【短編】春が来てしまう(尚也の場合)
朝。
尚也がリビングに行くと、壁のカレンダーが3月になっていた。
「そうか。もう3月か」
思わず呟くと、キッチンにいた妻が
「あっという間ね」
と答える。
「もうすぐか
外の景色はまだ冬だ。でもそういえば最近は天気予報が「今日は真冬日です」と言っていないかもしれない。
もう少し冬でいてくれててもいいのに。
今日の最高気温が十度です、と気象予報士が嬉しそうに話していた。
今日は、尚也の娘の卒業式だ。
娘の制服姿最後の日。そう思うと、尚也はもう泣きそうになる。つ