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2021ファジアーノ岡山にフォーカス40 J2:第36節:ファジアーノ岡山 vs アルビレックス新潟 「上を目指す上で」

1、 前置き

 正直な所、新潟は、相性こそ良いが格上というチームという認識で私はいる。それでもこの試合に勝てなかったのは、新潟の昇格への執念と、若手主体で、特にルーキーが多く高い士気であった事も関係していそうである。岡山としては、ポゼッションを志向としてくるチームに対しては、比較的相性が良いが、勝てなかったという事実をどう捉えるかという試合となった。

 相性の良さを活かして先制点を活かせず、どうして新潟に追いつかれたのか。その理由について、今回はフォーカスを当てて、この試合について語っていきたいと思います。まずは、メンバーについて、着目点を整理してから、この試合を振り返っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 岡山は、19ミッチェル・デューク欠いた所に、15山本 大貴を抜擢。6喜山 康平に代わり、48石毛 秀樹がスライド。48石毛 秀樹の所には、27木村 太哉が入り、久々のスタメン。リザーブには、17関戸 健二と10宮崎 幾笑が、戻って来た。38ブレネー・マルロスもしっかり名を連ねている。ここにきて、注目点の多いメンバーでの4-4-2で、上位の新潟をホームに迎える。

 新潟は、若手主体のメンバー。47三戸 舜介、23小見といったドリブラー達は、ルーキー。40シマブク・カズヨシに関しては、特別指定の選手である。他にも若い選手が主体である。その中に、元岡山の20島田 譲やベテランの35千葉 和彦。完全復活した28早川 史也といったメンバーを見ていると、新潟はJ1に戻る準備は着実に進んでいる将来性の感じるメンバーで、岡山の地に乗りこんで来た。

2、 対ポゼッション

 新潟は、いつも通りのポゼッションサッカーを展開してきた。岡山としてもそういったチームに対して、しっかり規制をかけて行くというのは、今季志向してきたサッカー。流石に岡山が、組織的に動いてハードワークしても、新潟に対しては、制限をかけることは難しいと思っていたが、前半に関しては、意外と効いていて、少し驚いた。

 新潟も、他のポゼッションチームの様にDHのどちらかが、落ちてきて、「3人」で、回す形。どちらかと言えば、体格の良い16ゴンサロ・ゴンサレスが下りてくる事が多かった。GKのビルトアップへの参加は、必用最低限で、高いラインの裏をケアする意識の方が高め。それでも、なかなかその理想系を岡山は、作らせない。GK参加型は、まだまだ少数派のようだ。

 岡山の新潟への対抗策は、15山本 大貴と14上門 知樹の阿吽の呼吸でのプレスは、このコンビが、チームナンバーとも言っても良い。行くか行かないかの判断が良く、全力で寄せて行く上に、回数も多い。その結果、14上門 知樹に関しては、消耗して終盤にいつも下を向いている所から上を向いて、自分を奮い立たせて、気持ちでゴールに向かう仕草を見せている。

 新潟は、ある程度は、SHの所まで運ぶことこそ出来ていたが、いつものようなポゼッションは、制限されていて、運ぶ事に苦労している様に映った。新潟の攻撃は、岡山の右サイドメインで、16河野 諒祐が、攻撃的に行く隙を突く攻撃が、主体となっていた。バランスの取れている11宮崎 智彦サイドについては、前半に関して言えば、岡山が、ある程度抑える事ができていた。

 そうした中、前半に先制点を決める事ができた岡山。41徳元 悠平のスルーパスとクロスの中間の様な絶妙なグラウンダーのパスから、15山本 大貴がダイレクトでのスルーパスに14上門 知樹が流し込んで、岡山が先制。前掛かりの相手のスペースを突くという意味では、理想的な2本のパスでの崩しでのゴールであった。

 このゴールシーン以外にも、岡山がある程度新潟を制限できた事で、何度かカウンターのチャンスを作る事ができた。また、27木村 太哉のドリブル突破も効果的で、やはり頼りになる。甘かったプレスの連動性も、この時期になると、流石にチームで、個と個が連動して、動けていた。チームとしても、27木村 太哉個人としても、成長が感じられた前半であった。

