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医療制度

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記事一覧

生活保護は希望したら終了できるとは限らない

生活保護は希望したら終了できるとは限らない

先日 生活保護を受給している人が生活保護をやめたいと思ってもやめさせてくれないという出来事があった。

個人的には生活保護は福祉サービスであり、対象になる人はみんな、堂々と受けたらいいと思っている。

その人の場合は、いろいろな事情で生活保護をやめたほうがよさそうなので(詳細の説明は省略)、私も「やめたらいいよ」と話をしていたので、「だめ」と福祉から言われてちょっとびっくりした。

ネットなどでも

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精神科医療の世界に弁護士が介入することによる弊害

精神科医療の世界に弁護士が介入することによる弊害

最近 弁護士が精神科医療の世界に介入してくることが増えてきている。

弁護士が増えすぎて仕事が減ったせいなのか、精神科医療に理解と興味を示す弁護士が増えたためなのかわからない。

弁護士が介入することでいいところと悪いところの両方がある。

いいところ強い立場から意見を言える

どうしても家族は病院に対して弱い立場になってしまうことが多い。

本人の言動に振り回され疲弊し何とか入院させたという経緯

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発熱した人を見ない内科の診療所はつぶれたほうがいいと思う

発熱した人を見ない内科の診療所はつぶれたほうがいいと思う

現在診療報酬改定の話題が出てきている。

そのなかで診療所(クリニック)は経営が比較的良いので、診療報酬を下げる マイナスにしたほうがいいという意見が主に財務省から出されている。

開業医の代弁者である医師会は当然ながら大反対をしている。

入院を担当しない診療所は医業収益8961万円、費用6099万円、損益2875万円(第24回医療経済実態調査)

この数字を見ると多少マイナスにしてもいい気はす

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警察官が精神科病院に連れて行ってくれる時

治療が必要と思われる状態なのに本人が受診を頑なに拒否しているときにどうするかは難しい問題である。

以下の記事では移送制度について書いた。

極めてまれに警察官が精神科病院に本人を半強制的に連れてきてくれることがある。

自分が経験したケースでは、
・入院中で外出や外泊したまま帰らないとごねだした人
・警察が逮捕・保護したものの取り調べにならず、本人も病院に連れて行けと騒いだ人(警察署を出るときは

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本人の意思を尊重し死期が早くなるとき

本人の意思を尊重し死期が早くなるとき

最近 亡くなった人。

Aさん 70代男性統合失調症で入院していたものの次第に認知症が進行。

歩行能力が低下し車椅子での生活となり、嚥下能力が低下し飲み込みもしずらくなってきた。

1年前に嚥下性肺炎を治療した後も、嚥下能力がなかなか回復せず、3か月ほど経鼻栄養(鼻から管を入れて栄養を取る)を行った。

その後 食事がとれるようになったものの、時々むせることがあり、熱が出たり呼吸状態が悪化するこ

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認知症の人の入院が長くなってしまう理由

精神科病院に入院している認知症の割合は増加傾向である。

私が働いている病院も以前に比べるとすっかり高齢の人、特に認知症の人が増えてきており、ホールは老人ホームのようである。

日本の精神科病院の入院期間が長いまま短くならない一つの理由として、日本では周辺症状の強い認知症の治療を精神科病院が担っており、さらに認知症の面倒を見るところのなかで精神科病院がもっとも安いからである。

認知症の治療は精神

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落ち着いているけれど退院できない人

落ち着いているけれど退院できない人

入退院を繰返しているAさん。

病棟内では何の問題もなく過ごし、時に他患のお世話もしてくれる。

といっても今は患者に他患のお世話をしてもらったり、掃除の手伝いをしてもらったりすることは保健所からダメといわれるため、見守りや声掛けや何か異変があればすぐに職員に教えてもらうという程度である。

