた。多少、自陣のバランスが崩れてでも、琉球の選手に対して寄せに行き、琉球の攻めを遅くらせることで、自由を制限するという攻めの守備を、岡山が採用していた。

とはいえ、琉球として、そういったスタイルを徹底してきて、ここまで、戦ってきているので、高い完成度を誇っている。岡山としても、前半戦があと少しで終わるという段階で、対戦したので、ある程度、対策できていたが、序盤戦で、当たったチームは、難しい対応が迫られてきたのは、想像は難しくないスピーディなサッカーであった。

速い展開のサッカーに対して、受けるのではなく、しっかり寄せて制限しに行くという事は、当然そこでの接触プレーは増えてくる。両チーム激しいデュエルが、散見されてファールもそれに伴って多い試合となった。もちろん、そこで制した方が、試合を有利に進めることができるので、両チーム引き下がらない。

試合展開的には、琉球が自分達のやりたいサッカーで試合を進めていたのは間違いなく、岡山の守備網をスピードによって突破し、ゴールをこじ開けようと様々な工夫を凝らし、岡山ゴールと迫った。岡山もバランスを重視して受ける守備を採用する中でも、隙が生まれるが思い切って寄せに行く判断の良さが光り、距離感も良く対応。極力、エアーポケットを作らなかった事で、なんとか苦しい時間を凌ぐことができた。

攻撃時には、前線の2選手を軸に中で活路を探るが、その中で、10宮崎 幾笑は、比較的低い位置からのボール奪取からのキープやチャンスメークに徹する形で初めて機能したと言える働きで、ゴール前以外でのプレーでの活躍できたのは収穫。中に注意を引き付ける中で、サイドのスペースを活用する形も良かった。実際に、先制点も中からサイドへ展開し、そのサイドから崩しから生まれた。2廣木 雄磨が、復帰戦に続き攻守で、安定したパフォーマンス。41徳元 悠平や11宮崎 智彦といったサイドの選手の活躍が光る。


「岡山のサッカー」
・距離感や人数のバランスを崩さない事を根底とした攻守のスタイルで、隙を見せない。
・中央で相手の攻撃を制限するとはいうよりは、相手の攻撃を遅らせる事を意識。
・スピードのある攻撃に対して、攻撃の出所に対して厳しく行く事で自由を制限。
・中に絞る攻撃で、サイドのスペースを有効活用する攻撃で活路。

「琉球のサッカー」
・球離れよくスピーディな攻撃の速さで、合理的にゴールに迫る。
・攻守の入れ替えの速さを徹底する事で、主体的なアクションを取り易くする。
・球際で負けない事で、攻守の入れ替えの速いサッカーを支える。
・サイドを主体にする中で、ゴール前では、多彩なアクションで得点を狙う。

3、 勝機を呼び込んだ若き守護神

合理的にゴールに迫る事と、攻守の入れ替えを速くする事、球際で厳しくプレーする事の3本柱で、試合の主導権を握る琉球。そこに対して、6喜山 康平が、岡山の攻守のバランスを取ることで、スペースを作らせず、7白井 永地がハードワークする事で、隙ができたところをフォロー、5井上 黎生人と22安部 崇士が、攻守で安定したハイラインを構築。両SBも攻守でミスが少なく抜群の安定感で、隙を見せず凌いだ。

そして、この試合では、この岡山の安定した戦い方に31梅田 透吾という新たなピースが加わった。ハイラインを採用する事で、GKの攻撃の参与が増えてきたことで、フィード精度やスピードといった部分が求められるようになってきた。4濱田 水輝を主体とした戦い方、6喜山 康平を軸とした中盤のバランスを取っていた序盤戦とは今は違う。

序盤戦は、引いて受けることでバランスを取って、勝利を目指していた。その当時でもDFラインは高かったが、今ほどハイラインではなかった。主軸に怪我人が続出した事で、試行錯誤する事で、新たなサッカーを構築することができた。また、ハイラインを保つことが難しくなれば、13金山 隼樹が、正守護神に戻ることがあるかもしれないが、この攻守でアグレッシブに戦うスタイルを続けるのであれば、31梅田 透吾の正守護神というのが、ベストな選択となる。

