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2021ファジアーノ岡山にフォーカス41 J2:第37節:ヴァンフォーレ甲府 vs ファジアーノ岡山 「影響の中心」

1、 前置き

 岡山が、ターンオーバーしているという点と、怪我人が若干名出ていたという点、そして、甲府に前半戦に3失点をしての大敗している点。この試合も厳しい試合になるだろうと、誰しもが思っていた。いや、実際に厳しい内容ではあったが、試合経過に関すると意外なものであった。私以外も、その展開には、驚いた方は、多かったのではないだろうか。

 その甲府との初対戦は、岡山がJ2昇格した元年のシーズンで、その時は、開幕を待ちわびるサポーターも多く、開幕の試合では、引き分けが多いという事で、話題になっていた。結果は、実際にそのジンクス通り、引き分けに終わった。甲府は、J1経験もあり、当時から昇格候補の一角という事もあり、引き分けでもその結果に岡山サポは、歓喜したものである。

 さて、その甲府であるが、長いシーズンの間、J1で戦っていた時期もあったが、近年は、上位に付けながら、J1に届かないシーズンが続いている。一方で、岡山は、プレーオフがコロナの影響でなかったとはいえ、その6位が遠いシーズンが続いており、J1という声は次第に小さく、人によっては停滞どころか、低迷していると捉えている人もいるかもしれない。

 そういった両チームではあるが、甲府は、京都と磐田の勢いが止まらないという事で、プレーオフがない今季での昇格は、ほぼ絶望的と言っても良が、岡山も昇格争いをしていた時は、可能性がある限りという感じで勝ち点計算もしていた事を思い出す。その甲府に対して、岡山がどういった戦いをしたのか、まずは、メンバーから振り返っていきたい。それでは、よろしくお願いいたします。

 岡山は、19ミッチェル・デュークが、出場停止からの復帰、怪我明けの7白井 永地と17関戸 健二が、久々のスタメン。ターンオーバーで、4濱田 水輝、24下口 稚葉も久々のスタメン。前節から5人も変わった事で、細かい所でのサッカーの変化が出るのは、必須ではあるが、堅守速攻の4-4-2を志向したサッカーで、甲府に挑んだ。

 迎え撃つ甲府は、4人のメンバー変更があった。41長谷川 元希→15中村 亮太朗、24山田 陸→6野澤 英之、23関口 正大→2須貝 英大。この変更により、17荒木 翔は、左から右サイドに移っている。3-4-2-1をベースとした、守備時に5バックで、しっかり攻撃を吸収する。技術だけではなく、強さを併せ持つ総合力の高さが、甲府の武器。

2、 電光石火の先制点

 立ち上がりは、スコアがあまり動かないのが、岡山の試合。甲府も守備が安定しており、1点を先にどうとるかが重要であった一戦。だが、意外にも前半の速い時間帯に、岡山が動かす。セットプレーの流れからで、FKを蹴ると見せかけて、近くの選手に出して人数が中に十分いる状態でクロスを入れて行く事で、シンプルに19ミッチェル・デュークの高さを使った得点であった。

 この得点での流れでは、ゴール前の人数をかけられる状況であったが、19ミッチェル・デュークのみで、19ミッチェル・デュークの高さを使うという狙いが強い攻撃であった。16河野 諒祐も、上手く1対1からで精度の高いクロスをあげる事に成功したが、攻撃での信頼は、16河野 諒祐は高いものであると感じたシーンであった。

 得点の少ない岡山が、先制点を決めるのも珍しいが、この試合ではそれだけではなかった。甲府が、失点で落ち着かない中での、ビルトアップのバックパスが少しズレてしまった事で、トラップに戸惑っていた所を、14上門 知樹が、ボール奪取するとゴールに向かって、快速ドリブル。最後は、GKをかわして、ゴールに流し込んで電光石火の2得点目で、リードを2点差に広げた。

 甲府としては、試合の入り自体は悪くなかったので、痛すぎる2失点であっただろう。その岡山の2点の内の1点目に関しては、岡山の工夫があったとはいえ、19ミッチェル・デュークの高さは、組織を凌駕するシンプル凄いゴールであり、岡山に足りなかったものではある。と、同時にそういった選手を編成にどう組み込んで行くのかというは、昇格を目指す上で、必用であると感じた。

 また、追加点も相手のミスではあるが、そういったミスを誘発する前からの守備というのは、岡山が、開幕からやってきたことで、ターンオーバーで、甲府の連携に若干の隙をあった所を見逃さず、しっかり奪いきった。チームとしての成長を感じた2点目の流れであり、そのチャンスで決めきった14上門 知樹の偉大さを感じた得点でもあった。

