【脚本】the sun

○学校・屋上(夕)
   真鍋明(14)が丸めた紙をボールの
   ように放り投げたりしている。
   早川ゆかり(14)はギターを弾いて
   いる。
真鍋「大人になりたくねぇな・・・」
ゆかり「(ギターを弾き続ける)」
   真鍋、丸めた紙を広げると「進路希望
   調査」とプリントされている。
真鍋「(自分のギターを手にとって)進路とか
 全然ロックじゃねえし」
ゆかり「(黙ってギターを弾き続ける)」
真鍋「俺、ロックでメシを食うんだ。つまん
ない大人になるぐらいなら死にたいわ」
ゆかり「じゃあ、一緒にいこうか」
   急に真鍋の手を引いて走り出す。
   屋上の端まで走ってそのまま飛び出す
   二人。
 
○真鍋家・寝室(朝)
   はっとして目覚める真鍋(34)。
真鍋「夢か・・・」
 
○同・玄関前(朝)
   抜けるような青空。
   キャリーケースを持って玄関を出る真
   鍋。
真鍋「ウザイぐらい晴れてんなぁ」
 
○夏フェス会場
   沢山の人が会場の設営をしている。
   フードエリアでドリンクバーの開店準
   備をする真鍋。
女の声「真鍋くん?」
真鍋「(声の方へ向いて)はい?」
   真鍋と同世代ぐらいの女が立っている。
女「やっぱり真鍋君だ。わかる?」
真鍋「あの?」
女「(笑って)早川ゆかり」
真鍋「早川!」
ゆかり「久しぶりだね。ええと、仕事?」
真鍋「あ、うん。飲料メーカーの広報やって
 るんだ」
ゆかり「へぇ」
真鍋「早川は?」
ゆかり「私?明日からここでステージ撮影の
 仕事するから下見にね」
真鍋「カメラマン?」
ゆかり「まあ、ね」
ドリンクバースタッフ「真鍋さん、ディスプ
 レイ確認してもらえますか」
真鍋「(スタッフに)いま行くよ」
ゆかり「明日からよろしくね」
   ゆかり、去っていく。
   真鍋、ゆかりの後ろ姿をみつめる。
 
○夏フェス会場(日替わり)
  (フラッシュ)
   たくさんの人が行き交う。
※      ※  ※
  (フラッシュ)
   ロックバンドが演奏するステージ前で
盛り上がる人々。
※      ※   ※
  (フラッシュ)
   ドリンクバーで笑顔で客の対応をする
   真鍋。
 
○同・メインステージ観客席
   盛り上がっている沢山の観客。
   ステージ横の大型モニターに演奏して
   いるバンドが映っている。
   カメラを構えたゆかりも映し出される。
   観客の後方でまぶしそうに眺める真鍋。
 
○同・フードエリア(夜)
   片付けをしている真鍋達。
ゆかり「真鍋くん」
真鍋「(振り向く)」
ゆかり「終わったねぇ。お疲れさま」
真鍋「見たよ。すげえな。俺なんて普通にサ
 ラリーマンだ。うらやましいよ」
ゆかり「(微笑んで)これ」
   鞄から封筒を出して真鍋に渡す。
   封筒を開けると真鍋が仕事をしている
写真。
ゆかり「よく撮れてるでしょ」
真鍋「うん」
ゆかり「中学生の頃、大人なんてロックじゃ
ないなんて言ってたけど」
真鍋「(苦笑)」
ゆかり「あの頃の理想じゃないかもしれないけど、まあまあちゃんと大人じ ゃん。ホントはさ、大人になりたくなかったんじゃなくて大人になるのが 怖かったんだって、最近思うんだ」
真鍋「・・・」
ゆかり「ロックが仕事じゃなくてもかっこい
 いよ、真鍋くん。きちんと生きてる」
真鍋「お世辞はいいよ」
ゆかり「本当だよ(真鍋の指輪を指して)残
 念です」
   ゆかり荷物を持って歩き出す。
ゆかり「じゃあね。またどこかで会えるとい
いね」
真鍋「写真ありがとう。がんばって」
   ゆかり笑顔で手を振り、歩いていく。
   真鍋、写真を見つめ、さて、と笑顔で
仕事に戻る。
 
         終わり


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