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#エッセイ

フジロックフェスティバル 2024

フジロックフェスティバル 2024

初めてフジロックに行ったのは2003年。アンダーワールドとビョークが出演した年の金土2日間。友達に誘われてノリで行ってみた。インターネットはまだ普及していなくて、東京駅でペラペラなレインコートを調達してジーンズにコンバースといういくらなんでも山のことを何も知らなすぎる軽装で突入してしまい、大雨に見舞われ惨憺たる結果となった。ただその頃の私は単独公演のライブなどにはほとんど行かず、とにかく効率よく沢

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霧中夢とアンビエント

霧中夢とアンビエント

先週から始まった【Cornelius 夢中夢 Tour 2023】の特典カセット「霧中夢 Dream in the Mist 46min.」を聴いた。手に入れるまでどういう内容なのか不思議だったけれど、実際に聴いてみて、なるほどそういうことか!と。霧中夢で始まり、霧中夢で終わる、46分間の極上のアンビエント体験。深夜にカセットデッキから流れてくる「霧中夢」は、心を鎮めたり、或いはハッとさせられたり

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CROSS THE BORDER

CROSS THE BORDER

「CROSS THE BORDER」はもともと仮のパーティー名でした。時間がなくてサッとつけてしまった名前なので、今後変わる可能性もあります。わたしの心の中での最初の仮タイトルは「FLAG」でした。事の発端は今年6周年を迎えた武蔵境のカフェondのデリ担当の元さんと、近頃仲良くしてもらっている元新宿リキッドルームのスタッフのaokinokoさんと3人で、皆で好きな音楽をかけてお喋りできるようなゆる

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フジロック2023

今年も行くと決めたのは第1弾のラインナップが発表された2月の上旬のこと。まだ真冬で、寒かった。そのわりにチケットを購入したのは6月の上旬だった。どういうスケジュールで参加するかをなかなか決められないまま、あっという間に夏がやってきた。お気に入りのアーティストが出なくても会場のあちこちで未知の音楽に触れられて、行けばとりあえず楽しいのがフジロックの魅力。けれど年々上がっていくチケット代が私を苦しめる

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イエスタデイ・ワンス・モア

イエスタデイ・ワンス・モア

何年か前、もしかすると10年以上は経ったのかもしれない。とっくに再生機器を手放しているにもかかわらず聴けないままで部屋の隅に置きっぱなしになっていた両親の古いレコードやCDを実家で見つけて、数枚だけわたしが引き取って家に持ち帰った。アバやカーペンターズ、サイモン&ガーファンクルなど。しばらく眠っていたそれらのレコードを昨夜久しぶりに引っ張り出して聴いてみた。クレジットに1970〜80年代と記された

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空回るエモーション(編集後記)

どんなインタビューでも毎回必ず、ああ、この答えを聞くために話を聞いていたんだな、と思う瞬間がある。流れていく会話のなかで一瞬だけ時間が止まって、しん、と空気が静まりかえり、言葉がはっきりと伝わるような感覚が。
今回の『Lisztomania!』のインタビュー「蘇るパッション 循環するエネルギー Mikio Kaminakamura インタビュー」では『Midmorning EP』のくだりがそれだっ

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フジロック2022

フジロック2022

今年もフジ・ロック・フェスティバルに行ってきた。数えたら今回で10回目の参加だった。2003年に初めて参加したときは会場から徒歩圏内の民宿に1泊して、次は日帰りで近くの温泉施設で仮眠コース、車で参加もあった。ここ数年は毎年足を運んでいて、みつまたの民宿に土曜泊で日曜のヘッドライナー終了後にツアーバスで朝帰宅や、越後湯沢駅から送迎ありの旅館泊、1日参加で朝までコース、昨年はついにキャンプでテント泊の

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日々の実り

日々の実り

春は地味に忙しくてなかなかnoteを更新できずにいたまま、気づけば前回の記事から3か月も経っていた。そういう時に限って知らない人に何故かフォローされたり、太古のテクノミニコミ(ネット上でそう記されたことがある)の記事がよく読まれたりするもので、いいねの通知が時々くる。いいねは嬉しい。ほとんどの人が足跡も残さず覗いて帰るというのに、わざわざ意志を残して立ち去ってくれる、良識のある素敵な大人って感じの

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意味よりも大事なもの

少し前にETVで放送された『ぼくは しんだ じぶんで しんだ 谷川俊太郎と死の絵本』という番組を観た。子供の自死という重たいテーマをもとに試行錯誤を重ねながら作られた絵本『ぼく』が今年1月に発売されるまでの制作過程を追った、丁寧なドキュメンタリー映像だった。

番組の最後に印象的な場面があった。「読者に伝えたいメッセージは?」と質問されると、絵本の作者である谷川氏は「ないですね。ひとりひとり全然違

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物を所有すること

物を所有すること

物を所有することについて考えている。考えているというのは文字通り考えているだけで、答えはまだ出ていない。物を減らす、増やさないというだけの話でもない。昨年急に亡くなった友人の部屋を後日訪れた際に、残された所有物からその人自身がありありと映し出された空間を目の当たりにし、いろいろとショックを受けた状態のままでいる。

亡くなった人の趣味が色濃く出ているCDやレコードや雑誌を大量に残されたら、家族は処

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So We Won't Forget

So We Won't Forget

数年前に昔の友人数名と再会した。私がひとりでクラブに行き始めた94年に初めて仲良くなった友達で、90年代半ばのテクノシーンの熱狂を一緒に体感した人たち。彼らに出会った当時は毎週のようにクラブで顔を合わせ、そのままデニーズでくだらない話を延々と繰り返しては誰かの家に入り浸り、一緒にレコード屋へと足を運んだ。その仲間たちとは95年に原宿のホコ天で「HAPPY PROMENADE」というイベントを一緒に

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終わりの季節

終わりの季節

定期的に担当していたJFNラジオ番組内の選曲コーナーの仕事が先週で終わってしまった。秋の改編期なのか、2014年の開始から7年続いていた番組自体が9月いっぱいで終了ということで、心にぽっかりと穴が空いたようで寂しい。私は2019年の12月から季節が変わるたびにお声をかけていただき、最後の回を除いてはいつも金曜日の2週分を担当をしていた。計8回、全部で15週分の放送。短いあいだではあったけれど、どの

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2021年の夏休み

2021年の夏休み

新しい曲をApple Musicで聴いて気に入ったものをどんどん追加していくプレイリストを去年の1月から月ごとに作っていて、あとで忘れた頃に改めてチェックしたり、そのときの気分の傾向を振り返るのに結構役立てている。ふと先日、今月のプレイリストは……とライブラリを辿ってみると、どこを探しても今年の8月分が見つからない。そういえば作っていなかった。Apple Musicはほぼ毎日使っているので、あれ?

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書くこと、忘れること?

書くこと、忘れること?

新年度。書かなければいけない子供たちの学校の書類が山ほど届く。進級するたびに去年も書いた同じことを新しい紙に何枚も何枚も記入させられる。めんどくせー。そう呟きながらも実はそんなに面倒でもない。私は字を書くのが好き。量が多くて手は疲れるけど、ペンを握って書いているあいだは楽しいので、作業自体はまったく苦ではない。むしろやりたい。途中で曲がったり、バランスの悪い変な字になっても、まあいいか、と別に気に

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