認知症の人の入院が長くなってしまう理由
精神科病院に入院している認知症の割合は増加傾向である。
私が働いている病院も以前に比べるとすっかり高齢の人、特に認知症の人が増えてきており、ホールは老人ホームのようである。
日本の精神科病院の入院期間が長いまま短くならない一つの理由として、日本では周辺症状の強い認知症の治療を精神科病院が担っており、さらに認知症の面倒を見るところのなかで精神科病院がもっとも安いからである。
認知症の治療は精神科病院なのか?
一応診断基準的に言えば、認知症は他の精神疾患に近いものとして分類されている。
そういう意味では精神科病院が治療に関わるべきなのかもしれない。
しかし認知症の多くは高齢者であり、高齢者は多くの身体疾患を持っていることが多い。
そのため入院初期は向精神病薬による治療を必要とすることが多いものの、精神的にある程度落ち着いた後は、身体的な治療と介護が中心になる。
誤解を招くかもしれないが、話した内容、聞いた内容を直後に忘れてしまう認知症の場合、精神療法は基本的に意味をなさない。
笑顔で話を聞いて、こちらの話を聞いてくれそうなタイミングを逃さず別の話題や作業などの熱中できるものを提示するのがベストな対応である。
そういう意味で認知症の治療に必要なのは、ある程度の身体的治療ができて、介護ができて、常時上手に対応できる職員がいるということである。
残念ながら多くの精神科病院は、十分な身体的治療は難しく、介護は人が足らず、多少は上手く対応できる職員がいる という現状である。
認知症は認知症専門病床以外、精神科病院が引き受けるべきではないと私は思っているが、現実的には周辺症状がひどい認知症は多く治療してくれるところが無くなってしまう。
精神科病院が他のところより安い
有料老人ホームは基本的にお金が非常にかかる。
例えば ある施設の場合、要介護3で介護保険の負担1割で、月15.7万円。
これは比較的安いほうで、高いところはもっともっと高い。
病院は高額医療費制度があり、住民税非課税の人なら3.5万+食費程度で済む(実際はもう少し他の費用がかかり増える)。
しかし病院に入院しているのが一番安くなることが多いのは確かで、退院を進めるときに一番苦労することは、家族の金銭的負担が増加するということである。
医療が必要な人の負担が少なくなるようにすることは大切である。
しかしその制度が認知症の人の退院がなかなか進まない状態を産んでいる。
「入院させているほうが安心だけど、これ以上入院させていると金銭的に苦しいから施設に入れさせてください」と家族が思うような料金体制になって欲しい。
身体的治療のために施設に行きない人たち
高齢になるといろいろな身体疾患が出てくる。
透析を必要とする人。
褥瘡がひどい人。
飲み込む力が低下し食事が食べれず、鼻から管を入れたりしている人。
など
そういった人たちは、病院ではそれほどすることはなく、かといって医師や看護師がいない施設ではなかなか対応が厳しいという状況になる。
この問題は、厚労省に解決してもらうしかない。
今は医療行為とみなされ、医師や看護師以外がしてはいけないとされていることを、しっかりトレーニングした人たちができるようにする。
更に医療の必要性の低い人を集める診療報酬制度にする。
など。
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