2022ファジアーノ岡山にフォーカス32『 鳴門の風 』
2022 J2 第36節 (Away)
徳島ヴォルティス vs ファジアーノ岡山
キックオフにこそ間に合わなかったが、現地に参戦。スタジアムに早くINしたい所だが、徳島のフーズを見渡して、唐揚げを購入した。種類が多くあったが、食べ歩きをしていた時期に王道から入ることが良しという結論に至った事もあり、そこの店のポテンシャルが分かるうすしお味の唐揚げをチョイスした。
うすしお味だが、空腹と暑い気候もあってより際立つ美味しさであった。塩辛過ぎず固すぎず、バランスのとれていて、しっとり系の唐揚げ。衣だけではなく、中の肉の所もとろけるような食感で、しっかり味も染み込んでいた。細部まで拘りを感じた逸品であった。次に遠征した際には、他の種類も食べてみたい。
さて、開始30分程、見直してレビューを書いていきたい。土曜日に試合もあることもあり、日が無いので要点を絞って巧くまとめていきたい。
1、強度不足
連戦ということもあり、最適格の雉プレスではなかった。豊富な運動量と高い連動性が求められる雉プレス。強度という観点で、34輪笠 祐士と44仙波 大志も問題ないが、この組み合わせは、公式戦では初である。流石に足下の技術がしっかりした徳島の完成度の高い組織的なボール運びを捕まえる事ができるほどサッカーは甘くない。
また、26本山 遥の奪取力は高くとも、展開力に課題がある。雉プレス自体嵌っていなかったので、課題である視野の狭さが目立つシーンは、それほどなかったが、その中でもボールを奪って、前につけるというシーンを何度かは作る事ができていた。散らせる34輪笠 祐士か、奪取力の26本山 遥は、今後も考えて行きたいポイントである。
実際に奪ったら前への意識が高かった事を感じられる26本山 遥の試合後コメント。
後半に出てきた14田中 雄大。やはりプレスの寄せの速さや連続性という2点で考えると、岡山ナンバー1である。機動力と運動量をこれだけハイレベルに兼ね備えた選手は少ない。終盤に徳島が5バックにして逃げ切りにかかったことがあったとしても27河井 陽介と14田中 雄大のコンビは、雉プレスの効果がでていたことを考えると、現段階での雉プレスのための最適格であったことがよくわかる。
それにしても岡山の選手を背負った時の徳島の選手のボールコントロールが秀逸で、懐の深いキープでの局面の打開やワンタッチのプレーにより、岡山がの徳島のボールホルダーをに対して囲い込むシーンを作れなかった事で、岡山の選手のボール奪取は難しかった。そのため、徳島にボールを保持されて、前に運ばれる時間帯が長くなってしまった。それは、岡山にとって苦しい時間帯が長かった事も意味する。
26本山 遥は、次のようにも語っている。
2、選ばれし11人
岡山が、雉プレスをするためには、選手の組み合わせの関係性に少し触れた通り、徳島も主導権を握るためのベストの11人を揃えるのは、簡単ではない。
まず、CBであるが、足下がしっかりしていなければならない。繋ぐ巧さだけではなく、ドリブルで運び中盤の選手とのパス距離を近くして、高く上がった両SBへ正確に通す事も求められる。当然ながら前に運ぶので、パスを出すタイミングを含めた広い視野と的確な判断力が必要である。特に14カカは、対人守備でも力強く、岡山の強力な2トップに対しても負けていなかった。山形戦での対比のレビューで紹介した横パスの距離があるのは、大きく開いて上がったSBを通す技術があり、縦へのパスの距離が短かったのは、縦に付ける時には、ドリブルで持ち上がっている事で、中盤の選手との距離が近くなっていたことが大きい。
データが気になる方は、こちらで確認下さい。
そして、SBの選手は、攻撃時のチャンスメークだけではなく、対人守備の良さも光った。特に36エウシーニョが、24成瀬 竣平の前に壁として立ち塞がって、フォローがない時の24成瀬 竣平は、シャットアウトされてしまった。世代別の代表で離脱している22佐野 航大とのマッチアップが実現していれば、面白かったかもしれない。左のWBは最初から10宮崎 幾笑でもありであったが、結果的にリードを許す展開となり、10宮崎 幾笑で、攻勢にでることができたが、この辺りをどう考えるかである。それにしてもそのプレーで、負傷交代することとなったが、36エウシーニョのドリブルでの突破も見事で、本当に徳島の選手は、ボールを簡単に失わず、ドリブルをしっかりできる総合力の高い選手が、揃っている事がよくわかる。
中盤の選手もパスワークが速いだけではなく、背負った時も簡単に失わないだけではなく、そこから寄せに来た選手を振りほどいて前を向ける巧さもあった。岡山が、ここで戻させることができれば良いが、それすらできずに前を向かれる。もしくは、ファールを与えてしまうシーンもあった。攻守の切り替えも早く、バイタルエリアを引き締めて、岡山の中へのボールを再三インターセプトし、そこからカウンタ―というシーンも多く、得点シーンのようにゴール前にもしっかり顔を出せていた。
