2022 J2 第41節 Home
ファジアーノ岡山 vs ブラウブリッツ秋田
自動昇格が、完全に消滅したファジアーノ岡山。本来であれば、失意で落ち込んでしまう状況である。しかし、両クラブのサポーターによって、作り出された独特の雰囲気が、選手や監督の前に進む勇気へと繋がった試合となった。
試合後に、対戦相手のクラブへの敬意を大事にしている秋田の姿勢は、この試合の敗者であるサポーターやチームにとって、救われる部分がある。こういった気持ちを岡山サポーターである私としても大事にしたいと思う。
1、同じ土俵
両チームともロングパスを主体としたサッカーを選択した。ただ、細部に目をやると少し違う。岡山が、ロングパスを入れる前に、良い形(パスコースを開ける)というボール保持を織り交ぜるのに対して、秋田は、ボール奪取後すぐにロングパスを入れていく。
この段階で、岡山の方がやや人数をかけて前進しているのに対して、秋田は失点のリスクを最小限にするように、ロングパスから繋がったときに人数をかける。もしくは2トップだけで崩せる時に、そのまま攻めるという2つの狙いであった。
そこに対して、岡山は人に付く人とスペースをケアする人で、人数をかけて対応することで、巧く守ることが出来ていた。ただ、そういった手堅い守備を敷く岡山に対しても、秋田がフィジカルを活かしての仕掛けで局面を打破し、強烈なシュートを打って、岡山のゴールに迫るシーンもあった。
ただ、両チームとも集中力が高く、前半でスコアが動くことはなかった。その中でも23ヨルディ・バイスは、特に集中力が高く、止める蹴る際に何気にないプレーに、一工夫入れることで、大観衆の雰囲気を楽しむようにプレーしていた。
2、選択の間違い
後半に入ると強さに巧さのあった岡山が試合を動かした。ここまでの試合で、無得点であったが、唯一無二の攻守の関与ができる27河井 陽介が加入後初ゴールを決めた。的確なポジショニングや止める蹴るの高い技術力、明解な状況判断。こういった部分では、本当に素晴らしい選手で、ここで決める事ができたことに運命的なものを感じて、勝利がぐっと近づいた。
そして、高さ、強さ、速さのあるチームに対してもサイドからの揺さぶりは効果的であったと感じたゴールであった。シンプルにロングパスを入れて行くだけでは崩せない堅さが、秋田にはあった。先制点を決めた時には、この堅さをより感じる展開になるとは夢にも思ってなかった。
岡山は、ここで、カウンタ―に絞った戦い方にシフトしていれば、勝利はかなり近づいた試合であった。しかし、岡山の意識は前にあった。先制したことで、気持ちが強くなったのか0-0の時より、より攻撃的に出る事を選択してしまった。実際にチャンスこそ作れていたが、それ以上に秋田の鋭いカウンタ―を受けるリスクも高くなる。
岡山としては、勝利しなければ、自動昇格の可能性が消滅してしまうので、1-1になった時には心理的に前掛かりになってしまう。そう考えると、勝利だけを考えると、追加点を強く狙うよりは、守りを固めて、カウンタ―に絞った方が堅実であった。
しかし、それを選ばなかった事で、高速カウンタ―を受けて29齊藤 恵太の異次元のスピードで、DFラインを突き破られると、そのまま強烈なシュートをゴールに叩き込まれて、同点に追いつかれてしまった。まだ、時間があったので、ここから勝ち越せる可能性を残してくれると信じていたが、その1点は、遠かった。
何故、得点できなかったのかというと、岡山の得意のセットプレーでの高さの優位性を秋田に対して、作れなかったことと、同じロングスローを武器にしている秋田ということで、岡山のロングスローに対しても免疫があったこと。多くのセットプレーやシュート機会があったが、最後まで岡山は、崩せないでいると、終了間際に、岡山の今季の失点パターンであるサイドをスピードを活かして、突かれてクロスで失点するという形で失点。
ここから2点を返すことは、事実上困難となった。最後まで攻める姿勢を見せるも、今季初の声出し応援と、1万2000人の大観衆の後押しを活かせず、岡山は横浜FCの結果を待たずして、自動昇格の可能性は潰えてしまった。
ただ、声を出せることで、チームをプレーオフに向けて、勇気付けることができる試合となった。最後の試合は、消化試合となってしまったが、プレーオフに向けて、新潟を破って連勝中の東京Vとの試合という事で、手の内を見せない範囲で、次に繋げる試合として欲しい。
3、終わりと始まり
6喜山 康平、17関戸 健二といった岡山歴の長い選手が、岡山を去る事となった。18斎藤 一樹や2廣木 雄磨、11宮崎 智彦といった選手達も退団するが、やはり6喜山 康平、17関戸 健二は、古参の選手で、特に私もJFLから応援しているが、それより前のサポーターにとっては、寂しく感じる方も多いのではないだろう。
私もこの試合の開始前に、色々と想いが溢れ出し、泣きそうになっていた。試合が始まると、選手の力強いプレーを前に、試合に引き込まれた。結果こそ、残念であったが、6喜山 康平と17関戸 健二の想いは、しっかり次の世代へとバトンが渡されていて、敗れはしたものの岡山らしさと、新しい岡山らしさは、そこにあった。