3、 急転直下

 不安がなかった訳ではないが、先制点を早く決めることが出来ていた事で、3バックに移行し、そのまま逃げ切れると、この時までは思っていた。ただ、現実は、そんなに甘くなかった。14上門 知樹が、ロングシュートの決定機を逸機した後ぐらいであった。この時は、2点目を獲れればという気持ちの方が強かったが、その展開は、岡山の苦手なプレーによって打ち砕かれた。

 それは、ゴール前で、人数がいても小刻みなドリブルで、無力されてシュートを決められるという形。今季こそ少なくなっていたが、中盤のバランサー6喜山 康平や7白井 永地といったスペースや人数を維持する守備のキーマンを怪我での欠場の影響が出てしまったシーンとも言えるが、それでもバイタルで無く、ペナルティエリア内でのドリブルなので、7谷口 海斗が、凄すぎた。

 確かに、昨季のJ3得点王の7谷口 海斗のドリブルが、凄かったが、岡山としても徐々にこの項の冒頭であげた不安の影響が出始めていた。その不安とは、やはり、後半に先手を取れる、前からの守備を維持する交代カードの選択肢が少ないという点にある。この試合の26パウリーニョにしても普段であれば、交代の優先度は、高いが、この試合はフル出場である。

 17関戸 健二の交代先は、本来であれば26パウリーニョにしたいが、彼を外してしまうと、守備の強度が著しく落ちてしまう事は確実であった。この試合のゲームキャプテンでもあるし、外したくても外せない。この点だけ見ても、岡山の苦悩というのが見て取れる。前線に関しても、献身的な守備が売りのFWの交代選手が不在で、運動量を維持するのは、困難であった。

 その分、20川本 梨誉や38ブレネー・マルロスといった技術に優れるストライカーが控えているが、本来であれば、得点が欲しい場面で、非常に頼りになる選手達である。ベストメンバーの時に比べて、狙い通りの交代というよりは、今いるメンバーでの最善の手で、対応していく事で、同点逆転を狙った岡山であったが、最後の辺りは、新潟に押し込まれる展開に次第になっていた。

 ハーフタイムに動いた新潟のアルベルト監督の積極的な交代が、新潟の同点ゴールを生んだ。前半の攻撃の主な突破口であった新潟の左サイドの2人交代して、フレッシュにした新潟。この交代は、左サイドから攻めの加速ではなく、チームとして、運動量を維持し、全体的に良くしようという狙いの交代であった。

 この交代により、左だけではなく、右からの攻撃の比重を増えて行った。次第にではあるが、新潟のSHまで運ばれる回数も増えて、両サイドからの攻撃も迫力が増す。これは、前述による岡山の運動量が落ちてきて、そこに対する岡山の明確な答えがなかった事にある。この辺りに、DHの怪我人が多発している岡山の苦しさを感じた。

 次第に、外からゴール前へのクロスやパスが、どんどん仕掛けられて、守勢になっていく岡山。この時には、岡山が、プレスで、新潟のポゼッションを制限しているとは、とても言えなくなっていた。こうなれば、流石に新潟ペースであり、岡山としても流れを戻したかったが、最後まで流れを引き寄せる事はできず、そのまま試合は終了となった。

4、 連動性に明暗

 試合終盤に、岡山は、流れこそ新潟に渡していたが、決定機がないわけではなかった。久々に出場した17関戸 健二が、チームとして間延びして、お互いにオープンになりそうな展開の時に、攻守で気の利いたプレーで、守備では寸前の所で、危険の芽を懸命に消し、攻撃では、効果的なスルーパスやパスで、シュートまで行ける形作りが出来ていた。

 まだまだフィジカルは、トップパフォーマンスとは言えなかったが、17関戸 健二の良さは、運動量と独特の感覚であり、走れる天才肌と言える選手。この試合では、その良さを存分に発揮した。存在感という意味では、過去最高レベルに、目立っており、チームとしての苦しさを物語るものとなってきたが、それ以上に、17関戸 健二が、岡山で長年やってきた経験が活きていた様にも感じた。

