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ファーストペンギンになるのは誰か?STEAM教育と日本の教育制度を考える

団結力と協調性

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日本の教育の強みは一体、なんでしょうか。

例えば、北欧・フィンランドでは、小学校の時から大学のように生徒自身が授業のカリキュラムを選択し、個別に授業を受けます。日本の小学校のようなホームルーム、担任の先生といった概念はありません。

体育祭で自分のクラスを応援したり、文化祭の出し物を決めたりと、クラス単位で活動するという文化がほとんどないのです。このように個々の意思を自由に尊重するスタイルの場合、子どもたちの組織力や団結力は育ちにくいかもしれません。

一方、日本の小学校では、普段から掃除や給食当番など、クラス全員が決められた役割を果たすことが求められます。そこに貧富の差は関係ありません。その結果、「全員で一緒に」という意識は欧米よりも強くなると思います。


チームワークや組織力は、ビジネスをする上で必要不可欠なスキルです。他者と協力する団結力、人を思いやる協調性などを育むことが、日本の教育の強みかもしれません。


変化を恐れない

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STEAM教育は、日本の未来を担う子どもたちにとって“マスト”だと思います。

2019年の「18歳意識調査」で「自分で国や社会を変えられるかと思うか?」という質問に対し、日本の18歳の約8割が「変えられない」と回答しました。他国と比べて圧倒的に高い割合です。子どもたちが自分の国の将来に対し、悲観的な意見を持っているのです。これはとても悲しいことです。

教育を変革するためには、教育に関わる全ての人のマインドを組み直す必要があると思います。

「教育は国家百年の大計」とも言われますが、100年後を見据えて今、動き出せる人は決して多くありません。未来を考えられない訳ではなく、現状を変えたくないという意識が強く働いてしまうからかもしれません。

ですが、教育は時代によって多様な変化を求められるものです。世界各国が教育を変化させている現代、日本も変革が急務と言えます。私にできることは微々たるものかもしれませんが、周りの協力を得ながら、お手伝いしたいと思っています。


ファーストペンギンを育てる

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「ファーストペンギン」という言葉があります。群れで生活するペンギンの中で、魚をとるため、最初に海に飛び込むペンギンを指します。欧米ではこのようにリスクを恐れずチャレンジする人を、敬意を込めてファーストペンギンと呼ぶそうです。

ファーストペンギンになることは、非常に難しいものです。前例がないものに消極的な日本では、外国発祥のSTEAM教育はいわば外来種のサメのようなものかもしれません。深い海の底に飛び込むように、先頭を切って取り入れるのは誰しも怖いと思うはずです。

しかし、果敢に取り組もうとする自治体は徐々に増えています。地域の子どもたちがSTEAM教育の特長を生かし、自発的に地域の課題を解決できる人材に育てば、自治体にとってもこれ以上に喜ばしいことはないでしょう。

そして、こうした自治体の中から成功のモデルとなる学校や地域が生まれれば、「うちも試してみよう」と動き出す自治体が増えるはずです。だからこそ、さらに多くのファーストペンギンが誕生できるような下地を作ることが必要不可欠です。


実現への道のり

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教育は100年といいましたが、円滑にS T E A M教育を採用できれば、その結果はもっと早く出ると思っています。教育によって人の考え方や価値観、意識が変われば、行動の変化に直結するからです。何十年とかからず、変化が生まれるでしょう。

例えば、フィンランドでは2019年に最年少の女性首相が誕生しました。この背景にはフィンランドの教育制度の刷新があると言われています。教育の変化が10年から20年の期間で国のトップの在り方すら変えてしまうことが、現実に起きているのです。

ただ、教育制度を変えるための下地を整えるには時間がかかります。そして、国や自治体、民間が長期的な視点で協力し、教育現場からボトムアップで進める必要があります。

現在、さまざまな機関が、日本の教育制度をレベルアップさせようとしていますが、トップダウン で変革を進め過ぎてしまうと、現場が置き去りになってしまう危険性をはらんでいます。

現場のことを忘れず、子どもたちの未来を考えながら進めてほしいと強く願っています。


STEAMがもたらす未来

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STEAM教育を通り入れると何が変わるのか、と思う方がいるかもしれません。私は、大きく二つの変化があると感じています。一つは短期的な変化、もう一つは長期的な変化です。

短期的に変わるのは、子どもたちの学びに対しての姿勢です。STEAM教育を受けることで自発的に学問に取り組むようになると思います。チームで行う学習によって、コミュニケーション能力やコラボレーション能力も備わります。

自分たちのアイデアをプロジェクト化することを学び、子どもであっても新たなビジネスを立ち上げられる人材が生まれるでしょう。大人の市場を荒らしてしまう日も遠くないかもしれません。

これは長期的な変化にも関係しています。つまり、STEAM教育によって柔軟なアイデアを身に付けた子どもたちが、そのスキルやマインドを大人に教えるようになる可能性です。上の世代が下の世代から学ぶという逆転現象が起きるかもしれません。

そうなれば、会社においても年功序列ではなく柔軟に物事に対応できる人が評価されるようになるでしょう。遠くない未来、小学生からビジネスのアイデアを教えてもらう日が来るのかもしれません。


日本独自のSTEAM

「天才はどこにいるかわからない」。

これは、国内屈指のAIスタートアップ企業との評価もあるPreferred NetworksのCEO西川氏の言葉です。日本で教育を受けるすべての子どもたちの可能性を拾い上げるためにも、STEAM教育のボトムアップが重要です。

ただ、注意が必要なのは、海外式のSTEAM教育や事例をそのまま日本の教育現場に取り入れても成功しないということです。日本の教育制度に合った日本独自の“STEAM教育”を作り上げなければいけません。

古き良き伝統や技術を重んじる日本文化にもSTEAM教育に活用できる要素はたくさんあります。少し視点を変えれば、日常生活の中にSTEAM教育のヒントがあふれているのです。

 子どもたちには、自発的に物事を考え、自分ならではの“軸”を作り上げてほしいと思っています。そのためには、ただ教育を受けるのではなく、多角的な視点で物事を捉えられるようになる必要があります。STEAM教育はそのための基盤になることでしょう。

子どもたち一人一人が自分だけの花を咲かせることで、社会全体に素晴らしい花束が出来上がります。S T E A M教育の推進が、社会全体にインパクトを与えることを願っています。

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