試合後に木山 隆之 監督の「やりますか?」昇格できるかどうかは、自分達の手の中にある。それは険しい道であることは、ここまでの岡山が、プレーオフに挑戦するもできなかったシーズンが、ほとんどであったことからも感じる。
喜山 康平が語っていた「自分は去る事になるが、J1昇格という経験をファジアーノ岡山ファミリーに経験して欲しい。」という趣旨の言葉。練習での貢献しかできない状況であっても、全ての選手がJ1昇格に向けて、練習から一丸となって戦えているからこそ、チームは強くなる。
これは、以前のフォーカスで触れたことでもあるが、試合に出ている選手だけではなく、ファジアーノ岡山に関わった全ての方の力が、ここまで岡山を押し上げることができている。そういった意味で、6喜山 康平の存在は、今季も大きいシーズンであったと思う。
東京V戦を含めて、4試合勝ち抜く事で、J1昇格を勝ち取って欲しい。17関戸 健二が、毎試合プレッシャーで毎試合怖ったという試合。サポーターの声が、存在が、選手を後押しできるのであれば、可能な範囲でスタジアムに足を運んで、選手を後押ししたいという気持ちが沸き起こる。
残り試合、厳しい試合となるが、最後まで全てのファジアーノ岡山に関わる方々と共に今季の悲願であるJ1昇格を成し遂げる選手や監督の姿、チームをサポーターとして目の前でみたい。今は、そういった気持ちしかない。
今後を戦う上で、秋田の魅せた自分達のサッカーへの揺るぎない自信。そして、対戦チームへのリスペクト。岡山もこういった気持ちを持って、苦しい試合が待っているが、戦い抜いて欲しい。岡山は、負けはしたものの秋田には、勇気を貰った試合となった。
秋田のように岡山も、ここから「4連勝」して昇格して欲しい。東京V戦は、消化試合でないという気持ちで、しっかり戦って次に繋げて欲しい。
4、写真紹介
久々に採用されたアウェイサポーターのエリアを狭くする対応。ただ、秋田の方もこれだけ来てくれて岡山サポーターとしては、嬉しい。「ひたむき×全力=秋田」岡山も近い部分もあり、こういった気持ちは、岡山サポーターであるが、秋田のサッカー、秋田のクラブが好きな理由でもある。いつか、秋田が、本当にこのサッカーで、J1昇格できるのではないか。そういった夢を抱けるクラブの1つである。
椅子を活用が、岡山で最もうまい選手。悪魔の発想。
岡山もプレーオフを勝ち抜いて輪になりたい。
こういった気持ちは、大事だと思う。これからも続けて欲しい。
特別な言葉を語っていないのかもしれないが、チームとしてこういった場を設けたことに42節を戦い抜いた後のステージがあることを強く感じた。
シーズン途中から岡山所属の選手になったが、今まで所属した歴史がなくなる訳では無い。岡山の選手であり秋田の選手でもある。岡山の選手になることで、その選手の血も岡山に加わり、岡山は強くなっていく。そして、逆に岡山から去っていた選手の功績や遺したものは、チームが消滅しない限り残り続ける。本当に小さな1つ1つの事を次のチーム、次の世代へと語り継がれていく。岡山としては、残り試合を4勝するためにも34輪笠 祐士の力は必要である。秋田の強さを感じた試合だからこそ、34輪笠 祐士の力の源になる試合になったかもしれない。残り試合の34輪笠 祐士の活躍に期待したい。
飾らない男である17関戸 健二。等身大の17関戸 健二の言葉を聞けてJFLからのサポーターである私にとっては嬉しかった。寂しくなるが、次のステージでの活躍を信じています。いつか岡山に戻って来て欲しい。
独特の拘りとユーモアが溢れるトークが昔から好きだった。JFL以前からのサポーターにとっては、想い入れの深かった選手ではないだろうか。正直、語り切れなかった部分こそあるが、喜山 康平の言葉には、引き込まれた。もっとしんみりしてしまう事を想像していたが、喜山 康平の言葉からは、前向きな言葉で、逆に勇気を貰った。
動じないというか、次に向けての気持ちを強く感じられた。今季の岡山は、本当にタフであるのは、木山 隆之監督の存在が大きいことは間違いない。
岡山がJ1という景色をみることができるのか。もうすぐ、そこに向けての本当の戦いが待っている。
文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・Photo=Masaaki Sugino
アディショナルタイム(おまけ)
ファジ造語
参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー
は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777
代表作
2021ファジアーノ岡山にフォーカス46
J2:第42節:ファジアーノ岡山 vs ジェフユナイテッド千葉
「有難う有馬さん、有難う椎名さん、有難うファジ」
は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n511a1b501907
筆者紹介