31梅田 透吾が、今のサッカーにベストである事は、自身のプレーで証明してみせた。琉球のスピード感ある攻撃の1つであるサイド攻撃時の対応が良かった。DFラインとGKの間へのグラウンダーのクロスに対しての足元の対応も問題なく、ハイボール処理という空間への対応を安定していた。一度、高さが足りず、相手選手に先に当たったことで、無人のゴールがという状態が、生じかけたが、勇気を持って飛び出るという対応をしていなければ、そこで合わせられて失点していたかもしれない。安定した判断と逆の判断となるが、決断の良いプレーも彼の魅力に感じた。

そして、迷いのないビルトアップの攻撃関与も大きな魅力である。この試合では、前節以上にDFラインが思い切ったポジショニングを見せていた。それは、両CBが中央から離れて、両サイドに開く形。これは、後で相手チームの寄せをいなすのに有効で、ビルトアップの数的有利と、寄せの分散を可能とする。正確な右足とパスの判断の速い31梅田 透吾でなければできない繋ぎの形と言える。

驚くべきことに、31梅田 透吾の武器は、13金山 隼樹の良さをも脅かすシュートへの反応に優れることである。脇へのシュートに対して、自然と体を落として、弾くのでなく、その場で叩きつけてといよりは、抑えてセーブする合理的な反応で、セカンドボールという2次攻撃も回避した。また、GKの直感や運の良さというのもこの試合では光った。それを引き寄せるポジショニングや反応や、シュートへの準備。それが、全て良い方向に出た試合となった。


「31梅田 透吾の良さ」
・ハイラインのスペースケアができる機動力を活かした守備範囲の広さ。
・思い切ったビルトアップを可能とする正確なフィートとパスの選択の判断の良さ。
・GKの構えの弱い所へのシュートに対する自然体での反応でのセービングとその後処理の安定感。
・運をも味方にするセービングを可能とする正確なポジショニング。

4、 岡山が3バックで逃げ切れる理由

岡山の3バックが、リードした時になぜ有効なのか。ここまで、シーズン開幕前の戦力分析の時から一貫して守備固めと、表現してきたが、実は、それだけではないようだ。確かに、5バックになる時間帯もあるが、この試合の様にしっかり追加点を奪えている試合もある。つまり、一定の得点力がある3バックであることが分かる。

何故、追加点を奪うことが可能なのか。それは、3バックの特徴を掴む必要がある。3バックは、やはり、CBが3枚という形で、2トップであれば、1人余らせる事で、DFラインの突破を試みる攻撃に強く、両WBが、サイドのスペースを埋める事で、サイド攻撃にも強い。ただ、サイドに基本的に1人になる事で、サイドの主導権を握られ易く、攻め上がった後のサイドのスペースを使われる傾向にある。

ただ、その分、中央に厚みがあり、後からしっかり組み立てるサッカーが、流行した時には、3バックが増えたが、近年のJリーグでは、数が減って来たように思う。現状は、サッカーに多様性がある中ではあるが、4バックが主体であるだろう。ただ、岡山の様に展開によって変更するチームや、時間帯によって、変更するチームも一定数存在する。

岡山がリードした展開で、採用した3バック(5バック)の成績は、どうか。独自にチェックして、まとめてみた。


「リードした岡山の採用した3バック(5バック)の試合結果」
1節(栃木戦):追加点を奪った上で逃げ切りに成功。
5節(山形戦):採用時間が短いが逃げ切りに成功。
10節(北九州戦):30分残して採用し、逃げ切りに成功。
11節(秋田戦):後半8分から採用し、逃げ切りに成功。
16節(松本戦):6喜山CBで採用し、1失点するも追加点を2点奪い逃げ切りに成功。
18節(新潟戦):残り10分で採用し、逃げ切りに成功。
19節(琉球戦):後半9分から採用し、追加点を2点も奪いリードを広げた。

チェックしてみると、岡山が7勝した全試合で、3バックで戦った時間が、短い試合や長い試合、3バックに変更した後に、失点した試合もあるが、どの試合も先制した試合で、逃げ切りに成功している。逆に同点や負けている状況で、採用した3バック(5バック)では、同点に追いつけていないことを示す。

つまり、岡山は、現状は、先制逃げ切りのチームで、先制して3バックを採用する展開に持ち込むことができれば、逆転を許すことなく勝率100%(3バックを採用する前に同点に追いつかれた水戸戦は、逆転負け)で、それを支えている、まさに勝利の方程式と言えるのが、3バックであることが分かる。