更に、前線の3選手もまた強力であった。ボールを持った時の仕掛ける姿勢は、90分間通して脅威であった。外からのチャンスメーク以上に、中へ入っていく意識や崩していこうという意識が高く、ゴールを固めた岡山のDFラインを無効化する速いパスワークは、秀逸であった。また、徳島の前線の3選手の守備意識も高く、岡山のDFラインはプレスに受け続ける時間が長かった。
堅守の要となるGKもまた素晴らしかった。長身でありながら機動力に優れて、ハイボール処理のボールキャッチ率は、凄かった。あれだけのスピードで飛び出して、キャッチされてしまうと、セットプレーが得意な岡山であっても簡単にゴールを割る事ができない。当然のように足下の技術もしっかりしており、プレスをかけても慌てる様子もない。
こういった素晴らしい選手達を11人揃えられる徳島が弱いわけがなく、試合の主導権を握った完璧な試合運びを、岡山はされてしまった。個人的には、今季岡山にとってワーストとも言える完敗であった。スコア的には大差であっても、付け入る隙はある試合が多く、良い所なく敗れたという試合であった。
完璧な試合であったと語るダニエル・ポヤトス監督。
3、クロスへの意識
クロスの質と形から両チームのサッカーの違いは、より顕著であった。岡山は、WBの16河野 諒祐やCBの41徳元 悠平が、サイドの深くまで進入して、中の高さを活かしていくというクロスの形を採用していた。そこから中に切り込んでいくという選択肢も持っていたが、メインは、高さに合わせるクロスであった。
対する徳島は、中の3レーンを意識したクロスを採用する。対比で紹介したデータであったサイド深くのライン際でのボールロストが少なかった理由は、そこから安易にクロスをあげていくのではなく、ドリブルで中に入っていくことで、岡山の守備の隙を探して、そこを突いていく意識が高かったことからそういったデータになっていた事が分かった。
上記でも紹介しましたが、データが気になる方は、こちらからどうぞ。
中へのパスを織り交ぜることやワンタッチでの繋ぎで、フリーの選手を作る事もある。もちろん、そのまま突破する事もあるが、ワンツーで背後に飛び出すというシーンを再三演出していた。
岡山のDFラインとGKの間のスペースが狭くとも抜け出せていたので、その連動性は、岡山の守備の反応を大きく上回っていた。35堀田 大暉のファインセーブや人数自体が揃っていた事で、コースを限定できていた事をある失点は、なんとか防げていたという状況であった。
ただ、失点のシーンは、まさに中の3レーンを意識したDFの間にIHやANの選手の攻撃参加の厚みを活かして、もはやパスとも言えるぐらい”成功率の高い”クロスであった。
どうすれば、DFラインの背後を突けるのか、どうすれば、DFラインの間で受けられるのか。そういった徳島の”工夫”が、そこに濃縮されていて、ホームの徳島戦での失点を思い出すような、非常にデザインされた徳島の形での得点であるように感じた。
同時に、岡山が断念した4-1-2-3とほぼここまで試合で採用してきた徳島だからこそできたサッカーである。もし、仮にこの勢いのままプレーオフに進出してくれば、岡山がベストメンバーであっても今のままでは勝てるかどうかという完成度の違いであった。
ここまでの過程への苦労を語る18佐藤 晃大。
現状は、岡山が現実路線に舵を切り、勝ち点を積み重ねてきて、両チームの勝ち点の差を大きいが、徳島は、プレーオフに進出できれば、プレーオフ勝ち抜ける初のチームになれる力と完成度を持ったチームであるし、今季仮に上がれなくても来季のメンバー編成次第では、昇格候補筆頭とも言える個の力と組織力のあるチームであると感じた。
ただ、シーズンを跨ぐ事での難しさは、今季の千葉を観ていると感じるのも事実で、プレーオフに進出して、今季での昇格を目指す方が、徳島として編成を考えても是が非でも上がりたいだろう。いや、徳島は、既にJ1を経験をしており、もっと長期的な目線で、昇格やJ1を捉えているのかもしれない。
この試合の徳島の勝利への勢いは凄かった。鳴門の風は、対戦した岡山にとっては、かなりの逆風(比喩的な意味・表現)で辛いものであった。このチームを止める事ができるのか?そういった気持ちにもなった。
4、徳島に勝つには
開幕した頃に見せたような4-1-2-3の3人でのプレッシャーをかけていけるだけの圧力を作り出せるかがポイントである。24成瀬 竣平と44仙波 大志もそれなりのプレス強度を誇るが、流石に22佐野 航大や14田中 雄大のような回数や強度はない。この2人がいても大きく阻害するのも難しいかもしれないが、前の2人だけで徳島の運ぶことを阻害することは難しく、少しでも遅くさせていくしかない。
