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Episode 105 「ストラテジックプランナー」

Episode102にて触れた様、電通という会社で働いていたことがあった。

実際に働いてみて個人的に感じたのだが、電通の凄さは、電通という「会社」が凄いのであり、この会社で働いている全員が自動的に凄い、ということではないのかもしれない、と電通を離れ外資広告代理店に転職して少し経ったタイミングでそう感じた。

渦中にいては気付けない事も大いにある。後になって、「・・・んんん???」と感じる事などが多い。

尚、この見解が正しいとも思っていないし、またはこの考えに賛同してほしいとも全く思っていない。あくまでも、「個人的にはそう感じた」というだけの話であり、それ以上でも、それ以下でもない。

もちろん、「いやいや、会社とは個人の集合体であり、故に一人一人が凄いのではないか?」という考え方もできなくないが、この考えには重要な要素が見落とされている。

つまり、広告代理店である電通のクライアント(広告主となる企業)は、電通に対して仕事を発注する際に、実力だけではなく、例えば「癒着」や「忖度」といった、本質から外れた要素に大きく影響を受けて電通との付き合いを継続してる企業や担当者もゼロでは無いということから、純粋に、電通の全てが素晴らしいとは言えない、というのが個人的な見解である。

”ビジネス”とは、時に、悍ましい。とはいえ、誰しもが人間であり、やはり「良い思い」をしたいと感じるのは、つまり、人間の性である。

これは、実際に電通で働いている時にも少々感じたりしていたが、電通を出て特に外資系の企業(つまり、外資広告代理店)で働く様になってからよりそう感じるようになった。

もちろん、会社という組織を形成しているのは最終的には(最小単位としては)「人」であるのは間違いない。つまり、質の高い会社にはそれに倣って質の高い人間が集まっていることが多いのだが、その割合(人数)、に関しては会社によって異なるのかもしれない。

極端な話だが、例えば、答えは明確であり、その答えを形にするにあたり、しっかりと指示に従って動いてくれる人材こそが、とある企業または会社にとっては「優秀」とされていた時代があったのも事実だと思われる。もちろん、職種によっては時代を問わず現在進行形でそれ(ルール、規定、プロセスなどなどに従って行う仕事のやり方)が圧倒的に求められる職種もあり。例えば、エアラインパイロットなどが良い例だ。エアラインパイロットという仕事では「自分らしいやり方」や「人とは違うやり方」は恐らく求められていない。「よーし!ちょっと今日は、気分を変えて、自分らしい、人とは異なる着陸しちゃおうかな!」なんていうエアラインパイロットが存在しようものなら、超絶迷惑な話である。

しかしながら、これだけ物事が複雑化され、多く事(例えば、テクノロジーの進化により、それらが齎す我々の日常など)が指数関数的な速度で進化及び前進しているこの世の中においては、「既に明確化された答えを形にするにあたり、それを実行する人材」よりも、「ゼロから答えとなる考え方を導き出せる人材」の方が会社としては更に必要になってきて、つまりそれこそが会社にとっての「優秀な人材」なのかなぁ、なんて個人的には感じたりする。(もちろん、先ほどのエアラインパイロットの事例の様に、そもそも職種によってあまりにも異なるが、少なくとも自分が身を置いている広告代理店という観点から見ると、きっとそういう事なのかなぁ、と感じている)

併せて、時代の流れ及び変化と共に「優秀な人材」の定義をもが変化してきている。数年前までは、データサイエンティストやプログラマーの様な職種における人材不足が世界的に叫ばれていたが、今となってはこれらの多くをAIが既に網羅している。従って、「優秀な人材って、なんなんだ?」という疑問点が、時代の流れと共に浮かび上がってくる。

プログラマーが悪いなど、そういった話ではなく、つまり「時代の変化によって、”優秀な人材”の定義も変化してきますね」が論点である。

この様に、会社を語る際には様々な要素を考慮した上で話を行う必要が出てくるのだが、結論を言うと、個人的には電通という会社自体は好きだったのだが、いかんせんその作業内容(当時自分が担当させて頂いていた内容に限る)には全くと言って良いほど興味がなかった。

もちろん、「どんな経験も無駄では無い」という考え方も、ある意味では正しいのだが、重要な点が考慮されていない。そう、悲しいかな時間とは(あまりにも当たり前ではあるが)「有限」なのである。

時間が無限にあれば、「どんなことでも経験になる」という考えに基づいて人生を送るのは悪くない。きっと、それが正解だと思われる。ただ、いかんせん我々が人生において付与されている時間には限りがある。残念ながら、この点だけは普遍である。

正に「人生とはあまりにも短すぎる」と個人的にも感じる。故に、「どんな経験も無駄では無い」という考えは自分には合っていないと痛感する。

上記で述べた様、(電通という会社にて)自分がやるべき作業に様に対してあまりにも興味が持てなかったが故、常にやるべき作業以外の事ばかり考えていた。具体的には、「どうやったら、異動をして、ストラテジックプランナーになれるのだろうか?」という事ばかり考えていた。

もともと、自分の頭であれこれ(その質(が高いのか低いのか)に関しては自分では判断できないが)考えることは嫌いでは無く、寧ろ、日頃から常に何か考え事をしていたというのもあり、ストラテジックプランナーになりたいと、ずっと思っていた。

或いは「ビールの雨」についても妄想したり。

広告代理店におけるストラテジックプランナーとは、つまり、ビジネス戦略の諸々を考える役割を担う人たちである。広告代理店には、大きく(ざっくりと)分けて3つの種類の役割がある。

先ずは、クライアントとのやり取りやスケジュールの管理、併せてお金周りの諸々などを専門的に行う、アカウント(営業)の人々。そして、実際にテレビCMやデジタルを用いたクリエイティブなどを含む全ての創作周りを担当するクリエイティブの人達。そして、これら二つを繋ぐ役目を果たす事を作業の一環として担っているのがストラテジックプランナーの人たちである。

ストラテジックプランナーとしての本質的な仕事の要素の一つとして、「考える」というものがある。この「考える」という作業には、クライアントのビジネスの方向性について考える、クライアントである企業が持つブランドのイメージを考える、適切なクリエイティブを創る際の道筋を考える、クライアントのビジネス戦略を考える、などなど。

私は、もっと色々と「考える」作業がしたいと(当時在籍していた電通の「スポーツ局」という局にて)日々ずっと感じていた。周りにも相談はしていたのだが、やはりスポーツ局を出て他の局に異動するのは難しいということがわかった時から、会社の対応を待つのではなく、自らが会社を変え(つまり転職)、ストラテジックプランナーになれるよう動けば良いのである、と心に決めた。Episode101にて触れた「リセットボタンを押す」というそれである。

もちろん、スポーツ局の先輩には大変お世話になった。特に、SさんとIさんという先輩二人には特にお世話になった。感謝の気持ちでいっぱいである。電通を辞めてかれこれ10年以上(2024年時点)経つのだが今でもこの二人とはたまに会ってお酒を飲んだりする。Iさんに関しては住んでいる地域もたまたま一緒で、自転車で5分程度しか離れていない。

左奥:Tさん 右奥:Iさん 右手前:Sさん
左:僕 右:Iさん

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