では、何故ここまで、逃げ切れるのというのに迫っていきたい。それは、やはりリードしているというのが、一番大きい。岡山の攻撃の形もそうだが、同点であれば、リスクの少ないサイドも活用し、ゴールに迫る事が多く、サイド攻撃のためにWBが攻め上がるが、その背後のスペースを使われるリスクが常に生じる。しかし、このWBが、無理に上がらず、同点に追いつきたい相手チームの攻めに対して、遊撃に専念した場合は、どうか。

遊撃に専念することで、3バックの弱点であるサイドのスペースを使われるというリスク自体が小さくなる。突破してもCBの選手がカバーリングに来る。攻め上がった場合は、カウンターで、無条件で、サイドのスペースを使われてクロスをあげられるケースも出てくるが、無理に攻め上がらなければ、そういったシーンは、なかなか作れない。つまり、同点に追いつきたいチームにとって、岡山から得点を奪うには、相応のリスクを伴った攻撃を仕掛ける必要がある

サイドが駄目なら中央から攻めたいところだが、中央には、6 喜山 康平と、7白井 永地と守備の巧いボランチの2選手がおり、運動量や人数が足りなければ、26パウリーニョというカードもある。そして、その後方には、CBにも5井上 黎生人、4濱田 水輝、22安部 崇士、33阿部 海人の内3人の何れかが待ち構える。当然、前線の選手も状況に応じて、下がって来るので、時間帯によっては、三段構えのブロックを敷く時間帯もある。

弱点あるとすれば、唯一失点した松本戦のように高さに対してであるが、人数をかけた岡山の守備陣のセカンドボールの奪取率が高く、攻める側の攻める時間が奪うことができる。セカンドボールを拾うために、人数をかけるとカウンターを受けるリスクが、同点に追いつきたい攻め手側に生じる。まさに隙が無く、ここまで、3バック採用後に逃げ切りに成功している秘訣である。

また、この試合では、より進化した3バックとなっている。それは、前線の3選手の攻撃の質の高さである。20川本 梨誉と14上門 知樹。この2選手をフリーにしてしまえば、ミドルシュートで失点してしまうリスクが高まるので、後方に人数を残す必要がある。加えて、20川本 梨誉は、収める力。14上門 知樹は、ドリブル突破する力がある。

ここに、27木村 太哉が加わると、1人でボールを運べるドリブルが加わり、ドリブルが活きるサイドの崩しも可能となる。これにより、サイドの選手の上りをも牽制することができる。この3選手が、前線にいるだけで、岡山は、守備が安定する。実際に、この試合では、前線の選手の個力から追加点というシーンを演出した。

とはいえ、攻め手側も得点を奪わなければ、勝利することはできないので、サイド、中央、ロングパス。何れかの手段で、リスクを負って、攻める必要がある。現状、岡山のリスク管理の巧い3バックを破れたチームは無く、岡山の必勝パターンと言っても差し支えないだろう。新潟のように個の守備に優れるチームであれば、リスクを負っても対人守備の巧さで、同点から逆転に持っていく力があるかもしれないが、守備に不安のあるチームであれば、攻撃か守備のどちらかを犠牲にして、戦わないと、同点から逆転に持っていく事は難しいだろう。

更に、4濱田 水輝が、この試合では、投入されたが、今までの受ける守備であった3バック(5バック)であったが、5井上 黎生人と33阿部 海人が、後方で4バックの様にカバーリングするようなポジショニングをとり、4濱田 水輝がある程度自由に、攻撃の芽を潰す守備をする「守備のフリーマン」のような役割を担っていた。5井上 黎生人は、予測の巧い頭脳的な守備が巧く、33阿部 海人もスピードもあるので、カバーリング適性が高く、4濱田 水輝も思い切った守備ができる。

これにより、攻撃の芽すら摘んでしまうという凄く欲張りな3バック(5バック)システムとなった。攻めて側としては、どこか基点というか攻略の道筋を見つけたいのに対し、それすら許さない。色々な角度から、この試合の岡山の3バックでの戦い方を見てきたが、岡山の3バック(5バック)が、恐ろしい狙いを秘めたシステムであることが分かった。

岡山の3バックは、相手チームが、同点に追いつきたいと攻めてくれば、カウンターを狙って行く事もでき、相手チームが、失点を恐れて、リスクをかけなければ、岡山は、要塞のように高い壁として立ち塞がる。1点のリードは、怖いと感じるかもしれないが、岡山の今季のここまでの勝利すべてで、逃げ切りに成功した3バックへの自信を深めた事で、そういった精神的な焦りはなく、それどころか冷静で、自滅する様子もなく、逆に攻め手に自滅を誘うほどの堅守でありながら、反撃する得点力もあるので、バランスに優れる。

