2022ファジアーノ岡山にフォーカス21J2:第15節~24節「反攻の狼煙」Part3(山口戦~琉球戦~水戸戦)

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耐え忍んで、少ないチャンスでの得点で勝ち点に繋げる。それが今の岡山。

7、信頼×信頼

21節:レノファ山口vsファジアーノ岡山(A)

 前節の快勝を受けて、圧倒的得点力での連勝を期待して、この試合を迎えた。ただ、試合の方は、開始早々から35堀田 大暉が、裏に抜け出した19沼田 駿也の1対1で打たれたシュートをビックセーブ。突然の絶体絶命の危機であったが、J3での実績がほとんどであったことからここまでのパフォーマンスは予想できた人は少ないと思われる35堀田 大暉のシュートストップで難を逃れた。

 岡山が、ここ数試合で、抜群の守備の安定感を誇っている。ただ、内容を見てみると、主導権を握る事で、攻撃機会を少なくすることや、人数をかけて守る、自陣に引きこもる。こういった理由で表現するだけの堅守ではなく、総合力の高さで辛抱強く守っての結果的な堅守であり、守備の安定や攻撃面の課題も多い。

 この試合でも山口の洗練された攻撃パターンを防ぐのは難しく、多くのシュートを打たれる事となった。ただ、一瞬の隙を突いて、高い位置でボールを奪うと決定力のある7チアゴ・アウベスが、決めきった。意外にもアウェーでは、初ゴール。ホームでの力を発揮できるタイプの選手のようだ。近場のアウェーでの活躍にも期待したいところ。

 ただ、90分間通して、岡山が主導権を握るという時間は限られ、GKではなく、DFの選手が、2回連続で枠内シュートを頭でクリアするという好プレーというか幸運にも恵まれ、無失点に抑えて勝利することができた。主導権を如何に握るかというのは、今季の最後までの課題となることは間違いないが、粘り強く守って、カウンターで仕留める形は、高いレベルに到達しつつある。

 チームとしての各選手同士の連携の深まりと、各選手の特性という長所への信頼が深まり、それが苦しい時間帯を耐える原動力となっている。圧倒的でこそないが、負け難い強さがある。少しずつではあるが、トライ&エラーを繰り返し、修正して行く中で、着実に前進しているという事を改めて感じる事が出来た山口戦。

 ただ、一方で、山口のロングカウンターから被シュートも多く、シュート機会構築の部分で、山口に分があった。岡山の個の象徴となりつつあるダブルエースと言える7チアゴ・アウベスの決定力が活かされて、勝利こそできたが、内容的には課題も多い。ただ、こうした苦しい試合で、しっかり勝利することができようになってきたのは、チームの成長と言える。

8、力×力

22節:ファジアーノ岡山vsFC琉球(H)

 琉球のイメージは、超攻撃的で、サイド攻撃の練度が、J2トップクラスのイメージであった。ただ、ホームで迎えた2巡目の対戦では、体格に優れる選手が揃い、球際の所で、岡山が勝ち切れないというシーンが目についた。これは、フォームチェンジというよりは、アップグレードで、持ち味のサイド攻撃にテクニックの部分でも高い水準にあった。

 よって、この試合では、デュエルの所で、5分5分の攻防が続く、ただ1対1が増えたことで、両チームが、そこに勝利することで、シュート機会が増えていく事なった。ただ、両チームも粘り強く、そして力強い対応で、競り合いで倒れず、空中戦でも跳ね返すことで、危険な所へ侵入するというのが難しかった。

 そういった攻防の結果、コースの限定やシュートレンジを遠ざける事で、両チームとも堅い守備を構築していたことで、シュート数ほどの決定機は多くなかった。ただ、最後の所で、粘り強く守っていた岡山が、セットプレーの流れからリスクを冒したことで、10宮崎 幾笑の岡山での久々のゴールであり、今季初ゴールが決まり、終了間際の劇的な勝利となった。