3、 ターンオーバー

 メンバーの変更をしているという事は、双方はいつものサッカーが出来ないという事である。甲府では、左サイドの17荒木 翔が、右サイドに移っている影響は大きい。単なるWBではなく、甲府のサッカーの要となる選手である。時には、CHとして中央の組み立てに関与するプレーや、純粋なサイドプレーヤーとしてのプレーもこなすマルチなタスクを担っている選手でもある。

 そうした選手のサイドの変更は、準備していても細かい隙が出ても不思議ではない。実際に、2失点目も左サイドの連係ミスからである。ただ、甲府は、前半に2失点して、動揺した事で、前半に、ちぐはぐして、カウンターを受ける事もあったが、ベースとしてある5バックの堅さというのは、時間を増すごとに安定していき、攻撃的な両ボランチも徐々に攻撃で、存在感をだせるようになった。

 やはり、メンバーと戦い方が変わっていてもサッカーの根幹は、変わらないと感じたサッカーを甲府は展開した。一方で、岡山は、どうであったのかであるが、90分で考えた時には、最後まで出来なかった事もある。31梅田 透吾の入った2CB+1GKの3を作るラインである。22安部 崇士に代わり、4濱田 水輝が最終ラインに加わった影響は、ここに出ていた。

 この試合で、31梅田 透吾が、最終ラインに加われたのは、5井上 黎生人と22安部 崇士のコンビのみ採用できるシフトである事が、分かった。そのために開幕から13金山 隼樹が、正守護神であったのも納得できる。31梅田 透吾が、加われないのは、4濱田 水輝の足元が不安定であるのが大きく、蹴る・止めるがしっかりしたCBでなければならない。

 持ち味を100%出せなくても、31梅田 透吾のポジショニングやセーブというのは、日本代表の権田 修一が加入するまでは、スタメン争いしていた通り、岡山で成長したのではなく、21歳にして高い完成度のGKという評価である。だから岡山で、成長したという評価は、個人的には違和感がある。それは、岡山でのほぼ完璧なデビュー戦のプレーを見た皆さんであれば、そこは理解できると思います。

 若い選手なので、成長したという表現を使いたくなると思いますが、例えば30歳のGKが来て、岡山で成長したという表現をあまり使わなくなると思いますが、31梅田 透吾は、若くしてそういった域に達している。それだけ、GKとして総合力の高い選手であると思います。逆に、13金山 隼樹の方が、繋ぐ意識が高くなり、成長しているように感じるぐらいである。

 22安部 崇士や11宮崎 智彦の加入により、2CB+1GKのビルトアップへの形が、岡山として出来る様になった事で、31梅田 透吾が出場できるようになったのも、今となっては、自然な流れであったと考える事ができる。さて、甲府は、チームの鍵となるWB17荒木 翔のサイドチェンジ、岡山は、ビルトアップの変化に触れてきたが、岡山については、次項で更に掘り下げる。

4、 中盤の薄さ

 もちろん、甲府が強いチームである事も大きいが、後半での中盤の薄さが目立つ試合となってしまった。岡山としても7白井 永地が怪我明けで、早い時間に下がり、17関戸 健二も、まだトップパフォーマンスとは言えない。26パウリーニョが途中から入って、更に24下口 稚葉をそこに回したが、落ち着かせたいポジションだが、そうできなかった。

 今季は、7白井 永地や6喜山 康平といった選手に、フル出場や連戦を続けさせることで、チームを落ち着かせる事ができたが、2季前は、6喜山 康平が、昨季は、7白井 永地が、終盤に満足なプレーが出来なかった。こういった積み重ねで、今季は、17関戸 健二、7白井 永地、6喜山 康平といった選手が、トップパフォーマンスとは言えない状態に陥っている。

 チームの肝と言えるので、致し方ない部分もあるが、ここのやり繰りは、来季も有馬 賢二監督が、指揮をとるなら改善していく必要があるだろう。28疋田 優人が、メンバーに名前が出てこないのも気になるが、中盤に関しては、攻守の厚みやチームの安定という観点から、岡山にとって大事なポジションであるので、来季は、ここの改善に期待したい。

 また、中盤の薄さに関してたが、やはり、3項で触れた通り、31梅田 透吾が、CBの間に入ってのビルトアップが出来なかった事も、実は大きい。他チームを見ていても、この3人で回す形を作るために、DHが下りてきて、SBを上げて行くというビルトアップするチームが多いが、ここを岡山では、GKが、やっているので、それだけで中盤が厚くなる。

 長い間、このスタイルで戦って来た岡山にとっては、これが出来ない事で、チームとしてのアドバンテージが失うことになる。イメージ的には、中盤もしくは、最終ラインの人数が1人少ないぐらいの影響がある。4濱田 水輝や13金山 隼樹がスタメンから遠ざかっているのは、このアドバンテージを維持するためであると、この試合では改めて感じた。

