マガジンのカバー画像

好きなものまとめ

22
読書感想文だったり、好きな食べ物のはなしだったり
運営しているクリエイター

記事一覧

ひそやかな時間たち

今朝仕事で早朝に家を出た私は、車のボンネットにある水滴に目を奪われていた。つるりとした光の粒のようなものがとてもきれいに見えたのだ。 たしか昨夜は満月で、深夜には雲も晴れてきれいな夜空だったような気がする。ということは、わたしが寝ている間に雨が降ってきたのだろう。 そのことに気がつくと、空気がなんだかしっとりとしているように感じたり、地面が濃い色になっていることに目がいくようになる。 人生の中で睡眠が占める割合は、1/3らしいとどこかでみた事があるけれど、自分が寝ている

朝起きて、夜寝るまでの「最高の1日」を考える vol.2

すこし寝苦しさを感じ起き上がると相棒である白い彼がすぐ隣に横になっているのがわかった。犬種はスピッツだ。 昨日ちょうどお風呂に入ってもらった彼の後頭部に顔を埋めて思いっきり息を吸い込み、じんわりと幸福を感じる。鼻先を擦り付けるようにしていると彼がこちらに気づきじっと見つめてきた。用事があるのを思い出した私は、彼をひとなでしてから布団から起き上がった。 -------------------------------------------- 朝ごはんはトーストにハチミツと

本当にすきなものこそ、誰にも言わないでいることがある

本当にすきなものこそ、なんとなく誰にも言わないなと思うことがある。 + 日々を過ごしていると、なんてチャーミングな人なんだろうという人と出会う事がある。 そこには性別や年齢などの物差しは限りなくフラットになり、感性だったり、言葉だったり、行動だったり、その人の根底にあるものが、とてもチャーミングなのだ。 かわいい、だけでは収まりきらない、なにか愛されるような柔らかさを含んだかわいいを持つ人をチャーミングな人だ、と私は思う。 どれもキラキラとまるで海で見つけたシーグラス

幸せはおやつの香りがする

ただいま、とドアを開けると、家中にお菓子を焼いている素敵な香りがする。あれはまだ小学生だった私が見つけた、幸せのひとつだと言えるだろう。 まだわたしが幼い頃、母は頻繁にお菓子を作ってくれた。家には沢山のケーキの型があった。スポンジケーキ型、タルト型、マドレーヌ型に、シフォンケーキ型…一体いつ集めたんだろうと思う量の様々な形のクッキー型なんかもあったし、手書きのレシピや書籍には、ウチのオーブンならこの温度で焼いたら良い、これは失敗した、など鉛筆で走り書きがしてあるのを何度か見

果物を剥いた後に、手に残る香りが好きだ

果物を剥いた後に、手に残る香りが好きだ。 あのなんとも言えない残り香は、幸福のかおりがする、と思う。 みかん、りんご、もも、ぶどう。 なんだっていい。 ご飯を食べて、ゆっくりお茶を飲みながら、しゃりしゃりとりんごの皮を剥く時間も、ももの皮をつるりと剥けたときの嬉しさも、みかんを剥いて誰かにひとつあげるときも、手にはやさしいかおりが残るのだ。 幼い私は、どこかで見たりんごの皮を綺麗につなげて剥くのをマネしていた。 母や父が時たま買ってきてくれる桃を剥いてくれた後の手のにお

「蜜蜂と遠雷」はあの頃の原体験だ|読書感想文

あなたは世界に 耳を澄ましてみたことがあるだろうか。 今回感想を書くのは恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』だ。映画化もされ、直木賞と本屋大賞をW受賞している。 『蜜蜂と遠雷』は4人のピアノ奏者を巡る物語であり、ピアノというものを通して見る凄まじい人生の一欠片であり、そして私たちが世界を感じたあの日の物語だ。 いままでピアノコンクールに行ったことはないし、書かれているその曲がどんな曲か直ぐには出てこない。ピアノをちゃんと弾いたことも、聴いたこともない。だけれど、この本は不思議と、

岸田奈美さんの『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』を読んで|読書感情文

会ったこともない、知り合いでもない家族を、こんなにも大好きになってしまった。 人生でそんな経験あるだろうか。 このnote、最初は「読書感想文」で書こうとしてみたけれど、どこからどう見てもこれは「読書感情文」だった。 岸田さんについて私はnoteでたびたび、岸田さんの記事を読んでいた。 まるで目の前に彼女とちゃぶ台を挟んで、氷の溶けてしまった麦茶を傍らに向かい合ってずっとお喋りを聞いているような感覚のする彼女の不思議な文章は多くの人をぐっと惹き込んでいた。わたしもその一

