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2021ファジアーノ岡山にフォーカス13 J2:第10節:岡山vs北九州(Home) 「20川本 梨誉の評価・改善の見えた中央の厚み・岡山の目指す得点の形」


1、 前置き

待ちに待ったホーム初勝利。多くのサポーターは、遅くなったホーム初勝利という認識であると思います。昔は、勝ち点3が、果てしなく遠かった。そう考えると、サポーターの岡山に対する認識の変化を感じ取れる意識の1つと言えるかもしれません。果たして、J2昇格元年の勝ち点3の重みと、今日の勝ち点3は、同列と考えて良いのだろうか?

やはり、トータルの勝ち点から考えると、重みはやはり違って来る。とは言え、目指す目標を考えると、勝ち点3は、重みが増すという考え方もできる。連勝すれば、勝ち点3自体の数字上は、軽くなるかもしれないが、順位上では、重いものとなる。これは、昇格を目指す上でも、残留を目標にする上でも、重たい勝ち点と言える。

現状の岡山を考えると、昇格を口にすることも難しいぐらいの差が開きつつある。むしろ、この試合で北九州に負けていれば、19位であったという事を考えると、試合を戦う上で、前節の様に焦りとなって、プレーやサッカーの精度を落としてしまったかもしれない。そういった意味では、非常に価値のあった勝ち点3であった。

前回のホームでは、ホーム初得点。今節では、ホーム初勝利。遅くなった初続きだが、ホームで勝てないという呪縛から解き放たれたので、ここからの逆襲に期待したいところですが、風下とはいえ、決定機を決めきれず、追加点を奪えなかったという課題もしっかり残す辺りが、逆に岡山らしい。

また、北九州の10番である高橋 大悟が、ピッチでプレーしている中で、10宮崎 幾笑は、リザーブ入りこそしたが、出場機会がなかった。開幕前の期待を考えると、あまり見たくない姿と言える。何より、本人も悔しいのは、間違いない。10番の出来は、今後の岡山の出来をも左右する事である事間違いなく、チームとして、巧く活かして欲しい。

もちろんチームとして、勝利して重ねる事が一番である事は間違いなく、限られた戦力を限られた時間と枠で、どのように起用していくのか。どう戦って行くのか。全権は、有馬 賢二監督にある以上、選手の良さを引き出すことで、重みのある勝ち点をしっかりチームへ引き寄せ、シーズンを少しでもいい順位で、走り抜けて欲しい。それでは、待ちに待った今季のホーム初勝利の北九州戦を振り返っていきたい。

メンバー:2021:J2:第10節vs北九州(Home)

2、 20川本 梨誉の評価

2種の記事で、中央でのプレー時間の必要性を訴えてきたが、この試合の20川本 梨誉は、中央を過剰に離れすぎず、多少狭くても留まる事で、15山本 大貴の動き出しを引き立てた。勿論、サイドに流れるプレーもあったが、ある程度15山本 大貴にスペースを突く動きを任せて、中央でシュートを打つことや、キープしてのチャンスメークを意識してプレーしていた。

20川本 梨誉の良さがこの試合では、2,3度があったが、囲まれてもキープするだけではなく、突破する抜群の足元の巧さと、体を寄せられるプレーや、難しい体勢でのテクニカルなプレーでも簡単に倒れない体幹の強さを感じた。我慢して起用すれば面白い選手という「我慢」という言葉すら不適切かもしれないぐらい、狭い所でもしっかり仕事できる能力を持った選手だと感じた。

倒れない上に、巧い。CF以外のポジションでもプレーできるのは、その辺りがしっかりしているからであると感じた。FWとしてもバランスの良さは、将来性があり、武器と言える。局面を打開して突破できると大きいという場面を、何度か巧みなボールタッチですり抜けたので、FWの選手が、怪我から復帰してきた時に、トップ下で起用しても面白いかもしれない。

本当にどこで起用しても一定の仕事をしてくれるのではないかという期待を持てた。運動量も十分有り、しっかりプレスや寄せといったプレーも怠らず、精力的に前線から守備をできていた。そういった意味で、岡山スタイルに早くも適応を見せ、戦力としての序列は、この試合で、確実に前進した事は間違いないが、後は、ゴールやアシストを決める事で、名実共に、岡山の中心に成り得る可能性を秘めたポテンシャルを感じた。

