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問題を正しく速く解決できる人

変化の激しいスピード感あるビジネスの現場において、さまざまな問題を正しく適切に解決していくということは簡単ではありません。しかし、簡単ではありませんが不可能ではありません。きちんとメソッドを確立すればだれでも可能です。

これまで私も、問題解決管理については幾度となく触れてきましたが、みなさんの身近でも問題が起きた時に、本来であれば最も重要な

 ・問題そのものを解く
 ・問題の根源的な原因から取り除く

ことをせずに、ただただ

 ・人を増やす
 ・スケジュールを延ばす

という最も原始的な人海戦術でなんとかしようとする人っていませんか?

ですがそれではいつまで経っても「課題解決」「問題解決」を促すソリューション力を身につけることは叶いません。ソリューション力や提案力と言うモノは、常に

 数多くの技法/手法の中から、あるいはそれ以外から、
 最適な選択肢を「選べる知識量」と、「実際に選ぶ覚悟」と、
 「選んだ内容を完遂する責任感」が揃っていなければ成立しない

モノだからです。最も原始的な人海戦術しか手段を持たないままでは、ソリューション力は絶対に育たない理由です。

1%。突然ですが、この数字は何を表していると思いますか?答えは「正しく問題解決できる人」の割合で、私の経験値から導き出した体感値です。

寺下薫『世界一速い問題解決』

外資系企業を経てYahoo!JAPANに入社した寺下氏は元Yahoo! JAPANの人材開発責任者で、現在は外部において多数の講演を行っています。

問題解決専門家として活躍している著者ですが、本当に"正しく問題解決できる人は、極めて少ない"といいます。かつて次々に起きる問題に頭を抱えて苦労した経験をしてきたのだとか。だからこそ、悩めるビジネスパーソンの力なるために、このような研修を実施するようになったといいます。

私も同じほど苦労してきたかどうかはわかりませんが、文字通り数々の死線(本当に死にかけたことが何度も…っ)を潜り抜けてきた経験を持っていますし、同じようにそのたびに問題を解決してきました。それだけにとても共感できる部分が数多くあります。

私の場合は、問題を解決するミッションと責任が与えられる割にあまり権限がなかったり、自分の身一つで解決しないとどうにもならないことが多かったためスタート時点でさらに苦労することが多い点が少し異なるところでしょうか。

一口に問題といっても、いろいろなパターンが考えられます。

 「売上が伸びず、目標の数値に届かない」
 「顧客からクレームが相次いでいる」

等、日々多くの現場で問題は勃発しています。
私たちソフトウェア開発の現場では問題なんて日常茶飯事です。順調に進んでいるときはたいていエンジニアが「そう思ってる」だけで日々お客さまの不安や猜疑のボルテージが上がってる…なんてことも珍しくありません。開発プロジェクトの後半になってから大炎上なんて今まで何十回見てきたかわからないほどです。

ちなみにヤフーでは現場で起こる問題を確実に解決することは当たり前なことであって、さらに同時にスピードが求められているのだといいます。

これはとても同意できる点です。事実、ビジネスで最も重要なのは技術でも品質でも、コストでもなく『スピード』です。いえ、そのスピードが生み出す『時間』です。そのスピードの最高値を捻出するすることで、時間管理や品質管理、コスト調整が可能となるのです。

以前もお伝えしましたが、そもそも成果(=道のり)とは

 成果 = 業務効率(≒スピード) × 時間

で成り立ちます。
お客さまとの契約であれ、上司からの指示・依頼であれ、ビジネスにおいてはすべて

「時間(期限)」は必ず限られたものです。
「成果」は最初に要求事項として定義されています。

そこに携わる者にとって、唯一「スピード(=業務効率)」だけが自由にコントロールできるもので、このスピードをコントロールするために様々な手法、手段が存在しているのだ、と考えてみてください。

AIの技術革新がより進んでいくこれから、どんな業種であっても正しく早く問題解決していく力は多くのビジネスパーソンにとって必須スキルとなっていきそうです。


問題に直面した後、最初の10分の使い方で、長足で問題を解決できるかどうかの9割以上が決まるといっても過言ではありません。

寺下薫『世界一速い問題解決』

スピードが大事といえ、問題が起きたときにはいったん立ち止まって考えることが大事です。焦って最初の第一歩を間違えると解決策を誤り、問題がかえってこじれてしまうこともあるからです。

冒頭にもご説明した人海戦術は所詮「量的」な解決しか見えていない人の方法論です。

量的な視点(人海戦術)

これしか引き出しを持たない人は問題解決力がほぼ「皆無」と言ってもいいでしょう。そのことをここでは言っています。

質的な視点

だからこそ、最初にいったん立ち止まって考えることが分水嶺となります。

その時間はおよそ10分。

もちろん問題解決の引き出しを多く持つ必要がありますが、この使い方次第で問題解決の着地点が決まるといっても過言ではありません。

そして、気をつけるべきは、

 「自身の過去の経験則でアタリをつけて行動に出る」

こと。

多くの人は過去の経験則に従おうとしますが、よほど幅広い経験を積んでいない限り、
アテになることは少ないと言っていいでしょう。それはどれだけ年齢を重ねても変わりません。年齢を重ねることで積みあがる経験値は確かに武器となりますが、その経験にない問題のほうが世の中は多いのです。経験だけに頼れば必ずどこかで大きな失敗を犯します。

