怒りの霧が晴れた瞬間
生きていると、大なり小なり、許せること、許せないことに遭遇する。若いときは許せないことばかりで、時にはその怒りからくるモヤモヤで朝まで寝られないこともあったが、時を経て、今は許せることの割合が大きくなってきた。のはずなのに、心の隅に、何かがずっとくすぶっていたことがあった。
「刺せるものなら刺してみろ!」
セミの鳴き声が鳴り響いていた、朝の出来事だった。家の中で物騒な怒号が飛び交っている。
父とおじいが、また喧嘩している。頭に血が上ったおじいが小さなナイフを我が息子、父に向