普段は言わないものの、ごくまれに思い出したように「退院したい」と言うことがある。

病棟内では何の問題もな

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精神医療審査会と不当な入院が起きるとき

精神医療審査会と不当な入院が起きるとき

精神医療審査会というものがある

参照:東京都精神医療審査会

簡単に言えば、強制入院が妥当か判断し、退院などの請求を審査するところである。

実際の業務は、大量の書類をチェックすることが中心で、たまに退院などを希望する人の診察をする。

人権を守るという趣旨は良いものの、いろいろな課題がある制度である。

参照:精神医療審査会制度の現状と課題 平田豊明

上記のリンクと被ることも多いものの、実際

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強制不妊手術と性的逸脱行動をする人

強制不妊手術と性的逸脱行動をする人

強制不妊手術を受けさせられた人が国を相手に訴訟を起こし、損害賠償が認める判決が時々出てくるようになった。

旧優生保護法は、遺伝性疾患や、遺伝性ではない精神疾患や知的障害のある人について、医師が申請し審査会の決定などを条件に不妊手術の実施を認めていた。

この法律の良い点をあえて挙げるとすれば、本人と家族が希望したときに同じ疾患を持つ子どもを産まないように(ほぼ)無料で手術を受けれるようにしたとい

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退院請求や処遇改善請求が意味のあるものになるために

退院請求や処遇改善請求が意味のあるものになるために

入院している人と家族(の一部)は退院請求や処遇改善請求をすることができる。

自分の状態について不服申し立てをする権利を持っている、ということは重要である。

しかし現実的に意味のある制度にするのは難しい。

現在のチェック機能は実質的に機能していない医療保護入院の入院届、医療保護入院・措置入院の定期病状報告書は、一部 再提出を求めることがあるものの、基本的に全例で承認となる。

また退院請求や処

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医師が説明したと言い、患者が聞いていないというとき 裁判所の論理

医師が説明したと言い、患者が聞いていないというとき 裁判所の論理

裁判所が説明していないと認定するとき医療訴訟において、医師が危険性などを説明したといい、患者が聞いていないというときに、最近は裁判所は説明していないと判断することが増えている。

医師側からすると「説明したのに それが認められないなんて・・・」という意味で、驚きをもって受け止められるものの、ある意味 当然の判決である。

医療の世界と司法の世界では論理が全く異なることは忘れてはいけない。

裁判所

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心神喪失の人は罪に問われなくても良いのか?

心神喪失の人は罪に問われなくても良いのか?

一般の人と法律家とは、別の論理で動いているため、実現の可能性は極めて低いものの、こうなって欲しいという思いから書いてみる。

心神喪失と心神耗弱刑法39条「判断能力・責任能力がなくなっているものは罪に問わない」。

正確には、心神喪失者の行為は罰しない、心神耗弱者の行為はその刑を軽減する と規定されている。

この法律を以下のように修正をして欲しい。

判断能力・責任能力がなくなっている(心神喪失

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治療を受けていないのに障害者年金受給は可能か

先日治療を受けていない統合失調症の人が、年金の更新のために外来受診をしたという話を書いた。

治療していない精神障害者でも障害者年金はもらうことは理論的には可能である。

しかし治療を受けていないと病院で障害者年金の作成を断わられることが多い。

状態が悪く、服薬を何度も説得しても指示に従ってくれない人のために、年金診断書を書くというのは、面倒で極力書きたくないというのは事実である。

ただしこう

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生活保護における扶養義務者と義務

生活保護における扶養義務者と義務

職業柄、生活保護の人や活保護を申請する人と接することが多いものの、制度については知らないことがまだまだ多い。

現在は福祉担当者は生活保護者を増やさないために申請を諦めさせるという水際作戦が横行している。

2000~2010年にかけて急増しており、すべての人を無条件で認めていてはきりがなくなってしまうのは確かである。
生活保護の水際作戦に対抗する方法はいろいろとあるもののめげてはいけない。

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