プレスが巧くいかなかった事が感じられる44仙波 大志のコメント。
一方で、徳島は、4-1-2-3の特性を活かして前線からもプレスをしっかり掛けていて、幅をしっかり使う事で、高い位置で、受けるポイントもしっかり作れていた。攻守で前線の選手の献身性や、個の力が光った。
徳島のドリブルをどう抑えるのか。サイドからのドリブル、前に運ぶドリブル、キープするドリブル、様々なドリブルへの対応にも苦しんだ岡山。なかなか奪取することもできずに、バイタルエリアまで運ばれて、連係プレーで、ラストパスを通されてシュートを打たれるというシーンも少なくなかった。ラインが高ければその背後を突かれて、ラインが低くてもワンツーで裏をとられ、そのスペースもない時は、人数とレーンを意識したポジショニングで、岡山の選手の間で合わせる事を意識した崩しに失点。
攻撃の始まりや運ぶのはサイドからであり、ドリブルからである。ドリブルをどう遅らせて、運ぶのを阻止して攻撃に移るのか。木山 隆之監督も色々と手を打ったが、徳島の方が岡山を大きく上回った。
木山 隆之監督もその辺りを次のように表現している。
徳島とのプレーオフで当たる可能性を考慮して、そこに向けてどういった対策をしているのか。ただ、悪かったことだけではない。近くの徳島サポーターも驚いた41徳元 悠平のロングスローの飛距離や、囲まれながらも運んで行く7チアゴ・アウベスのドリブル、23ヨルディ・バイスのプレスを無効化する一本のロングパス。しっかり個の力を出せた。これを単発に終わらせず、形にしていくことが、残り試合で問われていく事となる。
下を向かず、自分達のサッカーを信じて戦って行くしかない。
23ヨルディ・バイスのコメント
応援で、選手を後押ししたいという気持ちがサポーターにはある。しかし、23ヨルディ・バイスの言葉からは、逆に勇気が貰える。一緒に戦って、この試合の徳島のような強いサッカーができるチームの多い、J1の舞台を経験したい。最後まで可能性がある限り、応援していきたい。
5、写真コーナー
キックオフ時間に間に合わなかったが、撮影できた範囲で紹介していく。
独特の雰囲気とサッカー場の明るさは、どこが幻想的だ。
一度改修されているはず。昔からは、少し様子が変わっているかも?
チームの力になっていたであろう岡山サポーターの数の力。
岡山と違いゴール裏全てなので、やや空白が目立つが、勝負所での鐘の音やテンポを上げたい時の拍手で、サッカーにリズムを生み出して、チームを後押している徳島サポーターの力は大きい。
岡山の数少ない突破口の1つであった。もっともっと回数を増やしたい。
ファジ丸は、いつも負けているイメージが強いが、今回もやはり負けた。
奇麗な花火。同じように撮影してる人も多かった。
完敗の岡山。足取りは重い。
屋根があることで、反響する効果が凄く出ていて、凄い雰囲気があった。改修ができたことが羨ましい。岡山のシティライトスタジアムは、遺跡がある関係で予定も変更されて、今後も改修ができない。岡山にも声や拍手が反響するより、雰囲気がでるスタジアムが欲しい。
お互いに姿を見ることで、次の試合の活力として欲しい。対面するだけでも現実を直視するだけでも前を向ける。
重かった1点、重い一敗、想いもいっぱい。
勢いのあった岡山を止めた事で無敗記録を伸ばした徳島。プレーオフの可能性がある限り、勝ち続けるだけの強さを感じた試合であった。
7チアゴ・アウベスは、勝っても負けても何処か華がある。
24西谷 和希のドリブルの勢いが凄かったのが印象的だった。
何処のチームに勝っても嬉しいと思うが、岡山に勝って嬉しいと思われるチームにこれからもならなければならない。悔しさを糧にそういったチームに岡山もなって欲しい。岡山サポーターである私も、この強い徳島に次は勝って欲しいと思った。
文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・Photo=Masaaki Sugino
試合後コメント引用元紹介
アディショナルタイム(おまけ)
ファジ造語
参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー
は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777
代表作
2021ファジアーノ岡山にフォーカス46
J2:第42節:ファジアーノ岡山 vs ジェフユナイテッド千葉
「有難う有馬さん、有難う椎名さん、有難うファジ」
は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n511a1b501907
筆者紹介
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