 20川本 梨誉や38ブレネー・マルロスに関しても、長めの出場機会であったが、20川本 梨誉は、足下にボールを受けたがって、そこから細かいボールコントロールで、無力化してから次のアクションに移そうという意識が高かったが、普段の練習から技術に優れるハイレベルの環境での新潟の選手には、なかなか通用せずに、ボールロストするシーンが多かった。

 ただ、20川本 梨誉のボールロストの特徴は、選択を迷ってボールロストするというよりは、何か面白い事をしようとしてという意識も感じられる。こういったミスを恐れないプレーというのは、成功すれば、ビックチャンスになる。ただ、そういったプレーが結果に繋がらず、この試合の20川本 梨誉に対して、ミスが多かったという印象を持っても不思議ではない内容であった。

 38ブレネー・マルロスもやはり技術的な選手で、機動力という部分ではやはり重そうであった。これは、コンディションが悪いというよりは、質と強さで勝負するタイプであると感じた。良くなるとすれば、やはり連携を高めて行くというのが、一番である様に感じた。残念ながら、この試合では、明確な存在感というのは、示せなかったように思う。

 ただ、基礎技術に関しては悪くないし、体格もしっかりしていて、フィジカルも強そうなので、チームの中で、互いに良さを引き出せる連動プレーが増やしていく事ができるかどうかが、今後の活躍のポイントとなりそうであるが、残り試合を考えると、少々厳しいかもしれないが、ゴールやアシストが見たいというのが、正直な気持ち。

 一方で、10宮崎 幾笑も復活した1人。48石毛 秀樹とのコンビネーションが見たかったが、この試合では、一緒にピッチでプレーすることは無かった。それでも訪れた終了間際の決定機では、GKに寸前でカットされてしまった。こうした最後の一歩というのが、このまま破れず終わるのか。10番として、その辺りの期待に残り試合で少しでも応えて欲しい。

 そして、途中交代の選手の中で、17関戸 健二と同じぐらい良かったのが、24下口 稚葉であった。過去には、クロスを挙げる事が躊躇して、チャンスを作るどころか、ピンチを招いてしまった事もあったが、この試合ではドリブルで仕掛けてからの可能性の感じる精度の高いクロスを何度も配給していた。プレー1つ1つを見ても勢いを感じた。こういったプレーを見ても出場機会が遠のいていた悔しさからか、気迫を感じた。

 この様に、岡山は、後半に交代カードによって、勝ち越しリードを狙って果敢に戦ったが、個として良い場面があってもチームとしては、少しバラバラであった後半となった。一方で、新潟は、ゴールこそ個人技ではあったが、支配率とシュート数を見ても10対11人で、サッカーをしているのではないかというぐらい内容で、岡山のゴールに迫っていた。

 実際に、岡山は、ペナルティエリアに何度も侵入を許し、チームとして危ない場面を何度も作られた。この辺り、岡山としては、修正というよりは、状態を高めて行く。そちらの意味合いが強い様に思う。チームとして前後半で、明暗がくっきり。残念ながら総合力では、順位通りの内容に終わってしまったというのが、トータルでは見た率直な感想と言える。

5、 後書き

 相性の良さを活かしきれず、チームとしての底力の差を感じたのも事実ではあるが、それでもチームとして、ポゼッションサッカーに対して、前半に関しては、しっかり抑えて、追加点を奪えていれば、勝てたというサッカーが出来た点は、誇らしく思いたい。この辺り、今後の試合というか、来季に向けての手応えを感じる所ではある。

 ただ、新潟は、期限付き移籍の選手に頼らず、自前の選手や完全移籍で獲得した選手主体で、ルーキーも活躍していた。チームの骨格という部分では、やはり歴然たる差があった。岡山としては、そうした新潟に対して、良く戦ったと思うし、こうした下部組織を含めて、自前選手で、しっかりした骨格を作れるチームというのは、目指すべき所である。