課題というか今後期待したい事は、周りの選手に使って貰うフリーランの質や、周りの選手の動きから意図を察して、そこを的確に使うという部分での連携を深めて行く必要性を感じた。局面で良いプレーは多かったが、連動できているかというと、まだまだである。10宮崎 幾笑もチームの中で、自分の良さや、味方の良さを引き出すという部分で、チームとしての機能具合は、まだまだであったので、この2人のどちらかが、出場機会を多く掴めるのか注目したい。

3、 改善が見えた中央の厚み

ここ数試合は、サイドでチャンスメークしても中に人数が足りないという試合が続いていたが、両サイドの27木村 太哉と14上門 知樹が、両サイドで、チャンスメークするだけではなく、逆サイドの崩しを見せた時に、中に入っていく動きも意識していた。27木村 太哉のプロ初ゴールもまさにそういった形から生まれた。このシーンに限らず、サイドのスペースを有効に使い、そこから崩し多くあったので、狙った形であると思う。

ただ、自陣の両サイドの位置であるSBの所では、16河野 諒祐と41徳元 悠平の所で詰まる事が多かった。北九州がある程度、ロングパスを必要性最低限にして、繋ぐ意識が高かったので、ピッチを広く使おうとしたときに、プレーエリアが、重複した面も大きかった様に感じた。ある程度、持ち上がった時に詰まる事が多くても、SBの定位置付近でこれだけ詰まったのは、今季初である。その分、その後ろには、スペースが空きがちで、そこに繋げた時は形を作れるシーンもあった。

また、北九州のサイドの選手が、高身長の選手で、アジリティ面で、難があったのに対して、こちらのドリブルの得意なSHだったので、突破での攻撃を加速させることができた。そして、風上であった事も攻撃を加速させた。群馬戦の様にシュート0本には出来なかったものの長短のパスを織り交ぜつつ、腰を据えた攻撃が出来ていた。

距離感を大事にしてきたチームで、ロングパスを多用する方法は、嵌れば強かったが、サイドを突けても、そこに付いてくる選手がいなければ、成り立たない攻撃であった。状況に応じて使い分かる事で、攻撃に厚みが生まれて、守備のバランスも多少改善した。前節に今季の2連敗を喫したが、原点に立ち返るという意味では、巧く糧にすることができた。

4、 岡山の目指す得点の形

ここ数試合は、失点シーンにおける対応について触れてきましたが、今節では、この得点の良かった所を振り返っていきたいと思います。TV放送があったので、そこを見ながら確認して欲しい。DAZNでも勿論可。公式のハイライト動画の流れの前にも重要なプレーがあったので、少し前の流れから確認していきたいと思います。

【公式】ハイライト:ファジアーノ岡山vsギラヴァンツ北九州 明治安田生命J2リーグ 第10節 2021/4/25
0:35秒から
URL:https://youtu.be/qXM9bpFBwWw?t=35


まずは、浮き球のボールを20川本 梨誉が、フィジカルの強さを活かして収めると、上述した巧みなボールコントロールで、後ろ向きで、2人に囲まれた状況から、前を向いてある程度自由にプレーできる状態を作りだします。そこに対して、ここも上述した15山本 大貴のスペースへの動き出しで、パスを呼び込むとそこに正確なスルーパスが20川本 梨誉より配給されます。

15山本 大貴は、ある程度深くまで運びますが、中に人数が揃っていなかったので、後ろに下げてやり直します。フォローに行っていた14上門 知樹が受けますが、前に向くプレーを選択しても得点までは難しいと判断し、無理せず再びバックパスを選択。そこで受けた16河野 諒祐は、前線の右サイド付近の15山本 大貴の傍で少しだけ中央寄りの20川本 梨誉に向けて縦パスを入れます。

20川本 梨誉は、DFライン手前のDFの後ろから、通常とは逆の裏抜けならぬ前抜けの動きで、ノーマークでの受ける事に成功します。細かいプレーですが、大きなプレーで、北九州の選手が慌てて寄せてきますが、20川本 梨誉の周りで衛星の様に動く、15山本 大貴に預けます。

15山本 大貴は、横向きで受けますが、その目の前の16河野 諒祐の動きを察知するや素早く向きを変えて、瞬間的に好機の匂いを嗅ぎ取とったのか、迷いなく自信を持って、ゴルフのパターの様に丁寧にスペースへ、左足でスルーパスを配給。狙った所で、パスが止まるかの様に正確であった。