 被シュートが多くても粘り強く守るという部分でのチームとしての成長を感じた試合となった。同時に、琉球が1巡目とは別チームのように総合力が上がり別チームのように強くなっていた。特にフィジカル面では、ユニフォームとチーム名を伏せた時に、同じチームと答えられる人は少ないのではないかと感じるぐらい進化していた。

 現状、最下位にこそ沈んでいるが、風向きが変われば、飛行機での移動が強いられる移動面の負担や、独特の気候というホームの利を活かすことができれば、上昇してくるのではないかという可能性を感じたと同時に、J2の難しさを感じた試合となった。ただ、こういった試合をものにできたことは、かなり大きい。

 岡山も琉球もホームで強さを発揮できるかどうかは、最後の明暗を分ける形になる可能性もある。そう考えると、ここ両チームが相手を上回って勝利に繋げる事ができるかどうかは、目標達成には必要不可欠と言える。この連続レビューでは、戦術的な部分を必要最低限に留まっているが、大きな枠組みで、試合を捉えることで、チームの魅力を発信していきたい。

9、長所×長所

23節:水戸ホーリーホックvsファジアーノ岡山

 4連勝のかけた試合であったが、試合終盤の失点で追いつかれ、試合終了のシュートも35堀田 大暉のビックセーブで、辛うじて勝ち点1を得た試合となった。内容的には、追いつかれた側であるが、勝ち点1を得た側であり、むしろ水戸の方が、勝ち点2を失った試合である。それだけ水戸の決定機は多く、判定にも助けられて辛うじて同点で踏み止まり、勝ち点1は死守できた。

 チームの強みやチームの弱みというのは、どのチームにもある。水戸の強みは、ゴール前のアイデアと、そのアイデアを実現するテクニックと、プレーを共有できる連携の深さにあることは間違いないだろう。実際に、後方のビルドアップでは、プレスを受けることで、パスがずれてしまい、ボールロストすることも多かったが、攻撃時には岡山の屈強なCB陣とその前のボランチの守備網を完全に崩すことができる正確なパスと、効果的な動き出しが、水戸の選手はできていた。

 一方の岡山は、強力な外国籍選手の5選手が他のチームでは少ない武器になっている。7チアゴ・アウベスを軸と前線の個の力、23ヨルディ・バイスのロングフィードが、攻撃における武器である。9ハン・イグオォンの推進力やパンチ力があり、15ミッチェル・デュークは高さと運動量、8ステファン・ムークは運動量と高い献身性。フィジカルとテクニックもお国柄というそれぞれの出身国のサッカースタイルの日本人にない武器で、安定感のある戦いに繋がっている。

 ただ、この試合では、4選手枠あるが、3選手のみであったことで、最後の所のパワーに繋げる事ができなかった。もし、苦しい時間帯に8ステファン・ムークの献身的な守備や15ミッチェル・デュークの前線で圧力をかけることができれば、違った結果になったかもしれない。サッカーにたらればが、付き物であるが、それにしても水戸の猛攻は凄かった。

 試合後の監督の熱量は凄まじく、勝利することが出来なかった悔しさは、気温が10℃上があがると錯覚しそうなぐらいの熱量であったが、水戸のサッカーもまさにそういったサッカースタイルで、攻撃の勢いは凄まじく同じ場面でも岡山よりパスコース(ホットライン)が10パターン程多いのでないかと感じるほど、質の高い攻撃であった。

 何れにせよ、内容的には厳しい試合であったが、PKで得た1点で、勝ち点1を得る事ができ、負けなかった幸運の試合であった。ただ、心身共にダメージも大きく、危機感も同時に抱いた木山 隆之監督は、ボールを持つことで、主導権を握りたいという気持ちもまた強くなった。この部分は、全ての選手やサポーターもそういったサッカーができれば理想であることは理解しているが、それがすぐにできるほど簡単でもないのもサッカーである。

 水戸のように練度の高い攻撃をしたい。そう強く感じた試合であったし、水戸の強さを改めて感じた試合であった。水戸では、名産品に水戸納豆があるが、守備時には、納豆のように粘り強く、攻撃時には、箸が進む旨さのような魅力を感じた試合であった。岡山の武器に「主導権を握る」を加えることができるか、次戦の熊本戦の結果と内容は、皆さんのご存知の通りである。

