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留学先の土地柄って考えました?

こんにちは。イタリアで彫刻をしている杉本ユニです。

みなさんはどんな場所に住んでいるでしょうか?

noteは日本語なので日本に住んでる方が大半だと思います。ボクはイタリアに留学するまで日本から出た経験が一度もありませんでした。今回はボクが留学している場所の土地柄の事と予想外だった出来事を書こうと思います。

ボクが留学している大学はカラーラという街にあります。もしかしたらご存知の方もいるかも知れませんがこの街は大理石が非常に有名です。石切場のある山も一見するだけだと雪が被っていると思えるほど大理石で白いです。あのミケランジェロが彫刻の材料のためにカラーラに通った、というのを街も宣伝しています。

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ですからカラーラにはたくさんの大理石関係のビジネスが盛んに行われています。個人でやってる彫刻家もたくさん住んでいます。他にも建築建材のための大きな工場や大理石の建築装飾、例えば教会の聖母像などを製造する工房がたくさんあります。ほとんどが海外向けの輸出で収入を得ているとボクは聞きました。だから大理石というのはカラーラで非常に重要なマテリアルなのです。

もちろん大学の教授陣も大理石専門が多く自然と生徒達も大理石ばっかり彫っています。この事の重大さがカラーラで一年が過ぎるくらいからボクの留学生活に大きく関わってくる事を最初は気付くことが出来ませんでした。

イタリアに渡る前、ボクはこう思い込んでいました。

「ヨーロッパなんだから日本より現代アートは進んでるに違いない。ましてカラーラは彫刻の聖地(と勝手に思ってた)。先進的な環境に決まっている。」

ボクが勉強したかったのは彫刻というカテゴリーだと自分は定義していますが現代アートの新しい表現を含んだものでした。

しかし時間が進むにつれて気付くのです。

「本当に大理石ばっかりだな、、、盲目な程に。しかも皆、聖母や天使や犬と子供が抱き合ってる慈愛に満ちた彫刻ばっかり・・・あれれ?」

日本の芸大も卒業しているので比較出来るわけです。

イタリアの若者達が何も制限されるわけでもなく慈愛に満ち満ちた作風やありきたりな肖像彫刻、どこかの街にすでにあるだろう抽象彫刻に没頭している。別にそこにプレゼンテーションや作品のテーマや文脈の掘り下げも何もありません。現代アート、ガン無視でただ無料で使える大理石を彫っているのです。しばらくは結構落ち込みました。ボクは本を読むのが好きなので現代アートについて話したいなぁと思っていたんですが生徒も教授もほとんどはバンクシーやジェフクーンズも知らないのです。

知ってるから偉いとかでは無いけどそれはちょっと、、、、となりました。

でもこれは完全にボクのリサーチ不足だったと思います。カラーラのアカデミアはこういう場所だったのです。若い子達が「大理石の彫刻職人になりたい。」というのです。そして就職先がある。ボクの苦手な伝統です。

本当の意味で大理石の街なのです。

この現実は現地のギャラリストとの会話からも分ります。ボクもアーティスト志望なのでポートフォリオを持って地元のギャラリーに作品を見てもらおうと思うわけです。しかしギャラリストは開口一番こう言います。

「君の作品の材料は何?大理石じゃない?あ、そう、、、(興味無し)」

ボクの作品まだ一秒も見てないじゃん(笑)ってなるんです。

読者の中には「杉本も大理石やれよ」と思う人がいるのも分ります。しかしボクはみんなと同じ事をやるのが本当に嫌いなんです。昔からこの性格で苦労してきたのですが今回も例に漏れません。(笑)そう思わせる迫力がカラーラの大理石文化にはあります。

多分ボクと違って留学経験のあるみなさんはもっと調べてから行くと思いますが何か予想外な事ってありましたか?もしよかったら教えて下さい。

それではまた次回の投稿でお会いしましょう。

杉本ユニ




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