Episode 013 「電気式芝刈り機で死にかけた」
アデレードにおける記念すべき最初の家(Episode 004参照)に数ヶ月程住んだタイミングで、家族で引っ越しを行なった。次に住んだ家はBromptonという地域にある家だった。Bromptonはアデレードの街の中心部から車で(北西方向に)、10分掛かるか掛からないかという場所に位置する、非常に新しい住宅地だった。引越しをした日など、具体的には思い出せない。それもそのはず、かれこれもう27年も前の話だ。気が付いたらこの家に住んでいた、という感覚である。時期としては、恐らく1997年の初め頃、と思われる。
間取りは、3LDK。ダイニングルームの他に大きなスペース(リビングルーム)があり、そこには小さなバーも付いていた。そう、アルコールのボトルなどを置く、あのバーである。もちろん、こぢんまりとしたそれではあるが、家にバーのスペースがある、という事に対して私はカルチャーショックを受けた。日本では、考えられない。少なくとも、埼玉県出身の、あまりにも平均的な一般家庭で育った私からするとそれはカルチャーショックに値する何かだった。しかしながら、私の家族は誰一人としてお酒を飲まなかった。従って、本来のバーとして使用されることは一度もなく、物置スペースとして活用されることとなった。家族の中で一人としてお酒を飲む人がいない状況の中、バーほど不要なものはない。
私は妹と部屋をシェアし、その一方で長女と次女が一つの部屋をシェアしていた。この家の土地はどれくらいの大きさだったであろうか。具体的には分からないが、家はそこそこ広かった様に記憶する。家の裏庭も比較的広く、芝生も(この家に住む前に住んでいた家のパッとしない芝生や、ジメッとした裏庭とは異なり(Episode 004参照))綺麗だった。尚、この家に来て、電気式の芝刈り機を購入した。エンジン式のそれではない為、コンセントから電気を必要とするタイプのものであった。この芝刈り機を用いて、私はよく芝刈りをしていた。しっかりと刈られた芝は、なかなか気持ちが良いものだ。
一度、芝刈りをしている最中に、コードのゴムの一部が擦れて中の導線がむき出しになっている状態で、誤ってその部分を手で触れてしまった事があった。その瞬間、手及び腕から電流が走り、身体全体が痺れた。「ビビビビビビビ・・・!!!」
これには非常に驚き、また恐怖を覚えた。私の文章力または国語力の乏しさでなかなか伝わらないのが悔やまれるが、身体に電気が駆け巡り、冗談抜きで死ぬかと思った。あまりにも恐ろしい体験だった。
裏庭の芝生のエリアに繋がる形でペービング(敷石)のエリアがあり、そこにはアウトドア用の木製のテーブルとベンチを置き、暖かい季節になるとそこで食事などもよくした。また併せて卓球台もあった。一時期、なぜか卓球にはまったのであった。
家の目の前には、芝生の公園があり、特に遊具がある訳ではなかったがリフティングなどをして遊ぶには充分な広さであった。よく一人でサッカーの練習をしていた。シュートの練習として、少し離れた位置から街灯(のポール)を目掛けて蹴る練習などをした。もちろん、的(街灯のポール)に当たらない確率の方が遥かに低かったので、的から外れる度に走ってボールを取りに行き、的に的中するまでボールを蹴り続けた。この様にして、飽きることなくサッカーの自主トレーニングは続いた。
この家では花を植えたり、また裏庭のペービング(敷石)のエリアを覆う形で屋根を付けたりなど、家に纏わる力仕事を手伝う様になった。そう、まだこの時点では「お手伝い」程度の事だったのだが、まさか近い将来、プロ並みの作業(家にまつわる作業において)が求められるとは思いもしていなかった・・・。