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「悪口」と一言でまとめない

一般的に多くの人がよく言う

 「悪口は言わない方が良い」

のは確かにその通りだと思いますが、特に条件や状況を定められず、すべての「悪口」を対象としているような言動を見ると、ものすごく偏った見方をしているようですごく気になります。

そもそも源流(元々の発端)を理解していないのでしょう。

「悪口」とは何をトリガーにして、どういった事情から発生するものなのでしょうか。

悪口がいわれなき名誉棄損に当たるものであれば、もちろんやめさせるべきだと私も思います。いかなる事情があれ、相手を貶めることだけを目的としたようなものであれば、それはトリガーが『悪意』や『敵意』、『害意』と言ったもので構成されています。いわゆる犯罪者と同じ思考ですからやるべきではありません。

でももし、悪口を言われている人が

 「悪口を言われるようなことをしていたら?」

その時、問題の根本原因は言われる側に移ります。それでも安易に悪口にしてしまうのはどうかと思いますが、『悪口』や『愚痴』でしか表現できないケースもあるでしょう。特に社会人になればそうです。

たとえば、他部署の人、自分の部下でない人にはなかなか注意等をしたくてもできないものです。なぜなら越権となるから。自分より身分の高い人相手だとなおさらです。

では悪口を言うべきではないから「見て見ぬふりをしろ」というと、それもまた違います。エスカレーションするにしても、噂話をするにしても、他人のことをネガティブに表現すれば多くの人はすべて『悪口』と考えてしまいがちです。

まずはその見定めをする必要があるのです。

こうした事態を直視しようとせず、盲目的に

 「悪口はすべて言うべきではない」

というのであれば、代替案あるいは代替環境を整えてあげて、悪口なんかに走らなくていいようにしてあげるべきです。なかには言いたくない人だっているでしょう。そもそも言わせるようなことをしている人の言動に問題があり、そういう人を採用する企業側の仕組みにも問題があるわけですから、何も一方的に責める必要はないはずです。少なくとも「悪口は言うべきではない」の一言で他人の苦労や苦痛を無視し、圧殺するようなことはすべきではありません。

そうしないで他人の「悪口を言う」という行為を非難すると言うことは

 「所詮他人の不幸・苦労なんて知ったことじゃない」
 「とにかく悪口を聞くのが不愉快だから黙れ」

と言っているのと大差がありません。もしそうであれば、悪口を言う側も鵜呑みにして従ってあげる道理はありませんね。だって、ただの自己中心的な人がそれらしく正論を宣っているだけで、そこに「真実」は何もないのですから。

私は本来、情報発信したり自分から話すよりも、話を聞くほうが得意です。

学生時代の一部の人以外では誰にも信じられませんが、元々は「人見知り」で「赤面症」だったのです。それゆえ、話すよりも聞く機会のほうが多かったし、楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、腹立たしいこと、どれを聞くのも苦ではなかったので、昔から相談を受けたり、愚痴を聞くことは度々ありました。

そのせいで誰にも言えないような裏話やきわどい話なども知ってしまって、だれにも相談できず一人で悩むことも多々ありましたが。

そのたびに「愚痴を聞いてあげる」「不満を聞いてあげる」ことはとても大事だと思ったことも度々ありました。とてもではありませんが今まさにネガティブな感情を吐き出したくて仕方ないほどに追い詰められている人を見て

 「悪口を言うな」

と一蹴するなんて無慈悲なこと、私にはできません。


特に組織内では仕組みや人事、人間関係を含む環境などに

 不良
 問題
 欠陥
 綻び

等があって初めて「愚痴」や「悪口」が発生するものです。何一つ原因がないところに生まれはしません。それだけでも組織として「悪口を言う」という行為が生まれている澱みを調べる価値がありますし、何かしら改善するきっかけとなるはずです。

決してそれら不満の出所を圧殺して、臭いものにフタをすれば問題が解決するというものではありません。

放っておけば、そこから膿みだしてもっとひどいことになってしまうケースの方が圧倒的に多いはずです。結果的に優れた人材が流出してしまったりするのがその最たる例です。

その点を考えれば、「愚痴」や「悪口」だからと盲目的に圧殺する人は、非常に自己中心的で

 『会社は"人"で成り立っている』

という基本原則を理解していない…ということになるんじゃないかと疑ってしまいます。以前でも少し触れましたが

悪口の元となりやすい「不満」という要素は、課題発見や問題発見においてとても重要な地位を占めています。そもそも世の中のビジネスにおける

 Solution(解決)

とは、社会やお客さまが抱えている不平や不満をこそ対象にしています。現状に不満があり、理想との間に大きなギャップがあるからこそソリューションというビジネスが成り立つのです。

ゆえに、他人から聞く不平や不満を「組織の改善課題」「ビジネスチャンス」とすぐに結び付けられない人は、ソリューションというサービス事業には向いていないといえます。どんなに優れていても、いえ優れているからこそ、企業に認められて部下を従えるような立場になった頃、様々な問題が顕在化することになります。

そう、人材の流出を止めるどころか、加速させるような組織になってしまうのです。


たとえば、寝不足や食生活が乱れると身体や肌がアラームを表面化させますよね。ニキビが出るとか、目の下にクマができるとか。悪口や愚痴はそれと同じです。潜在的な不満を生じさせる何が『根本原因』があって、それに不満を感じた人がその不満を蓄積しきれずに表面化させたものです。

これに対して「悪口や愚痴を吐き出させてあげない」という姿勢や対策は、根本原因の不摂生を見逃し、そのまま続けさせようとしているわけです。ひいては大きな問題となるまで放置し続けようとしているわけです。

先の例でいえば、寝不足や食生活が乱れるその結果として、

 がん・脳卒中・心筋梗塞・高血圧性疾患・糖尿病・肝硬変・慢性腎不全

といった7大生活習慣病に罹っても自分には関係ないと思っているのでしょう。中でも致死率の高い

 がん・脳卒中・心筋梗塞

といった3大疾病に罹れば、そのまま自死してしまうかもしれないのに、です。

企業で言えば、それが原因でいずれ衰退・倒産…ということにもなりかねないわけです。

たとえば人事に不備があって、要職に就けた人の態度や対応、施策が多くの関係者…特に部下からひどく嫌われ、信頼を損ねるような状態だったとしましょう。その要職の人に対する悪口を「悪口だから」という理由で止めさせたらどうなるでしょう。

確かに誰も悪口は言わなくなるかもしれません。

ですが、代わりに組織への不満や企業あるいは人事制度への不信感だけが募っていきます。もしそれでどんどん退職者が増え、会社組織を維持できないようなな事態になったとき「悪口を言うな」と言った人は本当に責任が取れるのでしょうか。

結局…他人に対して真摯に向き合えていないんだと思います。

自分にとって不快だから、誰もがそう言ってるから…という理由だけで、アラームを挙げている人をコントロールすることでしか解決できないと思っているから、「悪口を言うな」と言っている人が大半なのではないでしょうか。

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