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Episode 096 「オーストラリアにて出逢った、京都出身のカズ」

「人との出会い」とは不思議なもので、いつ、どこで、なぜ、どの様にして起こるかは明確にはわからない(もちろん頭の良い人はその構造・仕組みを明確に理解している人もいるかもしれないが、私はまだ明確に理解できていない)。

アデレードハイスクール(Episode022参照)に在学中(確か11年生=高校二年生)、カズ、という日本人と出会った。初めて会った場所は、学校の図書館だったと記憶する。図書館の出口の近くに、四人が座れる程のサイズのテーブルがあり、そこに彼は座っていた。

因みに、アデレードハイスクールの歴史(1908年設立)の中で日本人が在籍したのは我々の家族(姉二人、私、そして妹)が初であった。尚、カズの他にはもう二人日本人の女の子達(同じ時期に入学した留学生)がいた。どうやら、この三人に関してはアデレードハイスクール史上初めての交換留学生という形で入学した生徒だったらしい。

その後、留学生の数は増え、特にアジアから交換留学生が入学してきた。おそらく、2024年の今では相当の数の留学生が世界から(アデレードハイスクールに)集まっているに違いないが、今(2024年)から20数年前までは、全く留学生を受け入れていなかったのだ。

カズと僕

僕とカズ

カズとのファーストコンタクトはどの様にして行われたのかというと、確か私から話しかけたのだった。私が(校内の)図書室を出ようと出口に向かった際に、テーブルに座って電子辞書を使っている彼の姿が目に入った。

上記にて述べたように、アデレードハイスクールは留学生が居なかったので全て現地の生徒であった。即ち、英語に(辞書を使う必要があるほど)不自由をしている生徒は基本的にいない、という理解でいた。

従って、彼の様に電子辞書を使っている生徒は他におらず、目立っていた。まるで、体育の授業の時間に紅白帽を忘れた唯一の(小学生の)生徒の様に。(もちろん、電子辞書を使うことが悪い、ということではなく、目立っていた、というだけの話だ)

私が彼に対し、一番初めに発した具体的な言葉(または話の内容)は憶えていないが、彼のテーブルに近づきこちらから何かを話しかけた。おそらく、彼が日本人かどうかを訊く、といった内容だったのではないかと思われる。

その昔、「モンゴル人か?」と訊かれた事があったが、最初で最後だったなぁ、モンゴルは。

その日を境に、きっと仲良くなったのだと思う。因みに、「きっと」という言い方をしているのは具体的にどの様にして仲良くなったのかを憶えていないからである。気づいた時には既に仲良くなっていた。

尚、同時期(または、さとし君の方が少し先だったかもしれない)にさとし君という一つ年齢が上の日本人の男の子も留学生として入学してきた。彼とも仲良くなった。

サトシくん、カズ、僕

カズとは同い年という事に併せ、お互いサッカーをする、という共通点も手伝い、仲良くなったのだ。のちに、彼をアデレードハイスクールのサッカーチーム(Episode066参照)に誘った。

また、放課後のサッカーに併せ、休み時間にも友達とみんなでサッカーをしていたので彼も我々に混ざり楽しんでいた。週末も遊ぶようになり、彼からは色々と学んだ。

特に日本のカルチャー(つまり、流行など)については多くを彼から吸収することになった。また、音楽に関しては色々と教えてもらった。元々同じジャンルの音楽が好きということもあり、お互いにCDを貸したり借りたりした。

お互い、メロコア(メロディックハードコア)やパンクロックというジャンルが大好きだった。日本で言うところのHi-STANDARD(ハイスタンダード)などがこのジャンルに属する。

彼は、このメロコアにスカの要素が多く入ったスカコアのジャンルのバンドにも興味があり、詳しかった。基本的に私は欧米のメロコアバンドを中心に聴いており、カズは日本のメロコアバンドに特に興味を持っていた。

カズに教えてもらってバンドで今もよく聴くバンドは数知れず、特に次の幾つかのバンドに関しては衝撃を受けた:Brahman(ブラフマン)、Snail Ramp(スネイルランプ)、 B-DASH(ビーダッシュ)、Mongol800(モンゴルはっぴゃく)、Scafull King(スキャフルキング)などである。

カズにこれらのバンドを教えてもらう前までは、(Hi-STANDARDを除く)日本の音楽以外のバンドを主に聴いていたのだが、これらの日本のバンドの曲を聴いて正直驚いた。

曲の質の高さに関しては海外のバンドのそれと比べても全く引けを取っておらず、寧ろある部分(コード進行の具合であったり、メロディラインであったり、曲の構造など)では上回っているのではないかとすら思えた。

それくらい、瞬時に気に入った。カズとは本当によく遊んだものだ。彼はアデレードハイスクールに一年留学し、その後立命館大学に入学。併せて、中国に留学し、大学卒業後は某大手総合商社に入社し、中国に数年間赴任もしていた。

2018年9月に赴任を終え、東京で働き、2021年からは名古屋勤務となった。初めてアデレードハイスクールの図書館で出会ってから約20数年(2024年時点)、今でも連絡はとり続けている。

尚、彼がアデレードでの留学を終え日本に戻り、少し経ったタイミング(=おそらく、2003年だったと思われる)で、大学の休みの期間を利用して、日本を訪れた。そして、カズの住む京都を訪れた。初めての京都だった。

名古屋勤務になってしまってからは特に会えず、少し残念だった。尚、2022年2月に連絡があり、中国への赴任が再度確定した、との事で、現在は絶賛中国にて働いている。

Brahman、Snail Ramp、B-DASH、Scafull King。エモさが、過ぎる。

数年前、中国に再度旅立つ前に、カズと久しぶりに飲んだ。出会ってから20数年経っているが、相変わらず賢く、優しく、面白い男だなぁと改めて感じた。

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