ここに9李 勇載というカードが加われば、クリアすらアシストになってしまう様な3バックとできる可能性もある。31梅田 透吾のフィードという武器も加わり、安定感と爆発力を備えた3バック(5バック)は、完成の域に到達しつつあるが、まだ伸び代がある。そう考えると、如何に先制することが出来るかが、今後の岡山の勝利に直結する課題として、問われて行く事なる。


「岡山の3バックが逃げきれる秘密」
・両WBが遊撃に専念する事でサイドのスペースを空けない事で、サイド攻撃を抑える。
・中央攻撃に対してもスペースを空けず、人数をかけて対応する事で、自由を制限。
・ロングパスに対してもセカンドボールへ集中して対応する事で、波状攻撃を許さない。
・前線に1人で仕事ができる選手が残る事で、相手の上りを牽制する事で守備が安定。

5、 総括(次節へ向けて)

今回のフォーカスでは、琉球戦での先制点を巡るアグレッシブな攻防と、主導権を握った琉球の切れ味鋭い攻撃を凌いだ岡山でのデビュー戦となった新守護神31梅田 透吾の活躍、そして、先制後にここまで、リードした状況では、全て逃げ切りに成功している3バックの強さの秘訣。この3点について、独自の視点で、迫って来たが、如何だったでしょうか?

ここまでの、岡山を見てきて感じる事は、怪我人や選手起用の試行錯誤を繰り返しての紆余曲折のように感じている方もいるかもしれないが、首尾一貫で、チームスタイルの熟成を図って戦ってきていると見ている。確かにメンバーや、戦い方の細かい変化こそあるが、ベースとなる4-4-2(4-2-3-1)というシステム自体は変わっておらず、3バックで、逃げ切る形に持っていくという勝利の形も変わっていない。

中盤に入って行く中で、対策が進み、失速していくチームというのは、多くのシーズンで見られるが、岡山が、ここに来て、上昇気流に乗るかどうかの分岐点に立ったと見ている。チームスタイルの完成した形が見えて来たと考える理由は、4失点で敗れた千葉戦後の戦績を見ると分かり易い。天皇杯を含めた公式戦の失点数に目を向けると、7試合で3失点しかしていない。

これが、どれだけ凄いかと言うと、リーグで一番失点が少なかった開幕から7試合で、3失点という失点数と同数である。そこから低迷期であった時期に、6試合で9失点もしてしまった。6~7試合周期で見てみても、ここに来て、7試合で、3失点しかしていない。4勝(3勝)1分2敗。7(6)試合8(7)得点3失点という安定していた結果を残すことができている。そして、2敗した相手も松田 浩監督が途中から指揮を執り、今節終了時点で、公式戦8試合負けなしの長崎と、リーグ戦4連勝中の東京V相手であった。

軌道に乗る前の岡山が、軌道に乗った2チームに敗れる形になっていたが、東京Vに関しては、天皇杯でメンバーを落とした岡山が、主軸の多かった東京Vに勝利し、雪辱を果たすことができた。また、勝利した相手も対戦当時首位であった新潟と4位であった琉球を含み、悪くない結果と言えそうで、次節の京都戦に向けても高い士気と状態で、乗り込むことができる。

一時は、連敗や降格が心配されたチーム状況まで、落ちるところまで落ちていて、この連戦も大きな連敗になるのではないかという予想する声もあったが、その不安を払拭する内容と結果を残すことができた。もしかすると、京都を破るというジャイアントキリングができるのではないかという期待を抱くほどの内容での勝利であった。

京都は、ここまで、12勝5分2敗30得点12失点という岡山のほぼ倍の勝利と得点、そして、岡山以上の堅守の結果を残している。しかし、岡山と同様に天皇杯を含む公式戦の結果を見てみると、7(6)試合4(3)勝9(6)得点3(4)失点と近い戦績。更に、ここ2試合では、4得点3失点と自慢の守備に綻びが出ており、付け入る隙はありそうだ。

ただ、転じて持ち味の得点力は、2試合で4得点と絶好調で、岡山としては、粘り強く守り、少ないチャンスをものにして先制点を奪い、リードを維持した状態で、3バックシステムでの逃げ切りの展開に、持ち込むことができるかどうかを、問われる試合となりそうだ。京都の布陣を見る限りは、ピッチを広く使って来るチームで、中盤の選手も展開力もありそうで、中盤で、自由にさせない事で、サイドからの仕掛けを限定的にし、ゴール前で守るシーンというのを少なくしたい所である。