そのパターの先、いや、パスの先にトップスピードから減速しつつ、追いつこうとする16河野 諒祐は、中を一度しっかり確認すると27木村 太哉を認知。その後、ゴールに対して少し逆方向へ走りながらであったので、全身全霊を籠めて右足を振り抜き、自身は倒れながら27木村 太哉へ通る少しマイナス気味のクロスを入れる事に成功します。

27木村 太哉には、マークが付いていましたが、駆け引きする中で、ゴールが来た時にパワーを持って一歩前に出ると、ゴールを見ずに、何も難しい事を考えない、まさに無我夢中で振り抜いた強く蹴る事だけを意識したシュートは、地を這いながらゴールに吸い込まれる。チームの勝利の執念を一心に受けて、決めることができたと言える素晴らしいゴールでした。

「縦パス→ポストプレー→スルーパス→裏抜け→中を確認→バックパス」などの作業を繰り返す事で、ゴールを狙えると判断した時に、次のアクションを起こす。そういったプレーの判断が、的確であった事から生まれたゴールであったと思います。上で紹介された流れのプレー1つ1つが大事で、点と点が線でしっかり繋がって、生まれたと言える形で、岡山のやりたかった攻撃である事は間違いない。

10節目に、それが出来たという事は、大きな意味を持つゴールと言え、今後は、両サイドから中に入れて行く形を増やしつつ、中の人数を増やしていく。基本方針は、こういった攻撃となる。また、サイド攻撃を展開する上で、20川本 梨誉のポストプレーは、非常に有効であった。速い展開の攻撃を行う上でも、しっかり止まる、落ち着く時間を作る事で、連動した動きを可能とする攻撃であった。

20川本 梨誉のライバルである32福元 友哉は、プレーの精度の部分と、フリーランの向上で、ボールをより活かすプレーができるかどうか。10宮崎 幾笑は、フィジカルの弱さを隠すようにボールを収めて、キープからのドリブルや裏抜けで、活かすプレーや活かされるプレーで、どれだけ前を向いてプレーできるか。ここから信頼を掴むのは大変だが、この2選手の活躍にも期待したい。

5、 総評(後書き)

ホーム初勝利。27木村 太哉のプロ初ゴール。公式動画でも伝わって来たが、あの喜ぶ姿は、本当にスタジアムが1つになったシーンであった。ホームで、今まで勝てなかった。なかなか得点を獲れなかった。そういった事を忘れられる瞬間。この瞬間を待っていた。27木村 太哉のジャンプしたシーンや、選手が祝福する光景。やっぱり、格別。

今回は、良かった点を中心にここまで述べてきましたが、やはり、今までの試合では、こういった良かった形に近い形を作れた中で、なかなか中で合わせる事が出来なかった。これは、紛れもない事実です。チームには、しっかり分析した上で、こういった形を再現するために何が必要か。また、出場機会の限られている選手や、持ち味を発揮できていない選手を、どう活かすのか。怪我人が多い状況で、そういった事が必要となってくる。

ホームは勝利こそ出来ましたが、まだ降格圏が後ろで、厳しい試合がつづきます。ただ、やはり27木村 太哉の初ゴールという日、ネガティブ要素を控えめの日があっても良いですよね。逆にポジティブという応援したくなる話をして今回のレビューを締めたいと思います。

2018シーズンの仲間 隼斗の岡山での初ゴールが11節で、最終的に8ゴール。27木村 太哉は、それより1節速い10節で、岡山初ゴール。ちなみに、2020シーズンの14上門 知樹の岡山での初ゴールも奇しくも10節で、最終的に、7ゴール。27木村 太哉選手にも、同数以上のゴールに期待したい。

6、 今節のベストショット

不定期の項目になりますが、良い写真が撮れた時に、こちらで、紹介したいと思います。ツイッターでも紹介しましたが、27木村 太哉の岡山での初ゴール。豪快に振り抜いた反動によろめく27木村 太哉のシュートが、GKの横を抜けて、ゴールラインをボールが丁度通過したシーンです。いつ見ても良いですね。なかなかゴールシーンを撮るのは難しいですが、またチャレンジしようと思います。27木村 太哉選手。初ゴールおめでとうございます!

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文章・図版・画像=杉野 雅昭
text・plate・photo=Masaaki Sugino

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