朝起きて、夜寝るまでの「最高の1日」を考える

オンラインコミュニティ.colonyにて、のちさんの「最高の一日を考える」のWSに参加しました。私の最高の1日です。よろしくお願いします。 ------------------------------------------------------------------------ AM5:40AM5:40、私はまぶたをゆっくりとあけた。 部屋の中はまだうす暗く、早朝の鳥のさえずりが聞こえてくる。 太陽の香りのする布団の中で、両手と両足をぐぐっと伸ばして目を覚ますための

大雨の中、自由を叫ぶように笑った

バケツをひっくり返したような土砂降りの雨の中を、自転車で走り抜けたことはあるだろうか。 雨の中を行くと聞くと、私は映画『雨に唄えば』や『ショーシャンクの空に』を思い出す。 たとえば『雨に唄えば』は主人公のドンがキャシーとのひとときの喜びを、傘もささずにあらわした歌とダンスシーンが有名だろう。(いつかあんな格好をしてあんな事やってみたいなんて思っていた) まだどちらの映画も見たことのなかった幼い頃。 私は母と兄と、大雨の中を自転車で駆け抜けたことがある。 その日は母と兄と

同じ物を食べ続けていたら世界が少しだけ変わった話

わたしは昔から、気にいると同じ物を一定期間の間、ひたすら買って食べ続ける癖がある。 甘いもの、しょっぱいもの。 毎日買えるくらいの価格の、なんて事はないもの。 そしてそれは大抵は3ヶ月くらいは続く、その癖で思わぬ変化があったことがある。はじまりは私が小学生だった頃の事だ。 ❶たっぷりももゼリー小学生の頃。私は徒歩5分の場所にあるスーパーで、とあるものに出会ってしまう。 それは、『桃のゼリー』だ。 ゴロッと半分に切ったももが大きくふたつほど入っているそれ。口いっぱいに頬張

土曜日は雨模様

空は雨模様で、ぽちゃんと水が落ちる音と、 乾燥機がゴウンゴウンとまわる音がどこからか聞こえてくる。 今日は土曜日だ。何にも決まったすることがない時間というものは、どうしてこうも心を穏やかにするものだろうか。 今日は、以前Noteにも書いた、写真家である石川直樹さんの北海道大学での講義が無料で公開されていたので、視聴してみた。 北海道大学レクチャー/石川直樹『地つづきの果て』 「自分の身体を通じて、世界のことを理解して行きたい」 旅、距離感、今のこと、様々な話を聞けた約1

#2『この星の光の地図を写す』石川直樹

石川直樹さんを知ったのは、私が大学生の時だ。 それは、わたしがはじめて写真展に自発的に行った日から、大学の大講堂のある階段にたくさん置いてあるDMをよく見るようになった頃のことだった。 「ここより北へ」という奈良美智さんとの合同展示がワタリウム美術館で開かれていたのを知った私は、ふらりと立ち寄ってみることにした。 ▽当時のDM 2014年の夏に、二人が青森から北へと歩いた旅の記録、写真、道具などが展示されていたこの企画展は、二人が撮った写真や、日記、リュックサック、本や

BUMP OF CHICKENと私の出会い

わたしとBUMP OF CHICKENの出会いは 小学生の頃だった。 当時のわたしは、中学受験の真っ只中だった。 わたしの学年ではあまり受験する人もいなく、塾に行くのにもバスに乗って30分くらい。 もちろん自分で受験したいと決意したので、後悔はなかったものの、なんとなく行くのが嫌になったりもした日はあった。 父や母や兄にもたくさん支えてもらっていた。 深夜、参考書を机に開きながら、 ぼんやりしている時に、ふと母から貰った小さな古い壊れかけのラジオが文房具がごちゃごちゃに入

扉をくぐると、青の世界だった

息を飲むほど美しい とはまさにこの場所にぴったりな言葉だ。 先日、カメラを持って代々木上原にあるモスク「東京ジャーミィ」を訪れた。 ここは、日本では数少ないトルコ系のモスクだ。 モスクとはイスラム教の礼拝堂のことで、大小合わせると日本全国に約80カ所建てられており。 その中でも金曜礼拝が行われる大きなモスクを「ジャーミイ」と呼ぶそう。東京ジャーミィは東アジアで最も美しいモスクだと言われている。 見学は自由にと聞いていた私は、扉の前ですこし怖気付きそうになりながらもドアノ