経験則だけに頼った進め方をしていると、いつか大きなトラブルに対応することになったときにお手上げ状態になりかねません。

思いつきの解決策ではなく超速で正しいステップを踏み、70点以上の解決策を導き出して実行することが大事です。

①10分で問題の背景を洗い出す
②20分でゴールを設定し問題を整理する
③30分で問題の全容を「見える化」し、真の原因を突き止める
④10分で解決策を出す

と、この4つのステップがカギになります。
トータルで70分あれば、現場の問題の9割は解決できなければなりません。

さらに日頃から「If-Thenプランニング」を採用していれば、さらにスピードをアップすることが可能になります。なぜなら、都度ゼロから考える手間を省くことができるからです。

たとえば、ニュースに上がるようなシステム障害が発生したとします。
その際に、開発メンバーから原因は「ケアレスミスです」と言われました。

みなさんなら、この報告を聞いたときに真っ先にどう動きますか?

「そもそもケアレスミスとはなにか」を定義し、「ケアレスミスをさらに紐解くと具体的にはどういうことか」を理解しておけば容易に対策を講じることは可能になります。

所詮、過去の経験で解決できるのは、その経験に類似した案件だけです。そしてプロジェクトは基本的に"独自性"があって、世の中に2つと同じものが無いものです。

誰も経験したことがないことが起こり得るこれからの時代において、初動を誤らず迅速に問題解決していくためには、過去にとらわれすぎず、日ごろの準備や最初の10分の使い方が命運を分けると言っても過言ではありません。

また、この時点で無理に100点近い数字を出そうと欲を出してしまうのは二流のすることです。自分でそうしようとするとよほど才能が無ければ失敗に終わるでしょうし、他人がやろうとしているのに口を挟めばただの邪魔ものに成り下がってしまいます。

どんなに能力が高くても、結果が失敗しか導き出せないのであればそれは二流、あるいは二流以下でしかありません。

また、前述の4つのステップで作成した解決策ですが、最終的には実行し、結果を出さないと意味がありません。

しかし、実際に行動できるのは100人の1人です。
残念ながら、問題に直面すると逃げてしまう人が多いようです。

上位の者、たとえば管理職。

みなさんの上司は逃げずに一緒に解決しようとしてくれますか?

もしも、上司ゆえに持っているであろう豊富な知識や経験に基づき、一緒になって解決にあたってもらえればこれほど頼もしいことはありません。けれども、世の中を見渡してみると多くの上司、多くの管理職は逃げ回ることしかできないようです。

自身で解決できる能力が無い人ほど上司に就くことが多いようです。傍から見ると「人を上手に扱っている」ように見えるのかもしれませんが、当の本人に解決能力がなければ部下から見ると何の頼りにもならない無能な上司となってしまうわけです。

問題に直面したときに必要になるのは『正面からぶつかる勇気』です。

多くの上司たちがそうであるように、トラブルはできたら避けたいと思ってしまうのが人というものですが、問題解決のフレームワークやスキルの習得をどれだけ勉強しても最終的にいつも逃げていては意味がありません。

問題に直面したら、逃げない気持ちで取りかかるということは"第一の心構え"として忘れてはいけない考え方です。

そして、問題解決には"計画的な管理"にもポイントがあります。
ただでさえ逼迫した状態であれば、一分一秒を争う事態かもしれません。無駄に悩んでいる時間はないのです。常日頃の問題からそう思って接していなければ、いざそういうシーンに出くわしたときに対処できません。

 まず、「"誰が"・"何を"・"いつからいつまでに"やるか」を明確にすること。
 次に、「バッファ時間を算出」して余裕を持つこと。
 そして、「途中の経過チェック」で進捗を適切に確認すること。

いってみればただただ普通の、一般的で、常識的なマネジメントなのですが、問題が生じた際にこれが冷静におこなえるかどうかが肝となります。

問題が起きた時、バタバタしすぎたせいでガントチャートなどを用いてスケジュールを組んでも、誰がやるのか明確でないとそのままになってしまうことはよくある話です。

また、予備時間が多少あることで万一遅れても取り戻すことができます。どんな問題も行き当たりばったりではなく、メソッドに沿って進めていくことで不安感も軽減されます。

当たり前のことを当たり前にしっかりと押さえて、慎重かつスピーディーに。
すべてが当たり前なので、誰でもちょっとした意識と努力で修得できる能力。
だけどすべてが当たり前のことなのに、意識を持たず、努力をしないから1%の人にしか実現することができない能力。

B2Bのソフトウェア開発業は基本的に受注生産型のビジネスモデルですので、常に注文してくるお客さまたちは何かしらの「問題」や「課題」を抱えています。

その問題や課題を解決するのが私たちITエンジニアの本当の仕事です。
ですから、正しくエンジニアリングやマネジメントを修得した人は、

 ・問題を起こさない
 ・問題を解決する能力が高い

という能力を得ます。

それができていないと言うことは、まだ正しいエンジニリング正しいマネジメントを修得できていないと言うことになります。

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