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転職前夜② 目を凝らし目指す世界を見始めた頃【Hiro‘s】

【前回の記事】

入社3年目を迎えた春。全国に飛び散っている同期が、1泊2日の「組合研修」のために舞浜駅のホテルに集められた。記憶は定かじゃないが、”業務”じゃないため、有給休暇を消化してだった気がする。

労働組合の活動や存在に全く共感も興味も持っていない僕にとって、この研修は控えめに言って存在意義がわからなかった。

ドコモでは水曜日は「ノー残業デー」になっていて、夜残って仕事ができない。他の曜日も、労組が目を光らせ、残業は推奨されない雰囲気が漂っていた。
組合活動の成果で働きやすい環境を実現しているということなのだと思うが、ネームバリューの割りに給与水準は低く、商社やマスコミ、リクルートなどにいった社会人同期との比較で引け目を感じてたので、しっかり働いく分の残業代は堂々と貰いたかった。また財布事情は別にしても、「バリバリ仕事をしてスキルや経験をどんどん身に着けたい」と思っていた僕にとって、労組上りの課長が「そんなに気を張って仕事をやらずに、早く帰ってゆっくり飯でも食え」とか何気なく言ってくる職場の雰囲気は「ヤバ過ぎる逆ブラック企業」だった。

東京本社ではさすがにそういう雰囲気ではなかったようだが、会社全体を覆う一つのカルチャーとして、「労働組合」的色合いは、小さくない会社だった。ドコモのような大企業や、社会一般における労組の存在の重要性や必要性を否定したいわけじゃないが、僕の感覚、常識とはあまりにもかけ離れた世界観だった。

そんなだから、3年目で営業のことを覚えて楽しくやっていた業務休んで、1ミリも興味もなく、煙たく思っている労働組合が、自分たちの活動について啓蒙するための研修に、丸2日も取られては堪らないと思い、研修は聞かずに、読書しようと何冊かの本を持ち込んでいた。
その中の一つが『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドランド』で、当時数年前から大ブームになっていたロバート・キヨサキの『金持ち父さん・貧乏父さん』シリーズの第二弾の本だった。
ちょうど25歳になったばかりだったが、同期で日産に入った仲間が誕生日にくれたこの本を、組合研修の内容は一切聞かず、2日間かけて、貪りつくように読み耽った。とにかくメッチャクチャに面白かったからだ。

当時、「いつか起業したい」という思いを漠然とはもっていたが、経営や投資のことなどほぼゼロ知識だった。

売上以外の決算数値のことは何一つわからなかったし、新卒で金融業界は一つも応募すらしてない。大学も社会学部でゼミも教育社会学。

そんな僕だから、本の内容の詳細を十分に理解できたわけではなかったと思うが、僕の頭と心に「ズッバッー」と刻まれたメッセージがあった。

この本から僕が受け取った主張は、すごくシンプルで、

要は
”金を稼ぎたいなら、経営者か投資家、どちらかになるしかない”
ということだった。

職業人には、ざっくり次の4グループに分かれる

1、従業員(Employee:雇われてる人)
2、自営業(Self-employed:個人事業をやってる人)
3、経営者(Business Owner:事業を所有し、経営している人)
4、投資家(Investor:キャッシュを生む資産に投資してる人)

で、
金持ちになることを求めるなら、そもそも1と2を選んじゃダメ。

1と2を選びながら、金持ちを目指そうっていうのは、かなり無理ゲー。

1&2

3&4では、求められる発想、スキル、能力が全く違うため、1で経験を積んでから3&4に行こう、という発想はそもそも通用しない。3&4で必要な経験を1で積むことはできないから。

・・・このシンプルで説得力のあるメッセージにとにかくショックを受けていた。「いつか起業するぞ」と、頭で思いながら、そのルートはクリアではなく、「頑張れば1(従業員)から2(経営者)になれるんじゃないか」、とテキトーに、漠然と思ってただけだったことを自覚し、危機感が大きくもたげてきた。

本に没頭する僕の周りでは、労働組合が、「雇用されている自分たちの立場を守るために、いかに会社と対峙するべきか」「組合活動というのがいかに必要なものなのか」みたいな話がされている。本の世界と、周りの光景のコントラストはあまりにもクッキリとハッキリとしすぎていた。

途中、さすがに見かねて、講師役の組合の人に注意されたりしたが、全く無視をし、仲の良い同期からも「Hiroらしいけど、すごいな(苦笑)」とあきれられながらも、一心不乱で本にかじりついた。「これはマズイ」と冷や汗を垂らしながら。

「3年目で、法人営業で結果が出せるようになった、みたいなことに浮かれてる場合じゃない」

どこかで思っていた「何かを根本的に変えなくてはいけないのではないか」という思いが、確信に変わっていった。

「何をどうしたら良いのか」は分かりはしなかったが、「このままは相当マズイ」という確信を得て、何かを探しもがき始めた。


この時の、「経営者か投資家しかないんだ」というシンプルかつ衝撃的なインプットは、数年後に、プライベートエクイティ(バイアウトファンド)の仕事と出会ったときに踏ん張れた大きな要因なんだろうと思う。

「これしかない!」と心底信じられなければ、続けられないような場面が何度もあったが、何とか格闘し、結果を出すまで走り切れたのは、プライベートエクイティが、「投資家であり経営者でもある」ことを体験できる仕事だったからで、そこには、あの時、刻まれた『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドランド』のメッセージが反応していたからだろうと思う。

(続く)

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