京都のメンバーを見ると、実績のある選手が多い一方で、ユース出身の若い選手も多く、安定感の部分では多少のブレがあるかもしれない。9ピーター・ウタカや、13宮吉 拓実、23ヨルディ・デバイスと違いを見せてくる選手に仕事させない事と、元岡山の16武田 将平の左足には、気を付けたい。

京都に、岡山からは、簡単に点が獲れると思われるか、獲れないと思われるかは、勝負の分かれ目になるかもしれない。また、ユースの出身の若い選手達も過去の京都ユースの事を考えると、テクニックが優れているイメージがあるので、難しい対応になると思うが、剥がされないように、しっかり個で対応していきたい。

さて、総括の首尾一貫という話に戻るが、有馬 賢二監督の目指す岡山のサッカーの形というのは、どういったものか。それが見えて来た試合が、琉球戦である。一番は、失点しないという事で、先制点を奪えるチャンスを待つというサッカーで、得点を奪った後は、3バックで、追加点を狙いつつ、しっかり試合をクローズするというサッカーである。

そこに向けて、対戦相手の分析をしっかりした上で、相手の良さをどう消すかという視点に立ち、自分達の戦い方を変える。これは、相手に先制点を与えない事で、自分達の展開に持っていく狙いを持った粘り強い我慢のサッカーを全試合で見せている。怪我や相手の好プレー、自分達のミスなどから失点を許して、敗れる事もあったが、勝利への道筋は一貫していた。

現状、先制されて、ゴールに蓋をされてしまうと、そこを破る攻撃の個の力の不足であると、このフォーカスでも触れたが、リスクを冒した攻撃時の個の守備の高さという面でも、上位勢に見劣りする部分もあるのも事実ではあるが、限られた戦力と、強化費の中で、どうやれば、自分達の持ち味で出せるか、相手の持ち味を消せるかという補強や、起用法の工夫の跡が見て取れる。

11宮崎 智彦の補強の意図も分かり易い。左利きのSBというのは、41徳元 悠平1人で、オーバーワーク気味であったが、11宮崎 智彦の加入により、41徳元 悠平を休ませる事や、1つ前で起用する事で、14上門 知樹との連携プレーを見る事ができるようになった。現状慣れないポジションで、本来の持ち味を出せていない部分もあるが、センスの良い選手なので、ここでのプレーの安定感が高まれば、チームのオプションとしても効果的で、左SBに戻った時もプレーに幅を出す事も可能となるだろう。

22安部 崇士にも然り、レフティのCBは、崔 程援がが契約満了で退団したこで、不在となっていて、CBが4人体制ながら、2人が怪我という危機的な状況であったことから、緊急の補強ではあったが、それだけに留まらず、左利きを活かしたビルトアップは、5井上 黎生人を右で起用できる利点と共に、抜群の安定感をチームにもたらした。

こうした補強は、後での守備を安定させるだけではなく、ビルトアップのミスを少なくするという狙いの2つアプローチにより、失点を減らすという事に繋げている。28疋田 優人に起用により、前から行く守備を導入。33阿部 海人の起用により、ハイラインを志向。これらは、主軸のアクシデントによって、抜擢された若手の選手を起用する中で、生まれたサッカーの変化であった。

主軸選手を、長く起用して行く中では、変化をつけるのは難しいが、そういった選手が、何らかの理由で出場できない試合で、その選手の特徴を活かしたサッカーを実戦で取り入れて、チーム戦術として落とし込む。まるでこれは、「星のカービィ」のモンスターを吸い込んで、その特性をコピーするよう特技のようなチーム作りである。

ただ、全てを取り入れるのではなく、焦らず段階を踏んで、状況に適した必要なものだけを取り込んできた。着実にチームの幅を広げて行く中で、適切なタイミングでそれを実行し、チーム強化を推し進めてきた。時系列で、チームの強化方針を整理していくとより分かり易いかもしれないので、そこについて、まとめてみる。


