星野リゾートを世界標準の経営理論で分析してみた
久しぶりの投稿になります。
今回は星野リゾートを分析してみました。
非上場企業のため、売上や利益などの定量的な分析や、IR情報からの分析が出来ず、難しかったです。
星野リゾートはGo Toトラベルを活用して、1度泊まったことがあるだけなのですが、分析してみると独自性の強い面白いホテルだということが見えてきたので、奮発して今度旅行に行く際には泊まってみたいと思います。
※各タイトルに振った番号は、世界標準の経営理論の本の中で章の番号になります。
1. SCP理論
・星野リゾート社長の星野 佳路氏は
コーネル大学で経営学を学んでおり、
SCP理論の提唱者マイケル・ポーターに影響を受けていると語っている。
・星野リゾートは、
日本の文化を現代風にアレンジし、
その土地の魅力(コンセプト)と掛け合わせることで、
独自のポジションニングを築いている。
・例えば星野リゾートは破綻した北海道の星野リゾート トマム(現在の名称)の運営を引き継いだ。
もともとはスキーリゾートとして冬のスキーヤーを目当てとしたホテルだったが、雲海テラスを作り、従業員が発見した雲海という地元の魅力を活用することで、通年型のリゾートとして再生させている。
3. RBV
・星野リゾートは、
フラットな組織とマルチタスクを組み合わせたことで、
社員の潜在力や生産性を高めつつも、
他の企業に真似されない立ち位置を築いている。
6. 情報の経済学② エージェンシー理論
・100年続く同族企業であった星野リゾートを星野 佳路氏は継いでおり、
星野リゾートは所有と経営が一致する形になっているため、
株主と経営者の間でモラルハザード問題が発生しない。
・一方で同族経営のデメリットである、
一族による公私混同などの解決を図っている。
・所有と経営が一致しているという優位点を活かしつつ、
公私混同などの特有の問題を解決することが、
同族企業の経営のポイントになることが見えてくる。
7. 取引費用理論
・星野リゾートはホテルの運営のみを担っている
施設を保有しないことで身軽な経営を実現し、
運営でお客様の満足度を高めることに集中できている。
製造業でいうファブレスメーカーに近い形をとっている。
・一方でホテルの施設そのものはホテルの特徴にもなり得るもので、
かつ施設のオーナー次第で運営を継続できない可能性があり、
取引費用が高くなっている。
・星野リゾートは2013年に星野リゾート投資法人を設立し、
施設のリート(不動産投資信託)を販売することで、
施設の所有権は一般投資家が持ちながらも、
ホテルの特徴出しや運営の継続リスクの低下に成功している。
19. モチベーション理論
・星野リゾートのスタッフはシングルタスクではなく、
マルチタスクを行っており業務に多様性がある。
また管理職は立候補制となっており自律性や有用性を感じやすい。
職務特性理論上はベンチャー企業のようにモチベーションが高まりやすい環境にある。
・星野リゾートは単に顧客を増やすや満足度を高めるではなく、
例えば「熟年女性のマルチオケージョン温泉旅館」などのコンセプトに基づき、
具体的な目標を設定しており、
ゴール設定理論上は従業員のモチベーションが高まりやすくなっている。
23. センスメイキング理論
・星野リゾートでは各ホテル毎にコンセプトがある。
そのコンセプトの作成に従業員自身がかかわりじっくりと話し合うことで、
従業員が深く腹落ちしたコンセプトが生まれて方向性が明確になり、
モチベーションも高めることができる。
・現在でこそ星野リゾートのブランド価値が高まり、
モチベーション高くコンセプト決めを行っていると思われるが、
ノウハウが確立するまでは苦戦していたと思われる
逆に難しいからこそ競争優位性につながっている。
32. レッドクイーン理論
・日本の旅館業界は、バブル期に厳しい競争にさらされ、
団体旅行客の獲得に向けて大型化などに邁進していった。
しかしバブル崩壊後に個人客中心の時代が来ると、
その新しい競争環境に適応できず、
大型化への投資が重荷となって苦しんだ。
ガラパゴス化の一種と言える。
・その中で星野リゾートは競争の軸を変え、
新しい環境に適応することができた。
●所感
・サービス業と経営理論は縁遠い気がしていたが、
経営理論通りに経営すれば業種は関係がないことを、
星野リゾートは証明した。
・星野リゾートというとおしゃれで高級なイメージが先行していたが、
その裏にあるコンセプトづくりや、リソースの異質性づくりがバックグラウンドに見えてくる。
・継続的なファン化を目指すためには、
小手先のおしゃれやマーケティングだけではなく、
会社として組織として取り組んでいくことが必須だということが学べる。
・星野 佳路氏はSCP理論の提唱者のポーターの影響を受けたそうだが、
リソースの重要性を体現したことで、図らずもバーニーのRBV理論の裏付けとなっている。
これはSCPとRBVのどちらが大事ということではなく、
SCPを成立させるためにRBVが大事だということを示す好例である。
・理論に則って経営を行っているという意味では、
キーエンスとは近いが、方向性は大きく異なっている。
言い換えると表層的な打ち手を見ると両社は大きく異なるが、
背景の理論的な考え方は共通しているといえる。
・星野 佳路氏のリーダーシップについても分析したかったが、情報が集まらず断念した。
社長以下はフラットなティール組織になっていると推察される。
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