Part4に続く。

Part1~2

文章=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino

ファジ造語

チアゴ・タイム
 7チアゴ・アウベスのプレーの一つ一つにサッカーを楽しむという遊び心があり、そこに技術が伴った左足の凄さを称えて「悪魔の左足」と、呼ばれている。その左足を活かして、何処からでも何時でも狙っていて、7チアゴ・アウベスが出場している時間帯は、岡山の大きな得点源と言える。

本山丸(イメージは真田丸)
 大阪の陣で、大阪城に迫る徳川の軍勢に対して、真田丸は、大阪城の弱点を補う出城として築かれた。23ヨルディ・バイスと5柳 育崇の弱点は、釣り出されたときや、スピードであるが、26本山 遥かが主に、そういった守備対応をすることで、3選手の良さをお互い引き出すことで、守備が安定して、堅守を構築に繋がっている。

参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー

は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777

ヤバス要塞
 語呂を意識して、5柳 育崇の「ヤ」と、23ヨルディ・バイスの「バとス」の二文字を抽出して、「ヤバス要塞」と、表現した。防衛において重要な地点の砦。砲台もある砦のことも指す。高い対人守備だけではなく、ロングパスの精度やセットプレーの得点力があり、まさしく要塞と言える。攻守で強みを発揮できる「ヤバス要塞」として、難攻不落を目指す。

梅田アウォール
 ファジの最後の壁。ファイアウォールに比喩した表現。戦術や個の力、連動性といった攻撃で、ゴールを狙ってくる様々な攻撃をシャットアウトする。そして、バックパスの受け手として、フィードや組み立てる一人として、パス交換(情報通信)。後方からの冷静なコーチング(情報の発信)。多くの情報を整理し、最的確な決断ができるGKである1梅田 透吾の良さを表現したファジ造語。

0バックシステム
 攻撃的で積極的なオーバーラップや得点力のあるCBである5柳 育崇や23ヨルディ・バイスのCBの2選手と、SBが本職である26本山 遥といった流動性のあるDFラインを形成することで、攻守において、自由に動くことで、攻守での手厚い状態を作り、数的不利になりがちな局面で、数的有利の攻撃シーンを演出し、守備でも積極的なアクションで、事前にピンチの芽を摘み、流動性から生じる集中力と緊張感から、カバー&フォローで、リズムを作り出す戦術システムのファジ造語。

木山ファジVer1
 2022シーズンの開幕からトライした新システムの4-3-3。超攻撃的なサッカーで、7チアゴ・アウベス軸とした、自由と個の力を前面に展開していく。選手のコンバートやルーキーの積極起用で、勢いと爆発力があった。攻撃だけではなく、前からの守備でも効果的で、嵌める・奪うから得点に繋げることのできた試合もあった。ただ、対戦チームの対策が進む中で、勝ち点3が遠く、順位を下げて行く中で、4-3-3の戦術的アップデートの一時中断からの路線変更を余儀なくされた。

木山ファジVer2(アップデート予定)
 10節という節目で採用された4-4-2。4-2-2-1-1とも言える形で、4-2-3-1とも言えるが、ダブルボランチを採用することで、攻守での安定感が高まった。有馬ファジの4-4-2とは違い攻撃的な選手と、ロングパスの得意な選手が多く、速攻を主体として、速さ・強さ・高さを前面に出して、ゴールに出したことで、今季のメンバーに寄せた4-4-2である。今後どういったマイナーアップデートで、Ver1(4-3-3)の土壌を活かして、勝ち点3に繋げて行くのか注目される。

筆者紹介
 某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質での攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりが、楽しみ。ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗する悪癖もあるので、治したいとは思っている。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

代表作
2021ファジアーノ岡山にフォーカス46
J2:第42節:ファジアーノ岡山 vs ジェフユナイテッド千葉
「有難う有馬さん、有難う椎名さん、有難うファジ」

は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n511a1b501907

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自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。