「岡山のチーム強化の流れ」
1:オフシーズン
得点力不足に対して、GK~FWまで攻撃的な若い選手を獲得。
2:序盤
奪ったら縦に付けて素早い攻撃で、ローリスクハイリターンのサッカー。
3:序盤2
全体の押しあげと中央の厚み不足で、ゴールが遠く慢性的な得点力不足。
4:分岐1
28疋田が17関戸の怪我で抜擢、前から行く守備へ挑戦。
5:分岐2
戦術理解と連携を深めた20川本の起用で中央でのプレーの質と人数の強化。
6:分岐3
4濱田の怪我で33阿部の抜擢、ビルトアップの強化とハイラインへの挑戦。
7:補強1
左利きの11宮崎の補強で、左SBの層を厚くし、ビルトアップを強化。
8:分岐4
分岐1~3&補強1の総動員で、松本戦に快勝した現在のスタイルの原型。
9:補強2
左利き高身長の22安部の補強で、CBの層の厚みと攻守での安定感を強化。
10:分岐5
サッカーの進化(変化)により、10宮崎が、輝きを取り戻し始める。
11:分岐6
2廣木の復帰、DFラインのビルトアップと守備の安定感が高まる。
12a:分岐7
31梅田が正守護神に、ハイライン裏のケアと、ビルトアップの軸に。
12b:分岐8
4濱田が、3バックの迎撃の役割を担う事で、3バックの完成度を高める。

他にも細かい変化はあるが、重要ポイントをまとめると、こういった感じとなる。文字数等で、伝える事ができなかった部分もあるが、アクシデントでさえ、チーム強化に繋げてきた。結果こそついて来なったが、シュート数で相手を上回る試合も多く、内容だけを考えると、昨シーズンとは比べ物にならないぐらい完成度は、高まっている。

資金力のあるチームと比べて、戦力的な部分で、劣る部分もあって、軌道にのるのが遅くなったが、岡山もようやくエンジンがかかってきた。ハイラインとビルトアップという言葉を連呼したが、これは、最終ラインでの攻守でのミスというのは、失点に直結するリスクが非常に高くなるが、驚くべきことに今季のここでのミスは、13金山 隼樹のフィードが相手選手に当たったシーンぐらいで、基本的には安定していた。

DFラインのビルトアップに関しては、岡山の武器で、それによってハイラインを布いても大きく崩れない。中央の攻撃に関しては、質の高い選手を近くで起用し、違いをみせることができるようになった。中央攻撃が良くなった事で、サイドでも形が作れるようになった。ハイラインと、距離感を意識したスペースケアで、対戦チームをゴールから遠ざけて、失点せず、ボール奪取を高い位置から、相手の弱い所を突いて攻めることができている。そうしたサッカーが、京都にどこまで、通じるか楽しみである。


「京都戦の注目ポイント」
・高い質を誇る京都の主軸選手に対して、粘り強く対応をする。
・中盤の展開力を制限し、前線の3枚を活用したピッチを広く使わせない。
・中盤の中央で、京都の中盤と、岡山のアタッカーのどちらが主導権を握るか。
・勝敗を左右する先制点の奪取、先制された時の戦いが、改善されているかどうか。

6、 後書き(ベストショット&MOM)

今節のベストショット

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ゴールシーンが3シーンもあったが、撮影失敗。自己採点は、得点が撮影できなかったので、0点に近いが、6喜山 康平の奇麗なシュートモーションが分かるショットがとることができたので、個人的に満足している。Twitterも投稿していたので、ゴールしそうと慌てて、起動したが間に合わないというシーンもあった。この辺り、試合展開を読めるようになりたい。

アンケート結果

まずは、アンケートへのご協力有難うございました。83票も投票を頂けて嬉しく思います。今後とも機会があれば、またアンケートを実施したいと思いますので、その際も、アンケートに協力して頂けると、嬉しいです。


総評数:83票
14上門 知樹:7票
31梅田 透吾:71票
6喜山 康平:4票
5井上 黎生人:1票

ゴールを決めた7白井 永地や27木村 太哉といった選手も候補に入って来るとは思いますが、Twitterの選択肢の上限のため、選択肢にできませんでした。コメント欄に投稿という形にしましたが、やはり、個人が特定されてしまうので、投票は難しかったと思いますので、選択肢としてあれば、それなりに票が集まったかもしれないですね。

それでも31梅田 透吾に71票も集まり、文句なしのMOMであったと思います。今後の活躍が楽しみで、20川本 梨誉と共に、清水から育成期限付きでの加入。恐らく、清水に戻っていくと思いますが、昨季のポープ・ウィリアムのように、チームをプレーで、引っ張って欲しいです。もしかすると、チーム事情により延期の可能性や逆に打ち切る可能性もあるかもしれませんが、現状は、岡山のキープレイヤーとも言える活躍であったので、今後は、軸としての活躍に期待したいですね。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

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URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6814205079030075393


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