 とはいえ、31梅田 透吾クラスの選手には、清水から戻る様にと働きかけがある事を含めオファーは来る出だろう。この歳で、これだけ安定しているGKという事で、海外に挑戦して欲しいとも感じるので、J1で実績を残して欲しいとも感じる。岡山としては、来季加入が内定している谷口 璃成君の手本として、31梅田 透吾がいたらとも感じるので、強化部には、慰留に全力を尽くしてくれると信じるしかない。

 この2CB+1の形がシフト的にできなくなる5バックだが、中盤の個の力という部分で、安定感を保ってきたが、その中盤が落ち着かないという事で、3バックも安定しない部分は、やはり出てくる。今後を戦って行く上で、24下口 稚葉のCHでの初起用を含め、チームとして、底上げのチャンスを捉えて、1つでも上の順位を目指して欲しい。

5、 後書き

 正直、0-2となった時は、そのままカウンター狙いで、追加点を決めて、危なげなく勝利できると思ったが、甲府の猛攻が凄かった。岡山としても、隙があった部分もあるが、現状は、4項で挙げたような隙がある以上、こういった厳しいゲームが続くとは思うが、こういった苦しい時にチームを前進させてきたからこそ勝利することができ、成長を感じた1戦となった。

 相手のミスに助けられた部分もあるが、チームとしても7白井 永地や17関戸 健二の復帰を含め、良い所を巧く、結果や内容に繋げる事で、今季から来季に向けた戦いを残り試合で、見せて欲しい。今季も残り僅かなので、しっかり今の岡山を見て欲しい。中でも来季には、見えなくなる可能性のある2CB+1のビルトアップは、特に見て欲しい。

 余談ながら、2CB+1のビルトアップは、谷口 璃成君が、成長して見せてくれないかなと今から楽しみにしている。もちろん、その時の監督次第ではあるが、有馬 賢二監督が後どれくらい岡山で、指揮をとるのかは分からないが、J1を目指す上で、スタイルの一新ではなく、継続と進化できる監督を個人的には、希望する。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

ファジ造語

「ファンタジスタシステム」
 2トップに技術のある選手を据えて、中央にポジションをとる。中央を通そうとするパスコースを制限し、サイドへ出した所を狙う。そこを突破された後も、粘り強く守り、ボールを奪ったら2トップにボールを集め、技術のある選手が攻撃に移った時に、2トップの傍にいき、技術と創造性を活かして、ゴールに迫るやや攻撃よりの作戦。
「ミッチェルプレス」
 速さ・高さ・強さ・巧さ・持続力によって、19ミッチェル・デュークがプレスを繰り返して行く中で、攻撃的なMFが追随する中で、相手のパス回しの自由を大きく制限する。また、後方の選手もハイライン、中盤もコンパクトに保つ事で、高い奪取力を発揮する。ただ、チームとしての消耗も大きく、19ミッチェル・デュークの1トップ時しかできない作戦。
「勝利の方程式」
 リードした場面で、4バックから3バックにシステム変更し、重心を完全に後ろに置く分けではなく、中間に位置をとり、遊撃に専念しつつ、カウンターにより追加点を狙う。スペースを空けずに、岡山の守備時の集中力や献身性を活かし、守備にハードワークし、攻め手側のミスを誘発させて、時間を稼ぐことで、同点や逆転のリスクを小さくし、逃げ切る作戦。
「高低縦横の攻防」
 得点を狙う攻撃スタイルの属性の指標。9李 勇載と19ミッチェル・デュークが揃う事で、縦の攻撃と横の攻撃。どちらでも高い質の攻撃が可能となる。また、低い(グラウンダーの)クロスやパス、高い(浮き球)のクロスやパスの多彩な出し手も揃った事で、多彩な攻撃と柔軟性のあるチームスタイルが可能となった有馬ファジが目指す理想系の1つの形を感じさせる要素。
「守備は最大の攻撃」
 良い守備からの攻撃が主な攻撃パターンの岡山のチームスタイルを表現する言葉。岡山が意図した展開の時は、自陣でのプレー時間が短く、シュート数が多くなる。ただ、現状は得点まではなかなか繋げられず、攻撃は最大の防御と言えるぐらい質の高い攻撃ができない現状のチームが行き着いた勝負に徹する岡山の献身性が反映されたプレースタイルと言える。
「+1を作る3の原則」
 攻守のあらゆるプレーで、数的有利を効果的に作る事で、守備時にはスペースを空けない。攻撃時には、対応が難しい攻撃パターンを多彩化することで、守り辛くする。また、守備では危険なシーン自体を少なくするリスク管理、攻撃では、良い形を作るための迅速さ。こういった部分を最低でも3人で、そして第3の動きを強く意識したチームで戦うサッカー。

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