記事一覧
【短編】春が来てしまう(尚也の場合)
朝。
尚也がリビングに行くと、壁のカレンダーが3月になっていた。
「そうか。もう3月か」
思わず呟くと、キッチンにいた妻が
「あっという間ね」
と答える。
「もうすぐか
外の景色はまだ冬だ。でもそういえば最近は天気予報が「今日は真冬日です」と言っていないかもしれない。
もう少し冬でいてくれててもいいのに。
今日の最高気温が十度です、と気象予報士が嬉しそうに話していた。
今日は、尚也
【短編小説】春が来てしまう(美和の場合)
朝。
カレンダーをピリピリと剥がして、美和はしみじみと見つめた。
飼っている犬が隣にやってきて美和の顔を覗き込んだ。
「もう3月だって。もっと先のことだと思ってたのにね。」
犬に話しかけ、頭を撫でる。このざわざわする気持ちはなんだろうか。寂しいから?
なんだかまるで、と美和は思う
まるで新雪の下の固く重くなった雪のようだ。ぎゅっと固まった不透明な何か。
今日も外は雪だけど昨日の雪より
【短編小説】春が来てしまう(北都の場合)
朝。
おかあさんが、カレンダーをピリピリと剥がしてじっと見つめている。
隣で見上げる僕の頭をそっと撫でると
「もう3月だって、北都。もっと先のことだと思ってたのにね。」
と、ちょっと寂しそうに言った。
外はまだ雪がたくさん積もっていて冬の匂いだけど、少しだけ春のにおいがした。
それから何日か経って。時々雨交じりの雪が降るようになっていて。あんなに積もっていた雪はずいぶん少なくなって
【脚本】the sun
○学校・屋上(夕)
真鍋明(14)が丸めた紙をボールの
ように放り投げたりしている。
早川ゆかり(14)はギターを弾いて
いる。
真鍋「大人になりたくねぇな・・・」
ゆかり「(ギターを弾き続ける)」
真鍋、丸めた紙を広げると「進路希望
調査」とプリントされている。
真鍋「(自分のギターを手にとって)進路とか
全然ロックじゃねえし」
ゆかり「(黙ってギターを弾き
【脚本】グッドドギー
〇丸山家・居間(朝)
リビングの隅におかれたケージに、ラ
ブラドール・レトリーバーの子犬が寝
ている。緑色の首輪をつけている。
リビングに近づく足音がする。
子犬が足音に反応して頭をあげ、ドア
を見る。
丸山悠斗(12)が居間に入ってくる。
悠斗「おはよう。みどり」
子犬に声を掛けて背中を撫でる。
撫でながら壁のカレンダーを見る。
今日の日付に赤い〇がついている。
【脚本】My HERO
〇桃子の会社・廊下
トイレに入ろうとする桃子。手前で立ち止まる。
トイレから話し声がする。
女性社員1「林さん、意識高くてちょっとめ
んどくさくない?」
女性社員2「やっぱり?さっきの会議でも思ったけどさぁ」
女性社員1「ね。なんかリーダー感出してるっていうか」
女性社員2「私たち3人でって言われた企画なのにね。まあ、いろいろやっちゃうから楽でいいけど{笑}」
女性社員