 勝ち点2を失った試合と感じて、悔しがる試合というよりは、新潟との結果と内容以上の差を感じたし、ここをどう埋めて行くのか、来季に向けての楽しみではある。個人的には、有馬 賢二監督続投で、赤字覚悟の編成で、J1を目指して欲しいと思っている。その部分を含めて、毎年この時期に言っているが、このメンバーを見ることができるのは、今季だけ。

 書いている時に、メンバーが発表されたが、サポーターとしては、メンバーが、どうなるかだけでも毎試合楽しみであり、チームとしての一挙手一投足の行動自体が、自分の事のように一喜一憂してしまう事もある。そして、勝敗や内容にも色んな感情を抱いてしまう。1つでも多くの試合を見ていきたい。岡山を応援していきたい。そういった気持ちは、現時点では、底が見えない。

 この時期に、昇格もなく、近県からではなく、岡山の地から現地に駆け付ける熱いサポーターや、私の投稿を読んで頂ける方は、本当に熱烈なサポーターであると感じる。昇格という目標が消滅した消化試合であっても、熱くなれる。そういった熱い気持ちを一緒にSNSで、共有していきたい。Noteをいつまで出来るか分かりませんが、今後ともよろしくお願いいたします。今後も一緒に岡山の試合を楽しんでいきましょう。対戦チームの方も、岡山と対戦することがあれば、来季以降もよろしくお願いいたします。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

ファジ造語

「ファンタジスタシステム」
 2トップに技術のある選手を据えて、中央にポジションをとる。中央を通そうとするパスコースを制限し、サイドへ出した所を狙う。そこを突破された後も、粘り強く守り、ボールを奪ったら2トップにボールを集め、技術のある選手が攻撃に移った時に、2トップの傍にいき、技術と創造性を活かして、ゴールに迫るやや攻撃よりの作戦。

「ミッチェルプレス」
 速さ・高さ・強さ・巧さ・持続力によって、19ミッチェル・デュークがプレスを繰り返して行く中で、攻撃的なMFが追随する中で、相手のパス回しの自由を大きく制限する。また、後方の選手もハイライン、中盤もコンパクトに保つ事で、高い奪取力を発揮する。ただ、チームとしての消耗も大きく、19ミッチェル・デュークの1トップ時しかできない作戦。

「勝利の方程式」
 リードした場面で、4バックから3バックにシステム変更し、重心を完全に後ろに置く分けではなく、中間に位置をとり、遊撃に専念しつつ、カウンターにより追加点を狙う。スペースを空けずに、岡山の守備時の集中力や献身性を活かし、守備にハードワークし、攻め手側のミスを誘発させて、時間を稼ぐことで、同点や逆転のリスクを小さくし、逃げ切る作戦。

「高低縦横の攻防」
 得点を狙う攻撃スタイルの属性の指標。9李 勇載と19ミッチェル・デュークが揃う事で、縦の攻撃と横の攻撃。どちらでも高い質の攻撃が可能となる。また、低い(グラウンダーの)クロスやパス、高い(浮き球)のクロスやパスの多彩な出し手も揃った事で、多彩な攻撃と柔軟性のあるチームスタイルが可能となった有馬ファジが目指す理想系の1つの形を感じさせる要素。

「守備は最大の攻撃」
 良い守備からの攻撃が主な攻撃パターンの岡山のチームスタイルを表現する言葉。岡山が意図した展開の時は、自陣でのプレー時間が短く、シュート数が多くなる。ただ、現状は得点まではなかなか繋げられず、攻撃は最大の防御と言えるぐらい質の高い攻撃ができない現状のチームが行き着いた勝負に徹する岡山の献身性が反映されたプレースタイルと言える。

「+1を作る3の原則」
 攻守のあらゆるプレーで、数的有利を効果的に作る事で、守備時にはスペースを空けない。攻撃時には、対応が難しい攻撃パターンを多彩化することで、守り辛くする。また、守備では危険なシーン自体を少なくするリスク管理、攻撃では、良い形を作るための迅速さ。こういった部分を最低でも3人で、そして第3の動きを強く意識したチームで戦うサッカー。

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自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。